「俺は精子製造機じゃない!」人間扱いされなかった初めての精子検査【30代の妊活】
いまから数年前。
「本格的に子作りをしよう」という話になり、僕は妻に内緒で精子検査に行きました。
友人が不妊治療をしており、「意外と精子が原因で妊娠しないことがある」ということは把握していたので、一応、自分の状態を知りたかったのです。
行ったのは、近所のレディースクリニック。
近所なので、いまでもたまに目にしますが、少しトラウマになっています。
そこは、いかにもレディースクリニックという雰囲気で、院内も薄いピンクで統一され、どこかメルヘンな感じすら漂うクリニックでした。
僕がクリニックを訪れると、先にいた女性の患者さんが、ぎょっとしたリアクションをしたのを覚えています。
オザワ「(あれ?ここ男性の受診OKだよね?)」
受付で精子検査の予約がしてある旨を伝えると、スタッフは、目も合わせず機械的に問診票を渡してきました。
レディースクリニックは、男にとってアウェイ空間だから、こういう扱いが普通なんだと思いました。
例えるなら、女性専用車両に間違って乗り込んでしまったような気まずさ。
友人情報では、精子検査は個室で雑誌や映像の”お助けグッズ”にフォローしてもらいながら”行う”ものだと聞いていたので、「早く済まして早く帰ろう」という気持ちになっていました。
名前を呼ばれ、メガネをかけた年配の女性スタッフに検査の流れを説明されました。
案内されたのは、物置きのような部屋。
隅にソファが置いてあり、囲むようにカーテンが付いています。
居酒屋で言う半個室、病院なら大部屋をカーテンで仕切った状態。
そんな感じの場所でした。
全然、個室じゃない!!
「完全個室」か「半個室」かは、作業上とても重要なポイントです。
文字通り、取ってつけたような空間。
生乾きの雑巾でも置いてあるかのように、部屋の空気はじっとりと淀んでいました。
オザワ「(こんなところでするの!?)」
動揺する僕をよそに、女性スタッフは淡々と説明を続けます。
渡されたのは、検尿で使いそうな紙コップ。
スタッフ「5分ほどでお願いします」
そう言って、部屋を出ていきました。
5分!
持ち時間、たった5分??
気軽に言うけど、そんな簡単じゃないよ?
理不尽さを感じながらも、渋々ひび割れたソファに腰掛けます。
カーテンを閉めると、あまりの狭さにまるで隔離されているようでした。
そこで、”あること”に気が付きました。
オザワ「(”お助けグッズ”がない!)」
部屋の角なので、目の前には薄ピンクの壁が二面あるだけ。
あとは、ボックスティッシュが1箱。
話が違う!
刻々と迫るタイムリミット。
チラつくのは、ここに至るまでに遭遇した、僕にぎょっとした女性の顔、機械的な受付スタッフの顔、無愛想なメガネの女性スタッフの顔。
まるで、玉袋丸出しの変態を見るような蔑んだ視線・・・。
妻に安心してもらいたくて検査に来たのに、どうしてこんな辛い思いをしないといけないんだ。
あまりの雑な扱いに、自己肯定感が著しく低下します。
なんで、こんな目にーーー!
生まれて初めて、悔しさの中で発射しました。
2分もかかりませんでした。
カップを窓口に提出すると、
メガネの女性スタッフ「はい、お疲れ様でした」
そのトーンは、まるでエクセルにデータを入力するだけの簡単なお仕事をやったあとにかけてもらうような、何の心もこもっていない「お疲れ様」でした。
賢者モードなこともあり、僕の自己肯定感はほぼゼロになりました。
まるで、自分が棒をひねれば稼働する精子製造機になった気分でした。
心の底から、「俺は人間だーーー!」と尊厳を主張したい気持ちでした。
その後、女医さんから「特に所見はありません」と告げられたことはうっすら覚えています。
それ以外の記憶はありません。
クリニックから飛び出すと、家まで走って帰りました。
▼次の記事
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?