第一子の『いろは』が教えてくれたこと
2017年11月30日第一子「いろは」が流産した喪失感から、僕の目には全ての出来事や物事がモノクロに映し出された。
僕自身、たくさんの人の死に立ち会ってきた、だからもうどんな悲しみが襲ってきても“自分は大丈夫”だと思い込んでいた、そうあの日がくるまでは…。
病院では「よくあること」と淡々と片付けられ、手術の際に僕の家族が心配で駆けつけてくれたら看護師さんたちに白い目で見られた時には、大人気なく看護師さんたちに向けて怒りが抑えきれず睨みつけてしまいました。大袈裟と思われようが、僕にとって『いろは』はわずか数ヶ月でも我が子であり、いつまでも変わらずに愛することに変わりはありません。
僕自身、今でもそうですが若かり頃は特に自分の傷を相手に押し付けるような最低な人間でしたし、今もなおそのレッテルを剥がしたこともありません。だから妻と子にその罪をかぶせてしまったことを本当に申し訳なく思ってます。
なんの不安や迷いもなく産まれてくるであろう『いろは』に対して、毎日話しかけ、出来るだけ仕事を早く片付け、家に帰りたくてワクワクした気持ち、楽しくベビー用品を見たり、どんな名前にするか真剣に意見を出し合ったり…。
検診で医師から心肺が動いてないと言われてから次の検診まで“嘘であれ”と神社で祈り続けたこと、術後に妻が毎日のように泣いていたこと、何も出来なかった自分も含め、どれも『いろは』との大切な大切な時間です。
だけど悲しみに暮れていても時間は刻々と過ぎてしまう、妻の年齢を考えてると時間はない…必死に前を向こう…!と妻と決意してからわずか数ヶ月、幸運なことにまたひとつの命が育まれることになりました。
ですが、そんな簡単にひとつの命を失った悲しみから抜け出すこと、心や身体で理解するのがいかに苦しくあり、戦いであるということを私たちはこの一年を通して深く実感したのです。
自分の妻のお腹の中に子供がいるのにも関わらず電車の中でキャッキャっとはしゃぐ子供を見たときに恥ずかしながら嫉妬してしまったんです。「今頃きっと…」を何度も頭の中で繰り返してしまい「七葉」に対してきちんと向き合えない自分に対してもまた深く罪悪感を覚えました。また流れてしまったらどうしようという自己保身が勝ってしまい、思考がマイナスな方向に囚われてしまったのです。
職場の方々にも理解していただき、できるだけ定期検診を一緒に受けました。
エコーでの「七葉」が動いてる様子を見た時、嬉しい反面、怖いという気持ちが拭えない。心から喜びを噛み締めたいのに上手にできない…と複雑な気持ちでエコー室から出ました。僕の手をぎゅっと握る妻に僕はかけてあげられる言葉が見つけられませんでした。
僕は七色の感情を教えてくれて、生涯のお父さんにしてくれた『いろは』を、きちんと供養すら出来ず、ケジメをつけられていません。
だからきちんと供養の場を設けたいと思います。わかっていたことでしたが『七葉』が産まれたからと言って忘れることは出来ない。だから感謝を伝えられる場を作りたいと思います。
全ての命に対等に意味はある、でもそれは受け取るのではなく、感じ取るものであり、自身が導き、見出していく冒険なのだと思う。だからこれからも『いろは』が生きた大切な日々を希望に変換するのは他ならぬ僕なんだ。
ひとつの命、その奇跡は、今も尚、僕にあなたに、すべてに、宿されています。
もし悲しみに暮れたらどうか思い出してください。あなたを囲ってくれている人々を。
僕を救ってくれて支えてくれたのは間違いなく、周りの方々です。この場を借りて改めて御礼申し上げます。本当にありがとうございます。そして御心配ばかりかけてしまい、申し訳ありませんでした。
『いろは』僕たちのもとに来てくれてありがとうね。そしてこれからも見守っていてね。
僕が君に会いに行ける時には、たくさん笑わせるよ。だから今は思いっきり生きて思い出を持っていけるようにする。『いろは』の父親になれたことを誇りに思う。大好きだよ、愛してる。
<いろは歌>
いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす
色はにほへど 散りぬるを
我が世たれぞ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず
匂いのする華もいつか散ってしまうように、人の世もこの世の中にも変わらないもの何もない。
そんな世の中に欲を持たず、はかない夢などを捨て、現世を超えていこう。
和田浩章
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