俺の恋愛統計学

それにしたって30年も生きててまだわからんもんかね、みたいなことがいくつかある。
ホルモンを飲み込むベストなタイミングもわからなければ、豆電球っていつ使ったらいいのかもわからないし、もう長らく使ってないがコンドームの裏表もたまにわからなくなる。
ネットで調べりゃCHAGEが今元気でやってるかもわかるこの時代だというのに、明確に答えがわからないこともある。コンドームに関してはもう何回聞いても一生迷うと思うし。
それでもやっぱり、数ある難問を押し退けて、いつだってトップに躍り出るのは、僕にとっては女心に他ならない。

妹2人に母と伯母に囲まれた完全な女系家庭に育っても、僕にはそのアドバンテージを生かすことは全く出来なかった。
また、キャバクラのバイトを10年もやっていたが、キャバ嬢の心はわかっても、1人の女心として理解しようとするともう中学生とほぼ変わらない。
もう中学生とほぼ変わらないというのは、もう一般中学生男子と変わらないという意味であり、東京吉本が生んだキングオブキチガイこともう中学生さんのことではない。
ただ、もう中学生さんも僕と同じくらい、女心なんてわかるはずがないとは信じている。

そもそもがなにを考えてるのかよくわからない。
もはや偏見ではあるが、少なくとも僕が生きてきたうちに出会った女性の統計からすると、さっきまで超笑ってたのに、本当になにがキッカケだったのかわからないタイミングで怒り狂ったりする。
男性なら1度は経験したことがあるかとは思うが、その急激な落差に関してはこちらも体ごと抱き締める気構えは出来ているのだけど、なかなかどうして、その怒りの理由は教えてもらえないことが多く、怒りの出所を知ることが出来ないのがなんとも手の打ちようがなくなるのである。
僕が能天気だから気がついていないだけの可能性がかなり高いが、それにしたってどうして怒っているのか、毎回この中学18年生に教えて頂くことは出来ないものだろうか。

だから毎度毎度なにが悪かったのかさっぱりのまま別れることが多い。
ただ別れ際に溜まっていた不満を言葉にして伝えてくれた子もいた。
その子が僕にかけた最後の言葉が以下である。

女の子は斜め45度の優しさがちょうどいいんだよ

一瞬完全にオンエアバトルが頭をよぎったが、そんなに優しさを売りにしている方々ではなかったことに気づいた後、なんとなくその子が言っている意味は理解出来た。
優しすぎてもダメだし、冷たすぎてもダメ。女の子には、ちょうどいい優しさがあるんだよ。
みたいなことであろう。
彼女が最後に、次の戦いではきっと生き残れるようにと与えてくれた餞別である。
が、ここで1つ新たな問題が発生する。
僕はこの武器を片手に次の戦地へと歩き出したのだが、彼女はとても肝心なことを僕に伝え忘れていたことに、みなさんはお気づきだろうか。
もう1度彼女の言った言葉を思い出して欲しい。

女の子は斜め45度の優しさがちょうどいいんだよ

女の子にはちょうどいい優しさがある。これはわかった。
ただ1番重要なことは、俺は今何度なの?ということである。俺は今、どっちの角度に何度足りてなかったのかがさっぱりのままなのだ。
このまま進んでしまっては次の戦いで、嘘みたいな0角度の一直線を引いてしまう可能性すらある。
いや斜め45度の優しさがちょうどいいとかの前に俺が今何度なのかを教えてくれよと、お互いが背を向けて歩き出し立ち去る彼女を追いかけて聞き出したかったが、僕が振り返った時には、すでに単車乗ってったのかってくらいのスピードでいなくなっていた。そんなに早く切り替えられるもんかというのも、女心のわからないところの1つである。

この切り替えの早さというのは他にも体験がある。
昔付き合っていた彼女と、お互い涙涙のお別れをした後、お互いの幸せを願ってそれぞれの道を進んだ1週間後、僕の新しいバイト先のドライブスルーに、昨日別れたばかりの彼女がショートホープも入らないくらいシャコ短のセダンを運転する男と現れたのだ。
あまりの突然の出来事にポテトの上がる音が自分の心音に聞こえた。
彼女とその男は、それぞれオレンジジュースとブラックコーヒーだけ注文し、4トントラックじゃないんだからってくらい大回りのカーブでUターンしたあと国道とは思えないスピードで消え去って行った。
なにが悔しいって、こちらに気付いていなかった2人にバレないように、ギリギリ存在してもおかしくない人くらいにアゴをしゃくれさせて対応してしまったことである。
普通に大人な対応でもしてやりゃよかった。
オレンジジューシュとか言ってる場合じゃなかった。ブラックコーシーとか言ってる場合じゃなかった。
ていうか、お互いの幸せを願ってはいたが、それはさすがに1週間後なんて近い未来のことではないわけで、もっと先の、こうなんかお互いのことを整理したあとのことであったわけで、まずお互いの幸せを祈っていたわけで、どちらか片方が辛い思いをすることなど望んでいなかったわけで。
とにかく僕は、この切り替えの早さにはついていくことなど出来ず、ただただ計り知れない女心の不思議について首をかしげることしか出来なかったのだ。

人には向き不向きがある。女心を知り充実した恋愛をすることは、相手が余程寛大な女性でない限り僕にはほぼ不可能であるが、一応自分なりに女心についてしっかりと考えてみたことは何度もあり、その結果1つの仮説を立てることに成功したのだ。
これは、僕の数少ない女性経験から得た統計であり、本当に誰がなにを語ってるんだと思われること必至であるが、まあまあそう言わずに、女性の方はなに言ってんだお前と、男性の方はちょっとわかるかもくらいの感じで是非目を通して欲しい。

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