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私が「匍匐前進しながら敵国の銃弾をひらりとかわす国民的ナンバーワンアイドル」のモノマネをしながら賞味期限の切れた菓子パンを食べていると、突然クラスの男子が話しかけてきた。
「教科書、貸してくれない?」
私はイグアナみたいな顔をしていたので、みんなからは「佐藤さん」と呼ばれている。
「いいけど」
「サンキュー」
男子は私から教科書を奪うと、闇の彼方へと駆けて行った。
「ちょっといい感じじゃね?」
「そ、そんなことないって!」
「恥ずかしがるなよー」
そうこうしているうちに、夜が明けた。
世界には、朝にしか見えない色や、朝にしか聞こえない音がある。
その美しさを知っているのは私だけだ。
「教科書、サンキューな」
「付き合ってください」
「はい」
こうして私は男子と付き合うことになった。
名前も知らない、あの男子と。
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