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ジャッジとファイターの抱負あるいは自己紹介
画像作成 酒匂晴比古
ファイター
中川マルカ
御嶽神社裏で、ちいさなカフェを営んでいます。 2024年も無頼の年である、と夢枕で母がわたしに告げました。それでも、清い魂と高い志、愛さえあれば己の人生をひらいていける、というようなことも。あいにく、魂はよごれ志はそこそこに、寄る辺ないまま冬を迎えてしまいました。けれども、お膝には愛の化身がわたしをあたため続けてくれています。今年こそは、愛を以てもう一歩まえに進めたらとおもっています。 タイセンよろしくお願いします。 (「あいはむ」)
深澤うろこ
That pigion is burning over there.
普段から、怒ったり怒らなかったりしていて不安定な人間です。めでたい気持ちを逆なでするような作品を今回は書こうと決めてここに立っています。決勝用はまだ書いていません。ここで残酷な映像が流れる。希望を信じています。みんなで笑いましょう。 「あそこで鳩が燃えています」)
両目洞窟人間
両目洞窟人間です。喋るねこと音楽と生活の小説を書いています。夏に『夕焼けパラレル団地城』って中編小説を書きました。boothで売ってます。今年好きだった映画は『きみの色』と『chime』と『地獄のSE』です。よろしくお願いします。 ( 「YEAHHHHH!!!!!」)
紙文
(「いつまでも手をふる」)
吉美駿一郎
「パレスチナの話をするために、ぼくはこのリングに上がりました。 イスラエルの侵攻により、パレスチナの死者は四万人を越えました。データの推計によれば、停戦後には五倍の死者が出るといわれています。行方不明者が死者として数えられるだけでなく、感染症による死、自殺などが増えるからです。たった今停戦がなされたとしても、さらに二十万人の死者が出ます。しかも未だ停戦がなされる気配はありません。ガザでは家族の遺体を掘り起こそうと、コンクリートの塊を人力で動かしています。重機が入れないため、人の手で行うしかないのです。わずかな肉片が手に入るのは幸運で、大半は遺体を見ることすらかないません。 第二次世界大戦のころ、ナチスドイツの手を逃れたユダヤ人たちが事実を話しても、多くの人は信じなかったそうです。「いくらナチスでも、そんなことはしないだろう」と。 今、パレスチナで起こっている虐殺はインターネットで拡散され、その大半は無視されます。目を背け、ミュートされ、なかったことにされます。」 (「遅かれ早かれ」)
井中昭一
この度は本戦出場の栄誉を賜り、誠にありがとうございます。不肖、井中昭一に代わりまして、私、井中昭一のイマジナリフレンド、丼中昭が御挨拶させていただきます。ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
応募作がご評価いただけましたこと、友人として嬉しく思うと同時に、皆様にこれだけは伝えておかねばなりますまい。奴が作品を仕上げることができたのは、ひとえにブライアン・エヴンソン氏の著作のおかげです。
ある日、奴がスキップしながら私に『ブライアン・エヴンソン著・柴田元幸訳註「英日バイリンガル 現代ゴシック小説の書き方」研究社』を突き出し、これを読んだらBFCの原稿が書けたとのたまったのです。私も拝読しましたがその短篇の切れ味たるや、比べるのもおこがましいですが、奴の百億倍は固いでしょう。
皆様、ぜひ氏の著作をお読みください。ファンが増えれば邦訳も増えます。何卒よろしくお願いいたします。 (「鍵穴の乙女」)
西川口圭
おれが何者かって話なんですが。 去年の5月から文学フリマで小説の本を出しています。 公募には出したことがないです。通るわけないと思って。 でもBFCの本戦まで通ったので、いずれは他の公募にも出してみようかなと思います。まあ、それがまた地獄の始まりなのかもしれないけど。
