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ハードSFの書き方17「物理的忠実さ」

どこまで「物理的に忠実」に描くのか?
冒頭や作中で説明がない非現実的な描写はどこまで許されるのか?

結論:観客(読者)が作品をそのまま見続けるにあたって、妙に引っかかってしまわなければOKか

主人公が悪役に追いかけられているシーン。目の前には深い川が流れている。絶体絶命の危機。が、主人公は川をものともせず、水面をぴょんぴょんと走り去る。悪役はもちろん、川に入れば沈んでしまうので川岸で歯ぎしりをする。

こんなシーンがあったとする。しかも主人公がなぜ水面を走ることができるのか、については一切、説明がなかったとする。ご都合主義だな~程度で済んでしまえばいいが、多くの人は「なんだそれ!?」ってなるのではなかろうか。あるいは、水に浮く、という特殊能力というか特殊な身体特徴を持っている、ということがあとあと、ストーリーで重要な役割をもつならば、もしかすると前提なしに、そういう能力が仮にあったとするとこんなことが起こる、という伏線になるかもしれないが。特にその後、水に浮く仮定が使われないとしたらなんだったんだろう???となってしまうのではなかろうか。
100%物理的に忠実になっていなければならないことはないとおもうが、やたらと物理法則を破るような表現をすれば観客はしらけてしまう。といっても、アニメやSFでは次々と法則を破るようなことが雨あられのように出てくる、しかも、その前提の多くは受け入れられている。どこで線引きされるのだろうか?
さきほどの水面走行の例は身近過ぎてしまい、「あれ変だな」となってしまっている。一方、ドラゴンボールの「かめはめ波」はどうだろう。現実からかなりかけ離れてしまえば、「変だな」を通り越して、そういう技を持っているんだな、で納得してしまうのではないだろうか。
宇宙空間での描写もいろいろ突っ込みが入ることが多い。「グラビティ」では消火器を使って宇宙空間を移動するシーンがあるが多くのサイトではこれは非現実的、消火器を投げてその反作用で動くなら有り得るかも、ということらしい。
作品をそのままみていて、あるいは、本をそのまま読み続けるときに、頭の中で「あれは何だったんだろう?」という疑念を持ったまま進んでしまうとストーリーが半分ぐらいしか入ってこなくなり、楽しめなくなる。非現実的な描写であってもすんなり許容さえできれば問題ないはず。その線引きはかなり曖昧で人によってまちまちなのは百も承知なのだが、多くの場合はあまり身近な日常的な描写はかなり現実に近いものでないと「あれ??」となる可能性が高い、一方で、日常からかけ離れているようなシーンではまあ大体のことは許されるのではないだろうか(マトリックス内の世界とか、死者がよみがえってしまうとか、弾丸が止まってしまうとか)。


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