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『まだ結婚できない男』が終わって

 『まだ結婚できない男』の放送が終了しました。たくさんの方に見ていだだき、ありがとうございました。今回は終了してみて思ったことを書きます。

 放送中は、人と会う度に「見てますよ!」「面白いですね!」という声をいただきました。そういう声の多さは僕の脚本家人生の中では前作『結婚できない男』と今回の『まだ結婚できない男』が双璧です。単に数が多いというだけでなく、ファンの方の熱中度も他の作品より段違いに高いように思えます。
 それはもちろん嬉しいのですが、不思議に思うのは、この作品が自分にとっては割と肩の力を抜いて気軽に書ける作品だということです。

試行錯誤しても疲れない

 一般的に、死に物狂いで取り組んで苦労の末に出来上がったものほど高い評価が得られるものだというイメージありますが、この作品に関してはそうではないのです。
 短時間で楽に書けるということではありません。民放では通常はドラマの台本は準備稿と決定稿の二回印刷しますが、今作は準備稿を二回刷り、決定稿と合わせて計三回印刷しています。それだけ試行錯誤は多いのです。
 しかしその試行錯誤が苦ではなく、時間があるならいくらでも出来るという感じなのです。それだけこの作品が自分の資質に合っているということでしょう。

続編の可能性は?

 「また続編を作って欲しい」という声も非常に多くいただきます。これは関係者の皆さんの考え次第なので脚本家としては何とも言えませんが、その可能性についてちょっと考えてみます。

 物語には、一回だけで完結して続きが想定不可能なもの(『ロミオとジュリエット』みたいな)と、いくらでも続きを作ることが可能なもの(『ドラえもん』や『サザエさん』など)があります。『結婚できない男』はその中間にある感じがします。「回を追って人間関係が変化していく要素」と「今回はこんな話という一話毎に完結する話」の両方が含まれているのです。

「男はつらいよ」の場合は

 僕は「男はつらいよ」シリーズに大きな影響を受けています。このシリーズは「毎回寅さんがマドンナと出会って恋するけど振られて終わる」という話をマドンナを替えて繰り返すパターンで48本も作られました。その中で主演の渥美清さんをはじめ出演者たちは歳を取って行くわけです(そこがアニメと違うところ)。寅さんが年齢と共に変化するのかしないのかという点については作り手は色々考えたんだろうなあと想像できますが、「基本的には変化しない」ということでシリーズは作られて行きました。
 『まだ結婚できない男』を作るにあたって、桑野は十三年経っても変化していないということにしたわけですが、寅さんが変化しなかったということがどこか頭にあったと思います。

 そんな「男はつらいよ」シリーズの中で明らかに変化するのは、甥っ子の満男がどんどん成長して行くということです。なので今回の『まだ結婚できない男』で姪っ子のゆみが成長して大学生になっていたのは僕としては「『男はつらいよ』みたいだ!」とテンションが上がった部分でした。

こうすれば続編は可能?

 「男はつらいよ」について考えるうちに気づいたのは、このシリーズが続けることができたのは、寅さんが毎回マドンナに振られて終わるからだということです。だから観客は前作のことをあまり意識せずに新作を楽しむことができたのです。
 だとすると・・・もしいつか『結婚できない男』のPART3を作ることができたら、そのときは桑野が振られる形で終わりさえすれば、その後はPART4、PART5と毎回振られて終わる形でいくらでもシリーズを続けることができる・・・・・・かもしれません。

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