12/1も文フリ東京出ます。ブースはF-24「眩し過ぎ、でも」。小説の本と、一緒に読者会やってる仲間と作った批評っぽい本の、2冊出ます。どっちもめちゃくちゃ面白いけど、あんまり刷らないから早めに来た方がいいよ。 (「記憶に値しない人々」)
和泉眞弓
BFC2ぶりです。本戦に出られると思っていなかったので驚きました。 北海道民です。北海道に生まれ育ち、北海道以外を知りません。 野球好きが高じて、全国の野球場を舞台とした短編を募り『スタジアムアンソロジー』を作りました。和泉も寄稿しています。 12月1日(日)の文学フリマ東京で初売り。北海道から出張って行きます。ブース番号<つ-47>梅乃舎文庫でお待ちしています。 (「棄子(きし)」)
鯵野三志美
(「十月の缶コーヒー」)
磯崎 愛
SF帝国歴史ファンタジー領ロマンス特区在住の磯崎愛と申します。今回は、自分の実存について知ってもらいたくてわかってもらいたくてなりふり構わず書きました。有り難いことに、みなさんに優しく受け止めていただけています。こうした機会を頂戴できて本当に感謝しております。
ところで、世界の障害者は約15%、日本では約7.4%だそうです。この差は日本が安全で医療が発達しているだけでなく、数に入れられていない人がいるせいもあるとの事。
ちょうど高額療養費制度上限引き上げのニュースが流れてきて、障害年金も貰えず働くのも難しい福祉の網から漏れた自分のような人間は、この先どうやって生きていけばいいのかとても不安です。でも僕は、声をあげて抵抗できる状態にある。だから今後も生きたいと叫ぶし誰も見殺しにしたくないと、なりふり構わず伝えていく――そういう決意を新たにしました。見守っていてくださいね。 〈「診断されない病い」の話しをするためにここに来た。〉
太代祐一
はじめまして。川柳を書いている太代祐一といいます。
私の作品を読んで、「なんだ、この謎の文字列は!」と驚かれたかたも少なくないと思います。へんなこと言いやがってと目くじらを立てるかたも、もしかしたらいるかもしれません。それでも私は川柳の言葉の、自由奔放さや悠々自適さを好んでいます。特にSNSで飛び交う言葉はどこかきゅうくつそうな顔をしているのに、川柳はふてぶてしくて身勝手です。そのような川柳において、ようやく私は息を落ち着かせて語りだすことができるのです。
私にとって川柳を書くことは、ままならない現実に折り合いをつける行いです。現実を諦める、手放す、終わらせることです。終わらせたうえで次の現実へと目を向けます。一句を書き終え、次の一句に取り掛かる、その繰り返しです。
たとえば小鳥の囀りを耳にして、なにとなく囀りのするほうへ目を向けてみるかのように、川柳が、詩歌がうっかりうかつに読まれますように。 (「砂を送る 川柳二十句」)
文月悠光
(「すべての庭のために」)
結城熊雄
生きてるだけで、準優勝。 (「園部さんのこと」)
春泥
精神も肉体も軟弱で、拳で殴り合うなんて野蛮なことは性に合わないうえに、人見知りなため、手作りのレザーマスクを被り、電ノコに油をさしているところですが、犬は酷い目に遭いません。決め台詞は「お前も蝋人形にしてやろうか!」です。よろしくお願いいたします。
*ご要望があれば毒霧を吐きます。気軽にお申し付けください。 (「誰も愛さなかったから」
伊藤なむあひ
朝五時二十分に起きる。猫にごはんをやる。米を炊く。シャワーを浴びる。人のごはんを食べる。家を出る。アイスコーヒーを飲む。電車に乗る。iPad miniで六百字ほど書く。職場に着く。いやいや働く。お昼ご飯を食べる。iPad miniで六百字ほど書く。しぶしぶ働く。職場を出る。電車に乗る。本を読む。もしくは明日のことを考える。帰宅する。ご飯を食べる。人と話す。猫を撫でる。お風呂に入る。ネコをする。夜九時に眠る。それを週五回ほど繰り返す。
