ない

全部嘘だったよって、ここ数ヶ月の、私が本気で幸福だと信じていた数多の瞬間のネタばらしをされて、ああやっぱりそんな気がしてたんだ、元から夢みたいだったんだって、そういう伝えないでよかったはずの言葉を放出するわたしの口に垂れる、さらりとした涙が動かない口角に固まっているのはまだ夏のことで、また夏のことだった。

一人きりで寝転がっていたベッドに私を象った汗がこびりついて眠っている。このままここで死んだならば、きっと私の形をした真っ黒な影が私の代わりに遺る。
季節に執着が無くなったので代わりに温度に思いを馳せてみるが、六畳に詰まった私はいつも26度前後に冷やされているので、何の感慨も生まれなかった。屋内には奇跡が無いし屋外には遠慮が無い 犠牲をつくらず暮らす


痒いところに手が届いた 掻いたから血が出た
いつも何かが足りなくていつも何かに飽きている 
私が面白くないのはたぶん経験が無いからで、誰かが定義した普通の外側には行けない

もうきれいななにかを吐き出せない
黒煙は害だから吸い込まないでくださいね。

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