センスのガリガリ君

なんで芸人になったかなんて聞かれることは、芸人ならば多々あることだと思う。そんな時はすごく解答に困る。始めようと思ったきっかけなんて、どちらかというとそれまでにやりたかったことが、自分の中でピークを過ぎたからってのが1番しっくりくる理由であり、子供の頃からずっと芸人になりたかったわけではない。というか、そんな芸人の方が少ないように感じる。

なりたかった色んなことを諦めて今芸人になってるわけで。そろそろガッツリ生きるかと思ったタイミングと芸人になった時期が重なってるから、たまたま楽しく生きれてるだけなのである。
竹原ピストルじゃないが、もういい加減諦めるのを辞めたといった感じなのだ。

おおまかに言えば、小学生の頃はプロサッカー選手になりたかったし、中学から芸人になるまでは教師になりたかった時期もある。
プロサッカー選手は僕のかなりガタイのいい中1くらいのボディではまず論外であることを悟ったし、教師に至っては、こんなハムスターも育てられないような人間が人様の教育なんてしていいわけがないと、大学4年に上がる前にギリギリ気づいちゃって、そこからあれよあれよと芸人になってしまったのだ。

それでもそれに気づくまでの教師になりたかった時期はそれなりに色々考えていた。
まず、人が好きであるし、1番多感な時期の子供に毎年携われることはとても素晴らしいことだと思って、そこに辿り着く前に経験した方がいいこともあるよなあとか。
昨日の記事でも書いた通り、僕が少年サッカーのコーチをやっていたのにはそういった理由もあった。

僕は中学校の教師になりたかったのだが、子供と接する機会があるなら小学生でもいい経験になると思っていた。
とはいっても、小学生といえど今思えば16歳でコーチを始めた時は小6とそこまで年齢差があるわけでもなく、僕だってまだまだクソガキだったから普通にめちゃめちゃに舐められていた。
大体の子は俊介と呼び捨てだったし、帰りに一緒に駄菓子屋に寄ったりとほぼ友達みたいな感覚だった。

だからかわからないが、他のおじさんコーチよりも距離が近くて絡む機会も多い。
あの頃の子供達との思い出は今もなかなかに鮮明に残っている。

やたらと色々な質問をして来る小3の子がいた。
今日はなんの練習?リフティング何回出来る?彼女いるの?みたいなのから、今いくら持ってる?家賃いくら?学校楽しい?みたいなのまで本当に根掘り葉掘り。お前がそれを聞いてなにが楽しいんだっていうような質問ばかり。極めつけには、

カジキマグロで殴られたことある?

と聞かれたこともあった。

これで殴られたことはなかったので、

今んところないかな

と答えると、

俺はあるよ。言うこと聞かないとお母さんがあれで殴るんだ。だから絶対言うこと聞くんだ

と言っていた。それは言うことを聞いた方がいいと思った。
彼が一体なにとカジキマグロを勘違いしていたのかはさっぱりだったが、その訳のわからない質問には毎度楽しませてもらったものである。

ハーフタイムに相手チームのベンチの作戦会議に忍び込む子もいた。
つまみ出されて自分のチームに戻ってくると、

どうやらフォワードの2人双子らしいよ

と、キックオフ前からわかる、スパイ失格の情報を届けてくれた。

小学生くらいの子供なんてのは変な価値観や変なルールのオンパレードだった。
そんな時期を見ているからか、あんな子供だった彼等は今どんな大人になっているのか、教師になれなかった僕はたまあにふと思うときがあるのだ。

そして色々な子のことを思い出していると、もしかしたら、どこかで同じ仕事をしている子もいるかもしれないと思う時もある。
というか、そう思わせる子がいたことを思い出した。
あの子は大阪に遠征に行った時に出会った子だった。

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