伊藤なむあひです。主に人生と小説をやっています。よろしくお願いします。 (「畜魂機についてお話しします」)
藤崎ほつま
ざっと全てに目を通して、勝ち抜けできそうだし、
決勝作も書き始めているし、おそらくコレに勝てる作品は出てこないだろうから、
優勝できますね、優勝します。 (「綴る躰」)
永瀬 辻
はじめまして。
昨年は野村金光名義でお世話になりました。
今回はファイターです。
よろしくお願いいたします。
拙作を読んでいただけるのは勿論、色々な作品を読めて楽しいです。あと、ジャッジのジャッジやってみたかったんです。楽しみです。
決勝用の作品、最高傑作なので是非お披露目したい。厳しいかなー。ジャッジの皆さま、頼みます。
文学批評(もどき)のnoteやってます。
ほぼ誰も読んでいないので、マジで誰か読んでください。 (「天蓋に貼り付く」)
吉田棒一
神は「元気あれ」と言われた。
すると元気があった。 (「友達」)
由井 堰
(「トランクルーム」)
和生吉音
和生吉音(わおきつね)です。 去年までは「いつかちゃんと小説書きたいなぁ」という思いはありつつ、公募や投稿サイトに出すでもなくひとりでぼそぼそ中途半端に書いたり止めたりしていました。BFC5で本戦に参加させていただいて、日々執筆される方々を知るようになって、自分の中にもほんとに書きたい気持ちがこんなにあったんだと知りました。西崎さんに気づいてもらわなかったら一生を棒に振るところでした、ふぅ危ない危ない 来年は長いものを書きたいです。私は書くのも遅いしちゃんと没頭空間作らないと書けないトロくさタイプなので、時間を継続して作るためには生活習慣を整えないと・・・ということで来年の目標は「早寝する」です。 よろしくお願いします。 (「ひとりじゃないなら ─ Neanderthal girl meets CroMagnon boy ─」)
若山香帆
(「深く暗い森のなかにあらわれては消える湖があった それはわたしの湖だった」)
大竹竜平
やっぱりブンゲイってよくわからないのですが、太宰治の短編『十二月八日』の最後にしっかり書いてあったので助かりました。おすすめです。
Kaguya Books/社会評論社より刊行された『トウキョウ下町SFアンソロジー』もおすすめです。差別を許さず、尊厳を守るために書かれたSF作品がたくさん読めます。 (「不審な刃物」)
岸波 龍
(「窓」)
岩月すみか
(「まゆ子なんか嫌い」)
飯野文彦
一回目から参加しております。久しぶりに本戦に残れて、感謝しております。一回目の時、まだ一歳だった双子の孫も、今年で六歳。保育園の年長さんになりました。来年は小学生。私も小学生になれるでしょうか。よろしくお願いいたします。 (「みっちゃん」)
酒匂晴比古
ファイターと呼ばれても「戦っている」気がしない。
予選を勝ち抜いた実感もないです。作品が自分をここまで連れてきてくれた、としか。
決勝に進んだら同じことを感じると思う。1回戦で終われば、自作に「お疲れさま」と伝えたい。
率直な感想をいただけたら嬉しい。ジャッジの皆さんの評が楽しみ。
最後に。表現する人に、幸多かれ。 (「わたしが七歳だったころ」)
ジャッジ
斑目規至
深沢七郎は正宗白鳥の家によく泊まっていて、ある朝の話。正宗が新聞を拡げて記事の品定め。すみずみ素早く読み、時々ぎっと動きを止めて熟読。深沢、気迫に慄く。正宗が評価を下そうとしている。あとは『言わなければよかったのに日記』からの引用、深沢は問う。「(カンできめるのかな?)と思ったので、「先生、いいとか悪いとか、カンできめるのですか?」と聞くと同時だった、「そうだ」」(深沢七郎『言わなければよかったのに日記』中公文庫、P18)
RNオンリー・イエスタデイ
松本勝手口
はじめまして。松本勝手口です。
勝手な口をききます。聡明で不遜なるファイターの皆様、覚悟してください。こちらもそれなりの故障は覚悟しています。
では、プレイボール!
