220310 些細なきっかけ

僕は地元でナンシーと呼ばれている。
全く本名と関連性がないのだが、中学高校の同級生にはほとんどそれで通っている。


それは中学1年の春、英語の授業の後だった。
初めての英語を学んだ僕らは、異常にテンションが上がっていた。
休み時間は習いたての英語の挨拶をし、覚えたての単語で、つぎはぎだらけの英会話をしていた。

そんなある日、友人の1人がこんなことを言い出した。
『みんなに英語のあだ名つけようぜ。』

『〇〇はボブ。』
『▲▲はグリーンっぽい顔よな~』
『××はキャシーかな』

かなりのフィーリングで教科書に載っている外国人の名前が、割り振られていった。


『じゃあ、デストラーデは…』

『ナンシーかな〜』


その休み時間中、僕らは無意味に互いのあだ名を呼び合い、笑い合った。

『いややっぱり、▲▲はグリーンぽい顔してるわ〜〜』

『俺なんか、ボブって太ってる感じするから嫌やねんけど~』

そんな外国人名トークはその日1日続き、僕もすごく楽しかった。
しかし、みんな翌日には自分のあだ名など綺麗さっぱり忘れ、また日常に戻っていった。


僕だけはあれから12年間、ナンシーと呼ばれている。

今年で24歳なので、もうすぐナンシーと呼ばれた期間が人生の半分を超えてしまった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?