セキュリティとかWEBとか教えるのって大変じゃない?

 なんちゃって教員やってます。所属している学校や学科の関係で、ICT系のことを教えています。今担当している科目は次の通り。(実際の科目名は違いますが、一般的な通称で表現してます)
・情報ネットワーク
・コンピュータアーキテクチャ
・オペレーティングシステム
・ヒューマンインタフェース
・ユニバーサルデザイン
・モデルベース開発
・応用物理
・マイクロコントローラ
・セキュリティ
・WEBコンテンツ作成演習
 このうち、授業教材が経年劣化しないのは、応用物理のような自然科学系とか、ある程度基本技術が確定しているコンピュータアーキテクチャや情報ネットワークなどです。一度、授業教材を作ってしまえば、ある程度使いまわしがきくので教師にはやさしい(?)です。
 応用物理はいいですよ。公式やら自然法則が変わることはほぼないので、一度作った教材は基本的に長年使える。「慣性モーメントは、来年から質量×距離の3乗に変わりますね~」なんてことは無いですから。数学や物理は教えやすい、ってつぶやく人たちが多い一因はこのことか、というのが教員になってから感じた世界ですね。(もちろん、学生の理解度が弱いなど難点があればブラッシュアップしないといけません)

更新が発生する科目

 一方、教材がすぐ使えなくなるのは、セキュリティやWEB開発技術ですね。WEBの場合は、バージョン上がったのは大きい更新でした。例えばHTMLタグで<body bgcolor='yellow'>なんて目がチカチカするページ作ることができましたが、bgcolorはHTML5で廃止されてますよね。でも教材の更新を忘れて「背景色はこうやって指定するんだぜグヘヘ」ってやってたら、「うちの学校で廃止タグ教えられて草」なんて旧Twitterにさらされてしまう世知辛さ。
 セキュリティなんてもっと大変。WEPってのはこういう暗号化方式でね…とかやってたら、「解読されたから使えませんー」ってニュースが出たとか、スパコン使わんとこの暗号化アルゴリズムは解読できないよねって言ってたら、「高火力のクラウド使って金かければ一般時でも解読できますよー」ってニュースが出て教材更新するとか。とにかく、一回作った教材は「今年は大丈夫かな」って確認しないと怖くて使えない感じです。昨年はメール添付のマクロによる攻撃が多くて…なんていうセキュリティトレンドの話は特にそう。
 教員も人間ですから、楽はしたい。なので一度作ったものを捨てて新たに作り直すというのは大変なのであまりしたくない。特に、コロナ禍期間は講義用ビデオを多数作りましたので、「これを毎年使いまわせば…グフフ」なんて思ってたものですが、あれが足らん、これはもうすたれてる、みたいな感じでほとんど再利用できませんでした。残念。
 ただ、現実的に役立つ学習をさせることが、学生の学習意欲にもつながることを考えれば、現場で使われている先端技術や最新の知識を(多少なりとも)与えることは大事だと思います。そこに労力を割くのが教員の役割となります。
※あ、C言語とかアセンブラはまた別な話ですよ。枯れた技術という位置づけではなくて、コンピュータ内部を理解するには必要な言語なので、しばらくは教え続けるでしょうね。

学校の外にいる人と協力した授業

 一つの解としては、技術開発の現場で活躍している人を授業に参与させることです。現場で使われている知識や技術を教えることができます。ただ現場のエンジニアの方々は、教育することは不得手な場合もあるので、そこは教員が授業運営の補助をしながら、学生との橋渡しをする必要があります。そのためにも、教える内容の事前理解はもちろん、エンジニアとの事前調整が不可欠です。これは外部委託(丸投げ)していいものではなく、教員の責任・監督下で行うものです。
 つまり、外の人に任せたから労力が減るというものではありません。結局、教員自分で学んで自分で教えるのと負担は同じでは?という考え方もあるでしょう。ただ、外の人と協力するメリットは以下のようなものがあると考えています。

企業や外部機関とのつながりが広がる

 学校の外の方々に協力していただくためには、企業や官公庁など外部機関との関係を構築しておく必要があります。なので、学校に求人に来る企業、イベントや学会で協賛している企業や市役所職員など、関わりはなるべく広げていきたいと考えています。これによって、授業でのご協力はもちろんですが、技術や知識、経済など様々な協力を得られる可能性が広がります。
 以前、コンテストに出場する学生がJavaやKotlinで分からないところがあって、以前にやり取りした企業の方に相談したところ、ご好意で開発エンジニアを紹介していただき問題解決できた、ということもありました。もちろん、卒業生の就職活動の時にも役立ちますね。最近だと、アントレプレナーシップ教育を強化、という話も出てきているので、企業創業者や、市の経済部などの方々も授業に加わっていただくことがあります。

最新の情報が得られやすい

 ニュースやSNSなどで最新の情報を得ているつもりではありますが、どうしても追い付かないところがあります。特にソフトウェアの開発環境のトレンドなどは現場にいる人しか分からないことも多いです。つまり独学では難しい部分もあると思います。そういう時に、各アプリケーションに対する適切な開発環境は何かを相談できるツテがあるのは大きいと思っています。

大変なんだけども、日々勉強…

 てなことで、教材は毎年見直しながら教える内容を考えていくプロセスはなかなか省力化できません。ただ必要なことだし、自分の勉強にもなるし、学生の学習意欲にもつながる(と信じてる)し、やるしかないかな、と。大変ではあるのだけど、最新情報を追ったり教材を更新したり企業の人々とつながりを作ったり、と日々やってるつもりです。
 似たような話ですが、教員になって間もないころ、過去問とほぼ同じ試験問題を作らないように心掛けていたものの、年を経るとラクしたくなって類似度が上がってくる傾向にあります。これも前述した労力軽減の一環ではありますが、あまり教育的には良くない。初心を忘れないようにしたいと思います。

 ということで、この度の中間試験の問題は過去問との類似度が低くなりますことご了承ください。

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