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【要約】心理学的経営
JOINS株式会社が、マネジメントに関する名著を、自分たちなりに要約してお届けするシリーズ第二弾。
今回は、元リクルート専務・取締役の大沢武志氏によって書かれた組織マネジメント論の名著、『心理学的経営』をまとめました。
※一部、書き手の解釈を含んでいます。(記・尾澤)
序章 心理学的経営とは
心理学的経営:人間の現実をあるがままにとらえる経営理論の体系
人間の行動について、合理性の側面だけでなく、欲望、感情、情緒といった心理的現実にも目を向ける必要がある
第一章 モティベーション・マネジメント
仕事を取り巻く環境ではなく、主には仕事自体に内在する要素によってこそ、人々は働くことに満足感を持ち、動機づけられる。
仕事への内的動機づけのためには、以下を満たした職務設計や職務の見直しが必要
多様なスキルを必要とする仕事
一定のまとまりのある仕事
有意義な仕事
裁量のある自律的仕事
成果についてフィードバックがある仕事
効果的な目標設定・運用により、モティベーションは高まる
目標は具体的かつ明確であり、ほどよい背伸びが必要なものであるべき
必要なタイミングでの目標への進捗具合のフィードバックを与え、個人のみならず集団での目標設定も必要
第二章 小集団と人間関係
組織内の小集団と人間関係の力学が、働く人々の心理と行動を左右する
組織における人間関係に着目した「ホーソン実験」の洞察は、仕事仲間との非公式な人間関係が、働く人の主体性に影響を及ぼすということ
小集団を単位とした組織の形成や運営が、働く人の活動を左右する
会社のルールや上司の命令より、小集団内の規範がメンバーの行動を規定する
集団目標の魅力や集団の仲間意識の強さが、集団規範の凝集力が高める
小集団は、課や係、職場の中の気の合う仲間など、メンバーが相互に個性を認め合える対面小集団が望ましい
小集団は、活動の自律性が担保され、メンバーの当事者意識が育まれる環境でないといけない
小集団の運用は難しくとも、社会的地位を抜きにした一定期間の集中的グループ体験も、職場の人間関係に心理的インパクトを与える
第三章 組織の活性化
組織活性化の原点は、無秩序な組織状態(カオス)を創造すること
組織変革ために、閉塞的で安定した組織秩序を破壊しゆらぎを作る
既存の習慣を放しイノベーションの土壌を作るアンラーニングの必要性
企業が戦略的に組織活性化をうむためのポイント
採用:新たな人材の採用は活性化のための不均衡を作る手段
人事異動:人材や異動先/異動元の部署にも、カオス創出の契機を生む
教育:アンラーニングを可能にする教育の必要性
小集団活動:自律的小集団を会社の運営単位として日常化すること
イベント:日常の仕事から脱却できる企業内イベントのプログラム化
第四章 リーダーシップと管理能力
管理者という職務分類に望ましい性格的適性
性格的強靭性:自己統制や情緒の安定性に長けた性質
支配性:周囲の人間や部下を積極的に統率していく姿勢
決断性:感情より合理性に基づき議論や判断を行う態度
社交性:円滑な人間関係へと適応できる特性
リーダーシップの四つの機能
要望性:部下に指示を与え、個々の能力を業績へとつなげる
共感性:部下を尊重し思いやり、友好的な関係を築く
通意性:必要な情報や知識を部下に提供する
信頼性:部下から能力的・人間的に信頼されるようにする
部下による上司への評価が、上司のリーダーシップ能力を反映する
管理者には、管理者適性診断の結果をフィードバックし、魅力的な行動変容への見通しをたて、自己変革を動機づける必要がある
第五章 適性と人事
職務要件の基づく「職務適性」ではなく、日本では人物の社員/企業人としての「社員適性」に重きが置かれる
複数の職務経験や、異動・昇進を経て企業人のキャリアを積む
個人が保有する潜在的可能性から能力を測る
企業人としての適性判断の三つの側面
職務適応:仕事に対する適性や遂行能力
職場適応:職場での対人的な適応能力や性格特性
自己適応:仕事での自己本来の価値実現という主体的適合性
適性をどのように測定すれば良いのか?
知能測定:社員適性が主流な日本でも、企業人に共通して必要な基礎能力がある
基礎能力:知識の学習・応用力、問題把握力、論理的思考力
パーソナリティ測定:環境に適応するその人独自の人柄・性格を測る
適性評価というより、個人の尊重や自己理解のために使われるべき
第六章 個性化を求めて
個人が自他共の個性理解を深める/尊重する手がかりとして、パーソナリティテスト(MBTI)がある
以下の心理的機能と、外向/内向の行動傾向を軸に性格タイプを把握
知覚:外界や出来事の捉え方(感覚 or 直観)
判断:知覚したものへの判断の仕方(思考 or 感情)
自身における支配的機能と補助的機能の相補性への理解が個性理解を深める
支配的機能:知覚・判断の機能のうち自身がより得意な機能
補助的機能:支配的機能を補助しバランスを保つもう一方の機能
自身や他者の未発達機能(劣等機能)への理解も、個性理解を深める
あらゆる年代において、「個性化」は自分を見つめ直す機会を与える
思考・判断タイプを演じた結果、潜在的個性を抑圧する管理者は多い
心理的機能の相補性や劣等機能への理解が個性化を進める
職場で各人が個性化の問題を自己開示することで、新たな人間関係へと発展させられる
まとめ
「個を生かす」とは何を意味するか。近年、働く個人の尊重を謳い、働き方の柔軟性やワークライフバランスを強調する会社は多い。もちろん働きやすい環境の整備は否定しないが、それだけで個を生かしきれるのだろうか。筆者の回答はおそらく否だろう。
畢竟、「個を生かす」こととは、自分や他者の心理的な “リアル” と向き合い続けることである。そこには個人の生々しい葛藤や苦悩の連続があり、いわゆる解決策など存在しない人間関係の歪みも存在する。しかし、そのカオスに立ち向かわねば組織の発展はなく、働く者も真の自由を決して見出すことはできないのだろう。
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