輪郭

横断歩道の向こう側、待ち人の来ない賑わった駅前、捨てられたアダルトビデオの色褪せたパッケージ、横たわって動かなくなった猫。贖いとして供えた20枚の爪は、僕ではない誰かの血に染まって音を立てずに床に落ちた。また最初からだ。溜息に乗せて魂の欠片を飛ばす。際限の無い贖罪の継続は僕にとって何か意味を成しているのだろうか。この儀式をこれ程までにも無下に扱っている時点で僕は一生救われることなんてないのではなかろうか。救済があるとするならば、僕にとってそれは間違いなく死を指すのであろう。天国も地獄も来世も要らないから、早くこの身から解放されたい。羽があれば、翼があれば、僕はもう少し楽に生きられたのであろうか。見上げた空に悠々と飛行する烏を見つける。空の色に染まらない彼らを少し羨む。今日は一段と涼しい。

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