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10月14日 仙台ひとり旅

よく晴れた休日、朝早い時間に家を出る。
10月も半ばになるとかなり冷え込むけれど、わたしにはこれくらいがちょうど良い。
BGMはスピッツの「ひみつスタジオ」。


新幹線で仙台に向かう。

伊坂幸太郎作品を読んだときの解像度の高さ。これは他の作家では味わえない。
学生時代を仙台で過ごしていてほんとうによかったと思う。思わずニヤニヤしてしまった。

仙台に着いてすぐ、ずっと行ってみたかったどら焼き屋さんに向かう。開店して間もない時間だったが、すでに長蛇の列が出来ていた。
お目当ての抹茶どら焼きと、家族へのお土産にする詰め合わせを買えた。

抹茶どら焼き。むちむちのババロアのような抹茶がはさまっている

これだけは要冷蔵だったので、まだ人通りの少ないペデストリアンデッキで街を眺めながら食べた。
こんなにずっしりとした見た目なのに、重くなくていくらでも食べられそうだった。すごい。
当たり前だけど、人気商品にはそれだけの理由があるのだなぁ。

駅に戻る途中、商店街にある昔ながらの洋品店のようなお店の入り口に、白うさぎちゃんがいた。最後の1点かつ展示品で汚れがあるため半額、と書かれているのを見て、思わず手に取ってお店に入ってしまった。今日からうちの子だよ。

ミッフィーのようだがミッフィーではなく「白うさぎ」
なのだ(ミッフィーの作者ディック・ブルーナのデザインしたものではある)
汚れあり、と書かれてはいたがほとんどわからないくらいだった


駅ビルが開いたので、めがね屋さんに行った。
いつも仙台に来るときはめがねを持ってきて、歪みを直してもらう。わたしのめがねは学生の頃にここのお店で作ったので、調整もここでしてもらうことにしている。腕の良い店員さんが何人もいるのだ。フレームをわずかに曲げてもらうと、顔にぴたりと沿うように馴染んだ。


学生のようなことをしたくなって、駅ビルにあるタワレコに行った。なんだか当時より売り場の面積が小さくなった気がするのはわたしが大人になったからだろうか。あの頃は視聴機で新譜を聴いたり店頭のモニターを眺めたりするだけで何時間もいられた。
J-POPの売り場で「す」の棚の前を通るとスピッツのコーナーがあって、今朝聴いていた「ひみつスタジオ」のカセットテープが置いてあった。カセットテープ。一度も買ったことはなかったけれど、スマホの画面で見慣れていたジャケットが小さいケースに入っているのがかわいくて思わず手に取ってしまった。
実家にある古いラジオはたしかカセットテープを再生できたはずだ、と気づくと同時にレジに向かっていた。あの黄色いビニール袋がとってもうれしくて、鞄にしまわずにわざわざ手に提げて歩いた。


お昼時になって自然と足が向いていたのは、学生の頃に何度か行った喫茶店。昔ながらの、かなり年季の入ったお店。
看板メニューのカレースパゲッティを注文した。スパイシーな香りが食欲をそそる…と思ったけど、当時よりもすぐにお腹いっぱいになった。つき日の流れを感じる。

体に吸い付くようなテーブルと椅子にものすごい数の漫画、なにからなにまで最高な喫茶店

学生時代の6年間を過ごした街は、ぼーっとしていてもだいたい歩ける。どこに何があるかがわかっているのでとても気楽だった。月並みだけど、第二の地元のような場所だ。

無意識のうちに、学生時代によく着ていたような系統の服を選んで着てきていた。
総柄のティアードワンピースに無骨なミリタリーのジャケット。アウトドアメーカーのリュックとゴツいスニーカー。大ぶりのイヤリング。今も昔もすきなものはあまり変わらない。


社会人になってから古着屋さんで買ったミリタリーのジャケットはかなり大きいポケットがついていて、文庫本が綺麗に収まる。読みかけの伊坂幸太郎を携えて駅前を歩いた。
イギリスでは鞄を持たない人が多くいるので、出先で読んだ本や雑誌や地図なんかをサッとしまえるように大きいポケットがついたアウターを着るらしい。「マガジンポケット」とか「マップポケット」と呼ぶのだ。そんな話を思い出してうれしくなった。

わたしもポケットに本を携えて仙台の街を歩く大人になった。
あの頃よりずっと晴れ晴れとした気持ちで、堂々と歩くことができていた。自分の変わらない部分も変わった部分も、ちゃんと丸ごと愛してあげようと思った。

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