無数のピントの合わないキラキラした光たちのうちのひとつも私を照らしてくれることは無くて、やっぱり孤独な人のためのものなんてないんだって少し安心して、摩擦を起こすようにお祈りをしている。誰も何も願わない国の、生まれることのなかったサンタクロースの事を考えながら崩れかけたケーキとシャンメリーを開け、静まり返った部屋に座り込む。
喧騒をわざわざ引き剥がしてきたつもりなのに、どうにも外にいた方が気持ちがいい気がする。結局、どっちつかずに世間と馴れ合って浮かれている方が楽なのだ。聴こえない鈴の音に合わせて大きく乱れる、いつもより少し多めの人達の夜を考えてずうっと胸がざわついている。冬は夢が醒めていても気付かないような人達で出来ているんじゃないか、ってプツプツ蝋燭に火をつける。揺れる火を見ていると心がしんとする。ケーキの上にある消すための飾りなんかじゃなくて、私の火はもっと特別で尊いものに見える。
いつもちょっと願っている。突然血腥い事件に巻き込まれること。今あのツリーの麓で死んだら、誰か適当なキラキラを巻き付けて、てっぺんにお星さまみたいに飾ってくれるかな。思い出さないくらいの日が好き。特別を組み込まれるのは、やっぱり得意じゃないなってためらいながら傷つける。
赤は血の色、揺れる火の色。甘くて間違った夜。

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