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箱根のガラス芸術が導く音楽

米現代音楽の巨匠・フィリップ・グラス(Philip Glass, 1937)はリトアニアのユダヤ系一家に生まれ、1972年仏教徒とり、チベット難民の救済に力を注ぐ珍しい経歴をもつ。伝統的な演奏家や演奏会場に共感を見いださなくなり、主に画廊で演奏活動をするようになった。

特徴的な作品としては、オペラ「白いわたりがらす」で演奏時間は12時間にもなる。オペラではリヒャルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」につぐ長さだ。ちなみに、エリック・サティの「神秘的なページ」第2曲、「ヴェクサシオン」の演奏時間は18時間である。

それはさておき、作曲家グラスのことを思い出したのは箱根ガラスの森美術館を訪れたためだ。日本初のヴェネチアン・グラス専門の美術館として、ちょうど25年前にオープンした。

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ガラスの主な原料は「珪砂(けいしゃ)」と呼ばれる砂で、公園の砂場や浜辺の砂と同じ成分だ。
この珪砂をドロドロに溶かしてガラスをつくるが1700℃以上に熱する必要がある。

そこで、溶ける温度を下げる「ソーダ灰(ばい)」を加え、さらに水に溶けないガラスにするため「石灰」を加える。ソーダ灰や石灰も、砂や岩と同じ成分だ。これらを混ぜて溶かしたものを板状にし、ゆっくりと冷やすことで透明なガラスができる。

ガラスの歴史は古く、エジプト・メソポタミアの遺跡から発掘されたガラス玉が世界最古だ。エジプト第4王朝時代(紀元前2400年頃)の遺跡には、すでにガラス吹製の図が残されている。また、紀元前5000年頃にはメソポタミアでガラス玉がつくられていたと推定されている。

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時はすぎて12世紀頃、ベネチア共和国はガラス工とその家族をすべてムラーノ島に集め、ガラス産業の保護育成をはかった。色ガラス、エナメル彩色、レースグラスなど美しい装飾と高度なガラス工芸技術が花開いた。さらに15~16世紀にはガラス産業の最盛期をむかえ、鏡、杯、テーブルグラス、シャンデリアなどの各種各様のベネチアンガラスがつくられたという(『世界史は化学でできている』より)

ガラスの森美術館では、このベネチア時代の作品が展示されている。紀元前の作品も多く展示されており、魅力的だ。フィリップグラスもこうした画廊や芸術の中に溶け込むような音楽のあり方を模索していた。重なるものを感じた。





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