蚯蚓脹

異様にどろどろとした罪悪感、妙にベタつきが残った右手の感覚。大嫌いなあの人を殺める前に、僕は自分を捨ててしまったみたいだ。足元に脱ぎ捨てた制服の滲んだ染みを落とせないことを悟って鋏で切り刻んでゴミ箱に放り投げた。時計の針が動いていない。伸し掛る憂鬱と格闘しながら、猫を撫でた。冷たかった。鳴らなくなった目覚まし時計を何度叩いてみても、朝が来ないことをそこで知った。透明な思考の隙、濁った空白の部分を透かして要にしてみる。暗がりを凝視してようやく見えた、角の生えた小さな悪魔。解けた呪いでさえ用無しだと言って突き放すことが出来なくて、いつまでも引き連れている。赤い血と青い夏。記憶はそこで止まっているが、随分と解像度の落ちた世界が許せなくて、無理やり歪ませようと加工してみるけど、元には戻らなかった。囁きと囀り、そして、絶え間なく響く煩いサイレン。ストップを言ってくれなかった人類全てに中指を立てる。左様なら。

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