#V読書会第2回(コンビニ人間 村田沙耶香)

①ざっくり感想

普通ってなんだ…?
個の時代とか言われることもある昨今でも、社会の一員として生きて日々の生活を平穏に送るためには、他人と積極的に同調して穏便に関わっていくことが大前提とされているような気がします。
世の中には多様な価値観や生き方があり、他人を尊重することが良しとされることを頭では理解していても、他人の行動を見てその行動や価値観を改めさせようとする行いは、簡単には辞められないものなのだと思わされました。
主人公が目に見えない社会通念に縛られたり、生きてきた年齢に合わせてこうしろああしろ言われなきゃいけなかったり、就いている職業に貴賤をつけられたり、人間社会の嫌な所を見せつけられている感じが読んでいて心に刺さりました。
ラストシーンはある種の救いを得たようにも、現状維持で今までと変化の無い状態に戻るだけにも見えて、物語としていい終わり方だったと思いました。

②ごちゃごちゃ感想

主人公は自分の感情・感性に素直に行動すると場にそぐわない異質な言動をとってしまう自分をしっかり客観視出来ていました。すごい。

(それが一般的かどうかは別として)特に意識せずになされる行動によって思いもよらない非難を受ける経験は、自己を疑う契機に大いになり得ると思いました。ちょっと悲しい。

主人公は、直近の自分を構成する様々な要素がその時一番身近な他人の影響を強く受けることを自覚していて、情緒的物言いに簡単に流されず、合理的で分析力のある聡明な人間だと思いました。賢い。

この人物が感情に乏しいとかそういうことは決してなく、妹や両親が悲しむのは本意ではないという理由があって、自分の言動が社会通念に反しないように気をつけていたり、配慮や気遣いと評される言動について敏感であろうとしている姿勢は好感触でした。

白羽はどこまでも自己中心的な人物に見えました。愚かで醜い生き方をしているように見えることもあれば、真理を突くような物言いをすることもあって、挫折がなければマシな人間でいられたのかなとも思いました。彼は彼なりに足掻いてる。

主人公の再就職先をイキイキと探している場面を見て、ある種自己実現のためとはいえ、他己実現や他者の成功に生きがいを見出すようになる所が自分に重なりました。(勝手な憶測ではあるけれど、Vのリスナーやアイドル追っかけしてる人にも心当たりがある人いそう)つらい。

白羽の言動には道義的な問題が多々ありますが、なりふり構わずに他人すらも利用できる図々しさは1%くらい見習いたいと思いました。


③刺さった言葉

・『被害者意識は強いのに、自分が加害者かもしれないとは考えない思考回路』
→自己中心的な物言いを続ける白羽を見事に表現していると思いました。

・『普通の人間っていうのはね、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんですよ』
→異端を排除したがる人間の一側面を的確に言い表していると思いました。

・『これ本当に、あなたのためを思って言ってるんで……! 初対面ですけど、絶対にちゃんと生きた方がいいですよ!』
→他人を慮る親切な言動でもありながら、初対面でありながら相手の行動に作用しようとする図々しさもあって、これぞ人間って感じがして好きです。

・『そうか。(白羽を)叱るのは「こちら側」の人間だと思っているからなんだ。だから何も問題は起きていないのに「あちら側」にいる姉よりも、問題だらけでも「こちら側」に姉がいる方が、妹はずっと嬉しいのだ』
→主人公が改めて自分の異常性を理解させられている場面で酷な場面だと思いました。同時に白羽が「こちら側」を本当に見事に演じていて、胸糞が悪いです。

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