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変質者と僕らと。(まだ途中)

そもそも変質者とは何なのでしょうか。
読んで字のごとく、変な「性」質を持つ者。

Wikipediaでは下記の通り説明がされています。
「変質者(へんしつしゃ)とは、性的な行動が正常な人と異なっている人、性的異常者。
精神病ではないが気質や性格に異常が認められる人、犯罪や反社会的行動を行う性格の人を指すこともある。」

つまり心の中で秘めている、または自身のコミュニティ内で収められているうちはフェティシズム・性的嗜好で済むものも、公共の場や無関係な人間を巻き込むような「行動」が伴ってしまうと変質者となるのでしょうね。

これは僕が過去に体験したことと、一緒に暮らす高1女子に最近起きた変質者にまつわるお話です。

僕がまだ学生時代。
当時は新宿区のはずれ、神楽坂まで徒歩数分の住宅街に住んでいました。
まだ神楽坂の楽しみ方も知らない、純朴な少年でした。

両親に促されるまま中学受験に臨んだ結果、なんとなく合格、地元の学校ではなく私立の中学校にバスと電車を乗り継いで通っていました。
毎朝6時半過ぎの同じ都バス。
大体同じ顔ぶれのサラリーマンと学生たち。
麹町、永田町、国会議事堂前を通って新橋へ。
右手に国会議事堂、左手に春は桜、秋は銀杏、たまにデモ隊、季節ごとに彩りを変える並木も、特別なものではなくごくごく日常的な風景として映っていました。

今は無き内幸町のウィンズにバイト先のイラン人と通っていたのはまた別の思い出。

季節はちょうど衣替えの時期、制服がブレザーからシャツになってすぐの頃でした。
上下紺のブレザーから、グレーのスラックスと半袖シャツになり、梅雨入り後のジメジメっとした気候の中でも若干の爽快感を感じていたと思います。

新橋のバス停留所から浅草線乗り場へ向かっていると、
「おはよう」
後ろからそう声をかけてきたのは、バスの中で見かける乗客のおっさんでした。

中年太りで眼鏡をかけて、いかにも新橋にいそうなおっさん。
ベルトで締まらないほどではないのにサスペンダーを愛用していて、そのせいでだらしない下腹が余計に目立つ印象。
髪は若干後退していたものの、鳥の巣の出来損ないのような、所々クルクルっとパーマなのかクセ毛なのか判断が難しい…そんな髪型。
目は大きいとは言えず、どこか鋭さを感じました。

まだまだ純情無垢だったあの頃の自分は立ち止まり、
「おはようございます」
と中学生らしく愛想笑いを浮かべつつ朗らかに応えました。
「夏服に変わったんだね」
おっさんはさらににこやかに声をかけてきました。
満面の笑みでした。
ここでなんとなく、若干の違和感を感じつつも、
「そうですね、6月になったので」
と答え、軽く会釈をしてその場から足早に地下鉄入口へ向かいました。

毎朝見かけるおじさんにおはようの挨拶を交わした程度と考えれば、特別不自然な会話ではなかったと思います。

地下へ降りて浅草線乗り場へ向かう途中、地下街の並びにある公衆トイレに入って髪型を整えるのがその頃のルーティーンでした。
時間はまだ朝7時過ぎ。
昼はランチ、夜は会社帰りのサラリーマンで賑わうであろう地下街の通路も、他人の足音がはっきり聞き取れるくらい喧騒とは程遠く、人によっては薄気味悪く感じてしまうほどの静けさ。
その日も変わらずトイレに入り、軽く用を足そうと、3つ並んだ便器の一番右端へ向かいました。
すると先ほど声をかけてきた鳥の巣頭のおっさんが、僕に続いてトイレに入ってきたのです。
男性ならわかるかもしれませんが、小便器が3つ並んでいて、一人が右端で用を足していたら、普通の感覚だと左端を選ぶんですね。
ですがその鳥の巣頭おっさんは僕の隣の小便器を選択したのです。

便 便 便
器 器 器
  凸 凸

そこまで広くないトイレ内に整髪料の匂いと加齢臭がこもり、鼻を衝きました。
条件反射で身構えてみたものの、その時はまだ、なんだこの人…?と思う程度だったのですが…。
もう1つ、男性ならわかると思うのですが、基本的には性器を人に見られないように、なるべく小便器に近づいて用を足すんですね。
ですがその鳥の巣頭キモキモオヤジは、明らかに便器ではなく、こちらに見せつけるような体制で男性器を握りしめていたのです。
揺らしていたのです。
棒の方を。

(事細かい描写は避けます)

さすがに純情無垢な僕でも危険を察知しました。
鳥肌が立ちました。
ですが声は出ませんでした。
出せませんでした。

怖い怖い怖い怖い、気持ち悪い、やばい、変態だ、逃げなきゃ逃げなきゃ…そんな気持ちが一瞬で脳内を駆け巡りました。

もし防犯ブザーを持っていたら使用していたかもしれません。
人は急激な恐怖を感じると突発的に声が出せなくなる場合がある、と身をもって知ることが出来ました。
このことからも防犯ブザーは非常に有効だと思いました。

身体は膠着しながらも努めて冷静に、その場から逃げ出しました。

するとすかさずそのキモキモ死ねこの変態クズオヤジもズボンのチャックを上げながら僕の後を追ってきて、さらに話かけてきたのです。

「ねぇ」ニチャァ
「…はい」
「君可愛いね」ニチャァァ
「…」
「お小遣いいくらもらっているの?」デュフフ
「…3000円です」(なんで答えた?w)
「お小遣いあげるからおじさんと遊ばない?」グゥチャァ
「…遊ばないです」(半泣きダッシュ)

今振り返れば、なぜ立ち止まって会話をしてしまったのか、なぜ馬鹿正直にお小遣いを教えてしまったのか、色々と思う所はあるのですが、いまだにこの時の情景が忘れられません。
むしろ鮮明に覚えているのです。

おじさんと二人きりの男子トイレ。
隣に立たれる恐怖。
鼻を衝く整髪料の匂い。
見せつけられた棒。
ツチノコ。
声。
鼻息。

今でもこの時に嗅いだ整髪料の匂いを感じると気持ち悪くなってしまうくらい、心に傷を負う出来事でした。

その後はさすがに猛ダッシュで逃げました。
光の速さで走り出しました。
逃げ出しました。
半泣きでした。
おじさんはもうついてきませんでした。

後日談としては、通学手段を変えたこと。
親にも友達にも相談できずにしばらく苦しんだこと。
傷が癒えてきた頃、塾の帰りに飯田橋駅前で知らないおっさんに腕を掴まれ飲みに連れて行かれそうになったこと。

ここまでが僕にトラウマを作ってくれた変質者のお話になります。

ここからが最近高1女子に起きた出来事になります。


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