寿司泥棒、弁解釈明会見

同期という1つの関係性は特別なものである。芸人を生業としている以上、括ってみんな仲間だとは思っているが、同期という繋がりだけは、それぞれの期ではどうしても介入出来ない不思議な線引きがある時もあるのだ。
これは、恐らく芸人だけに言えることではないのだろう。

同期の活躍は1番嬉しく、1番悔しい。同期が辞めていくのは1番悲しい。
ライバルであり、仲間であり、戦友である。友達であり友達ではない。同じ釜の飯をわけあい時には奪い合う。なんとも言葉にしがたい関係性。

そりゃそうだ。最も長い時間を過ごしているのだから。もはや家族のそれに近いのかもしれない。
とにかく、同期がいるということは財産であり、1番の糧になっているのだ。

そんな吉本の同期の中でも、空気階段は最も深い関係性を持った内の一組。広く芸人として見れば行き着く先は同じであれ、彼らはコント師であり我々は漫才師である。だがむしろ、だからこそなのか、互いに濃密な時間を過ごしてきたと思っている。

特に水川かたまりという男。僕は彼を全面的に信頼している。自分で言うのもなんだが、彼もまた同じであると思っている。お互いのネタを見て意見することもあるし、お互いの悩みを相談し合うことも多々あった。結婚する前はめちゃめちゃ遊んでいた。こう見ると女性関係に聞こえるがそれは嘘みたいに皆無であった。二人とも根っこが童貞だからである。

彼が1番辛かった時期を一緒に過ごしたこともあった。文字通り一緒に過ごしていたのだ。

ラジオやライブで話しまくってるだろうから、かなり今さらの話ではあるが、かたまりは入籍する1年前に、生涯で1番愛した女性との別れを経験している。
賞レースで思ったような結果が出ず、酒に溺れ、彼女に怒鳴り散らし、部屋をめちゃくちゃにした翌朝別れを告げられたそうだ。字面だけ見ると北野映画のような暴れっぷりだが、実際は、ギリギリ女性にカテゴライズされる程非力で細い男性が、缶チューハイ2本でベロベロになりいつもより調子こいちゃっただけの話である。
それでも、その彼女が将来への不安を感じるには十分な出来事。ぐうの音も言えないくらい100%かたまりが悪かった。

別れを告げられた彼は、同棲していた家から出ていくこととなり、しばらく我が家に住むこととなった。寝る時はテレビを消した時の小さな赤い光にガムテープを張って本当に真っ暗にしなきゃ眠れないとか言い出した時は、彼女が日頃から貯めてたストレスを理解し、思わずラーメンマン直伝のキャメルクラッチをお見舞いするところだったが、あまりにもやりがいのないボディだった為、彼が寝ている間に何度も毛布をはがす程度に留めた。

それからはなんか毎日泣いていた。
バイト先の有線を聞いて涙が止まらないと泣きながら訴えてきた時は、世の中はこんなにもラブソングで溢れていたんだなと、うるせえの一言で片付けてもいいに決まってるようなことも言っていた。
あまりにも泣くから先輩と一緒にカラオケに連れて行ってもらった時は、みんなが歌う曲を聞いて泣いていた。もう逆にラブソングばかり入れて泣かしにいく流れになり、誰かがボケでBoAのLISTEN TOP MYHeart を歌った時に、彼がその歌を口ずさみながら泣いていたのを見て、こいつもう泣きにきてるなと思ったのを覚えている。

もう元には戻れないと誰もが思っていた。
ところがまさかの大逆転劇。彼の彼女への愛は本物で、またその逆も本物であった。あまりにも長くなるので省かせてもらうが、色々な奇跡が重なり、今しかないというタイミングで彼が誠心誠意書いた手紙は彼女の心を動かし、しばらくして復縁することとなったのだ。
そして、ライブ中にプロポーズをし、見事結婚というゴールを迎えることとなる。

彼に対して、僕は本当に幸せになって欲しいと思うし、このうんこ月9ドラマの出演者としていれたことは今となってはいい思い出である。
同期として力になれたことを少しだけ誇りに思えた気もしていた。

だがしかし。この大団円の裏側にはもう1つのドラマがあった。完全なるスピンオフ。

同じく空気階段鈴木もぐらVSオズワルド伊藤の水面下の戦いが繰り広げられていたのだ。

ここから先は

2,185字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?