水嶋いみず
はじめましての方もそうでない方も、ご機嫌麗しゅう。
古今東西酒の力とは絶大なもので、「酒に奪われたものよりも多くのものを酒から得た」というチャーチルの言葉を引用するまでもなく、酒は多くを奪い、多くを与えてくれるものです。たとえばわたしから冷静な判断力を奪って、BFCのジャッジという機会を与えたように。
実はわたし、二つほど困った悪習があります。一つは誤字誤植が気になって仕方ないということ。もう一つはあらゆる言葉に駄洒落を考えずにおれないということ。これによって、最も笑顔にさせたい人を「そんなに正しくないとアカン?」と泣かせてしまったり、扱いに困る異文化人を優しく隔離するかのような気を遣わせてしまったりと、わたしの周りは常に苦笑いに満ちていました。
ところがここ文芸界隈は、誤字の指摘に感謝されたり、くだらない駄洒落に微笑みをもって受け流してくれたりと、実に寛容な世界ではありませんか。まるでビルから落下したらシモンズのベッドだったみたいです。そしてわたしがこの世界に迷い込むきっかけとなったのが、第一回BFCだったのです。その後六枚道場を経て、ほぼ毎回BFC
で予選敗退していたとなれば、わたしが今この場に立っているのはむしろ必然と言えるのではないでしょうか。
六枚道場とはなんぞやという方も多いと思いますので少し説明をすると、BFC1のあと約一年間にわたり毎月開催された六枚作品で楽しもうという企画で、今回のファイターでもある紙文氏が主催されていました。親愛なるtakeman氏が作ってくれたまとめサイト
(http://www.still-blue.com/sixdojo/)
で、「すべての作者」から「いみず」を選んで「条件変更」をクリックしていただけると、わたしの作品が検索できますので、もし良かったらごらんください。
関寧花
ササキリユウイチ
ブンゲイの未来、作家の未来、作品の未来。とりわけ、作品の未来を考えるために、作品を読みます。そして未来の明暗を判断することを引き受けます。
子鹿白介
昨年のBFC5、『ジャッジからの伝言』にて冬乃くじさんがイスラエル軍の虐殺に言及してから一年が経ちました。パレスチナにおける死者の人数は、ファイターの吉美さんが上に述べられた通りです。
四万人。二十万人。圧倒的な数字です。数字に圧倒されると、虚無がやってきます。「お前が声を上げても、なにも影響はない」みたいな顔です。
数字を根拠とする虚無をはねのけるため、この場をお借りして推すのが、糸川乃衣さんによるインタビュー記事シリーズ『ガザからの声』です。(既に知られている気もするけど、もっと広まってほしくて!宣伝します)
ガザ地区で避難生活をされているハンマード家の皆さんの暮らし、被害、思いが、丁寧な文章で綴られています。生きている人の、しっかとした爪跡です。
報道される数字の酷さだけでなく、等身大の実情を共有できることが、人間性を支える力(たとえ小さな力でも)になることを、勝手にですが信じています。
(文章は無料で読めますが、記事を購入し、無理のない範囲でハンマード家へ寄付をしてくださいましたなら、やっぱりとても嬉しいです!)
第1回 〜ハニーンさんに聞きました〜
https://note.com/itoyama_noe/n/nfd6ca4ce126f
第2回 〜ムハンナドさんに聞きました〜
https://note.com/itoyama_noe/n/nd5e50db275b7
[New!!]
第3回 〜アイマンさんとリハーブさんに聞きました〜 https://note.com/itoyama_noe/n/n3439f66ef60c