【パーマカルチャーデザイナーvol.72 Hamish Murphy】
これはパーマカルチャーデザインコース(以下、PDC)を修了したパーマカルチャーデザイナーたちのリレーコラムです。
※パーマカルチャーとは
"Permaculture is a dance with nature, in which nature leads."
パーマカルチャーとは自然に導かれる自然とのダンスのようなもの。
Bill Mollison
ビル・モリソン
#Hamish Murphy
広大なフィールドをパーマカルチャーをベースに里山再生プロジェクトとして取り組むヘイさんことヘイミッシュ・マーフィー。
ある時はPDCのホストとしてみんなを労い、ある時はゲスト講師として学びの場をガイドしてくれるPDCを支える立役者の一人。
Q1.あなたについておしえてください
私は偶然にもオーストラリアで初めて日本語教育をしている学校(小・中・高の一貫校)に通い、1980年の卒業と同時に交換留学生として日本に滞在しました。
オーストラリアの金融業界で数年働いた後、1988年に日本に赴任し以来ずっと日本で暮らしています。金融業界の面白さとは裏腹に、私はキャリアを通じて心に大きな穴が空いているのを感じていました。そのせいで必然的に「答え」を探していました。
そしてある日、友人の家で『The Secret Life of Plants』(直訳:『植物の秘密の生態』)という本と出会い、友人にそれを読むよう強く勧められました。
その本には植物の持つ「意識」について、あらゆることが科学的に説明されていました。
この本はこれまでに教わってきたこと全てに疑問を抱き、人生のあらゆる側面について学び直すきっかけとなりました。
最終的にこの探求は、私が今日も歩んでいるスピリチュアルな道へとつながりました。
Q2.パーマカルチャー デザインコースを通して
パーマカルチャーに出会ったとき、稲妻のような衝撃を受けたことを覚えています。
世界の環境問題を解決する方法が、これほどまでにシンプルで個人単位でできる身近なことだったとは!
また環境を癒すことは、自分の心の穴を埋めることを含め、社会を癒すことに自然につながると思いました。
そこで 2012 年私は金融の仕事を辞め、ジェフ・ロートンによる最初のオンラインPDCを受講しました。そのコースがとても包括的で刺激的だったので、3 年後に再び同じ PDC を受講しました。
私はパーマカルチャーに恋しました!
鴨川でストーンブリッジ(現在はUzuméに改名)という大規模なパーマカルチャー・プロジェクトを多くの人たちの協力を得て開始しました。
毎日東京から通ってプロジェクトを運営する生活を 6 年間続け、その間に結婚生活が破綻し、私は友人たちが愛情を込めて建ててくれた自然素材のコテージに引っ越しました。
フォレスト・ガーデンでの生活への移行は、私の内面に大きな変容をもたらしました。私は初めて瞑想をし始めました。不思議なことにパーマカルチャーの旅は私の意識を 自分の内面に向かわせました。
内観の時がやってきたのです。
Q3.あなたにとってパーマカルチャー って
自分自身を見つめる旅がこんなにも大変な挑戦だとは思ってもみませんでした。それは無限に続く旅です。
鴨川に引っ越して間もなく、あるパーマカルチャー講師が訪ねてきた時の体験はとても印象に残っています。
私は彼女に自分のフィールドを案内し、アイディアをもらうのをとても楽しみにしていました。
けれども私が案内を始めようとすると、彼女は私を座らせ、自分と家族、両親の絵を描くように言いました。
そして私が「どのように育てられたのか」「トラウマはないか」と聞いてきました。彼女の考えは、その人の潜在意識の状態が人生のデザインひいてはパーマカルチャー・プロジェクトのデザインに現れるというものでした。
すごく興味深い視点でした。
この体験は、私自身の人生をより深く問い直すきっかけとなりました。
「私の幼少期のトラウマが私の人生を通しての決断や自分自身についての捉え方をどの程度決定づけたのだろうか?」
「また、私が子どもの頃に経験したトラウマとは何だったのだろうか?」
実は私は幼少期に母親から虐待を受けました。幼い私がしたかったことは歌うことでした。歌うことが自分にとっての何よりの喜びでした。けれども、母は私が歌う度に虐待したのです。
私の潜在意識の中で、歌うことは痛みや恐怖と結びついていました。
でも、私の潜在意識にある信じ込みはどんどん変わってきています。
60歳になって私は自分が作った曲をギターで弾き語りするようになりました。そして人生で初めて自分の心に空いていた穴が埋まっていくのを感じています。
この事とパーマカルチャーとの関連性は何か?
私は今、パーマカルチャーの 3 つの核となる倫理(「アース・ケア」「ピープル・ケア」「フェア・シェア」)を修正する必要があると考えるようになりました。
私は、「セルフ・ケア」あるいは「セルフ・ラブ」 が第一の倫理で、その下に他の三つ倫理があるべきだと考えています。
自分自身を愛せずに、どうして地球を愛せるというのでしょう?
自分自身を愛さずして、どうして他者を愛せるというのでしょう?
自分自身を愛している人は、自ずと地球や他人を愛するようになる。
私たちが何よりも先にするべきことは自分を愛することであり、ケアすることです。
それさえできれば、他のことはすべてうまくいく。
逆に言えば、優れたパ ーマカルチャーデザインは自分を愛する旅に大いに役立ちそのきっかけにさえなると私は信じています。
これが私のパーマカルチャーにまつわるストーリーです。
2024/3/5 啓蟄