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[pmconf2021]150年変わらない「学び方」の変革に挑む。atama plusが向き合うプロダクト開発の壁

このnoteは「pmconf2021」での発表内容をまとめたものです。

自己紹介

atama plusの林田です。新卒でリクルートに入社し、UXデザイナーとしてリクナビというサービスを担当していました。
その後、今から4年ほど前に創業期のatama plusを見つけて、ミッションにビビッときて入社しました。そこから2年ほどUXデザイナーとしてプロダクトを作りに関わり、直近2年はプロダクトオーナーをしています。

1-1自己紹介

私たちは、社会の変化に合わせて、これからの社会で活躍するための力も大きく変わっていると考えています。
社会で活躍するための力を具体的に分解すると、ひとつはいわゆる数学や英語などの「基礎学力」。加えて、仲間と協力してプロジェクトを進めたり、自分の考えを発信したりといった「社会でいきる力」も同じくらい大事だと思っています。

ただ、今まで通りの学び方では、基礎学力の習得にものすごく時間がかかっていて、両方を力を身につけるには先生も生徒も忙しすぎます。

1-2社会でいきる力に時間を使えるように

なので、私たちは「学び方」そのものにアプローチすることで、基礎学力を習得する時間をグッと短くし、生み出された時間で社会でいきる力を養えるようにしたいと思っています。

そのために、学習を一人ひとりに最適化するAI教材「atama+を」塾・予備校を通じて、生徒に届けています。
塾・予備校さんと一緒に取り組んでいるのは、生徒の学習には、AI教材を提供するだけでなく、場と人の力も重要だと考えているためです。

1-3atama+の紹介

私たちが取り組もうとしている教育市場についても補足すると、世界で427兆円、日本は27兆円(世界3位)の規模です。
その中で、現在私たちがフォーカスしている学習塾・予備校市場は約1兆円規模。

少子化で縮小していく印象を持たれていますが、一人あたりにかける教育費は増加しており、約1兆円で市場が安定推移している市場です。

1-4市場規模

atama plusが向き合う難しさ

atama+を磨き続ける中で、なかなかに味わい深い難しい壁に何度もぶつかり、そのたびに「プロダクトづくりって難しいなぁ〜」と感じてきました。

本日はそんな壁にどのように向き合ってきたかをお話します。

そもそも、何が私たちのプロダクト開発を難しくしているのでしょうか。

2-1BtoBtoCモデル

atama+における難しさの1つめは、BtoBtoCプロダクトであるため関係者が多くなりがちだということです。さらに一口に塾・予備校側といっても、意思決定者である経営者と現場の教室長や先生がいます。生徒の側にも、通塾の意思決定者である親と塾で学ぶ生徒がいます。また、授業という場において生徒と先生が相互作用しながら、複数のプロダクトが同時に利用されるシーンが多く、ユーザーストーリーが複雑になります。

2-2顧客の多様化

2つめは、顧客が多様化していることです。ありがたいことに、創業以来サービスの提供範囲が拡大しています。塾・予備校さんごとに、授業形態も様々ですし、通っている生徒の学力も通塾の目的も様々。それらを踏まえながら、ひとつのプロダクトとして提供する難しさがあります。

2-3顧客影響の大きなプロダクト

最後に、ここが最も難しいポイントなのですが、atama+が塾・予備校の最も重要な商売道具である教材となるプロダクトであることです。そのため、塾・予備校にとってatama+を導入することは、事業変革の一翼を担うといっても過言ではありません。

コストの構造も変わりますし、業務プロセスも大きく変わります。そして、塾・予備校さんも私たちも、この大きな変化によって何が起きるかは、やってみないとわからないことが多くあり、顧客と一緒に未知の課題に向き合っていかなければなりません。

2-4難しさまとめ

まとめると、私たちの向き合っている状況は、関係者の多いBtoBtoCのモデルで、顧客も多様化している中で、顧客も我々も知らない未知の課題に挑戦していくということです。

この状況にどう向き合っているか。これから3つのパートに分けてご紹介します。1つめはプロダクトの優先度決定に関する壁、2つめは仕様検討に関する壁、3つめはプロダクトの効果測定における壁です。

プロダクトの優先度決定に関する壁

従来の開発プロセスでは、現場の声や観察による気づきをベースに課題を捉え、それを調査分析することでプロダクト開発につなげていました。もちろん今でも大事にし続けているカルチャーですし、atama+が使う人にとって良いものであり続けるための秘訣もここにあると思っています。

