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対音楽

ファスト映画なんてくそだよな。
映画は情報じゃないでしょ。
なんて、毒づいてみる。

TAGO STUDIOの多胡さんが始めたHeadphone Barに行った。

気軽に入った店で、期せずして、衝撃的なことに気づくことになる。

カウンターに座るとヘッドホンが提供され、各席の端末から自由に音楽を聴くことができる。
ひとりでも音楽とお酒を楽しめるお店だ。

端子を刺して、パッと思いついた曲を選ぶ。
The Stone Rosesの「I am the resurrection」。
若い頃、何度も何度も繰り返し聴いた曲。

ドラムが鳴る、ベースが重なる、ボーカルが乗る、ギターが轟く。
曲の勢いが加速する。一つ一つの音が生き生きと響く。
目を閉じると演奏シーンが頭に浮かぶ。

こんなに大切に音を聴いたのはいつぶりだろう?
そして、ふと気づいてハッとする。
いつのまにか音楽を情報として消費していたかもしれないことに。

量を追っていなかったか?
他人が知らない音楽を知っていることを誇ろうとしていなかったか?
俺の音楽との向き合い方は、いわばファスト音楽みたいなものだ。

音楽が好きで、音楽に救われ、音楽で自らを更新してきた。
昔は歌詞カードとにらめっこしながら、音楽と対面したものだった。
近年は特にBGMにおとしめていたかもしれない。
新しい出会いに期待しなくなって当然だ。

店で使っているヘッドホンは多胡さんが開発した。
レコーディングスタジオでスピーカーから聴こえる音、
つまりミュージシャンがこだわってつくった音を再現しようとしたそうだ。
聴き手としての真摯さを忘れていたと思わされる。
誰に謝っていいかわからないから、心の中で音楽の神様にごめんと言ってみた。

ファスト音楽なんてクソだよな。
音楽は情報じゃないでしょ。
なんて、自分に向かってつぶやいてみる。

But don't forget the songs that made you smile
and the songs that made you cry
"Rubber Ring" The Smiths

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