見出し画像

地球外少年少女の感想

電脳コイルの監督によるSF冒険活劇アニメ。舞台は現代と地続きの2045年。相変わらず日本はGoogleに支配されつつも、宇宙産業では少し先を行っている(なお宇宙商業施設はGoogleに買収されている)という世界。商業宇宙ステーションで事故に見舞われた主人公たちは宇宙という過酷な環境をサバイバルすることを強いられる。そんな中で彼らはある瞬間に立ち会う…。

おもしろい、おもしろい!!

まずこの作品の好きなところは、日本が日本らしいところである。Googleというビッグテックに飼いならされつつも、宇宙産業では少しだけ成功していて資金援助を受けているという絶妙なリアリティ、これがいい。(しかもGoogleがAIで個人情報を抜き取って世界を破滅させる極悪企業として描かれていない!)「あんしん」というお役所的ネーミングセンスだったり、下品な広告だったり、あらゆるところに日本あるあるが散りばめられているのも楽しい。

宇宙観光が身近になった日本、というだけで未来予想の映像としては面白いが、この作品にはもう一つ題材がある、それは「シンギュラリティ」である。(なお作中ではシンギュラリティというワードは1回も出現しない。)

AIのシンギュラリティ=技術特異点を描いたアニメは最近だといくつかあるが、その中ではとても分かりやすくかつ現実的に描かれているように感じた。おそらく、この世界のAI開発はニューラルネットワークの延長にいる。作中に出てくる「フレーム」(元ネタはフレーム問題)という概念も使い方もいい、分かりやすく扱われていた。知能リミッターというのも面白い。ハードウェアの制約なのだろうか。

宇宙を舞台にした冒険活劇としての面白さ、AIをテーマにした骨太SFとしての楽しさ、それらを高クオリティのアニメーションで描いた最高の映画である。難しいテーマにもかかわらず、子供でも楽しめる(と思う)のが本当にすごい。未来の科学少年のために、科学館とかで上映してあげてほしい…


以下ネタバレありの呟き

・これはフィクションあるあるだけど、ハッカーバトル的なやつは映えるのは分かっていてもどうしても嘘くさく感じてしまう。この作品はAI同士がお互いをハッキングしているので、何となく納得できた。まあでも実際何してるのかはよく分からんが。

・このアニメ、国連2.0がいい組織すぎる。一番大きい嘘は国連なんじゃないか。2.0という響きも今となっては怪しい響きなのが面白い。公開当時はここまで怪しい意味はなかったはず…w

・フィッツという名前はどこから来たのか。極論名前は何でもよかったはず。にもかかわらずセブンがフィッツという名前を選んだのは、それ以外にも意味があるからとしか思えない。

・量子的振る舞いが11次元的思考というのは面白い。量子コンピューターは今のところ高性能な計算機にしかならなそうだが、セブンは別の演算方法を見つけたということなのだろうか、科学の「ゆりかご」に揺られている我々には分からないが…。

・このインタビューが面白かった。伏字の部分に関してはおそらく那沙のことを言ってるんじゃないかと。

おしまい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?