3-1ペインベースでの優先度決定の限界

ただ、それだけでは限界を迎えている部分もありました。「数が多くなってきて、これだけではうまく優先度付けできない」「どんな生徒か、どんな教室か、どんな塾か、という背景情報とセットで捉えないと、課題を正確に捉えることができない」といったことが起きました。

そこで、生徒、教室、塾・予備校という3つのレイヤーに分けて考え、構造的に整理することを通して課題の全体像を捉えやすくしました。

3-2みっつのレイヤーで課題を捉える

まず生徒です。atama plusは創業時からペルソナを設定してプロダクトを開発してきました。

3-3生徒

学習プロダクトは生徒層によって大きく変わるため、ペルソナを設定することが非常に重要だと感じています。ペルソナの生徒を核として、そこからどんどん対応できる生徒層を拡大していくというアプローチをとってきました。

顧客層は多様化していますが、ターゲットとなる生徒は変わっていません。セールス・カスタマーサクセスを担うBizチームとプロダクトチームがペルソナの生徒を目線合わせした上で、各塾・予備校にどのように我々のプロダクトを組み込んでいただくのか?が重要となります。

次に教室です。

3-4教室

塾の運営形態と、atama+をどのように導入しているかということに応じて状況が大きく異なるため、運営形態ごとに大まか次塾・予備校を分けてそれぞれ把握しています。

また、現場観察、ヒアリングはカスタマーサクセスチームと協同で行うことで、課題の目線が揃いやすくなっています。

そして、塾・予備校の単位での課題把握です。

3-5塾予備校

こちらは導入を推進するBizメンバーが一番理解しているので、そもそもどのような経営課題を解くためにプロダクトを導入いただいているのかを理解するために社内で共有してもらいました。

その上で、生徒、教室、塾・予備校の理解をもとに、向こう2年間の全社戦略を整理しています。

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目の前で具体的に発生しているペインにどうしても目を向けたくなってしまいますが、方針を整理することで将来に向けたより大きな投資と、目の前のペインの投資の比率をうまく優先度付けができるようになりました。

開発体制も工夫しています。

3-7開発体制へ反映

OKRと開発エリアを紐づけて役割分担しています。柔軟に役割分担を変えつつ、短期的なフォーカスは明確になりました。

仕様検討に関する壁

4-1現場で使われる機能を作る

いろいろな状況の現場がある中で、活用される機能を作ることは難易度が高いなと感じています。とはいえ、プロダクトを個別最適化してしまうとスケールしなくなってしまうため、そのようなこともしていません。

また、実は現場の課題にフィットする機能ができたとしてもそれだけでは不十分です。いつリリースするのか、どのように展開するのかも、活用状況に影響を与えるというという事情もあります。

過去の失敗談として、既存の業務フローの変化が必要な機能改修を予告なしに行い、現場で混乱が生じてしまったこともありました。

こちらに対しては、2つのアプローチで向き合っています。

1つ目はデュアルトラックアジャイルです。チームで試行錯誤しながらソリューションを見つけていくアプローチでプロダクト開発に取り組んでいます。
このアプローチで実装、仕様の詳細を検討するチームが中心となってDiscovery、Deliveryを行います。

4-2デュアルトラックアジャイル

この際に注意すべきなのは、必ず複数の塾で仮説検証し、特定の塾だけの課題解決になっていないかを考慮することです。

複雑な状況を踏まえた機能検討が必要なため、プロダクトを作るメンバー自身が直接顧客とコミュニケーションを取りながら機能を検討しています。早くいろいろな仮説をぶつけながら少しづつ前に進めていくデュアルトラックアジャイルは、非常に有効だと感じています。

もう1つのアプローチとして、リリースプランニングを入念に行うようになりました。

4-3リリースプランニング

この例としては、先日行った英単語機能のリニューアルです。

4-4英単語

これまで、運用面に課題があったのを、複数の塾の方に協力いただき塾の運用に沿った形に改善しました。夏休み明けという、塾で新しい取り組みがしやすい時期にリリース。事前にカスタマーサクセスチームとコミュニケーションを取っていたことで、塾の現場にもスムーズに展開され、リリース後、すぐに広く使われました。

プロダクトの効果測定

プロダクトが使われる状況が複雑だということは、効果を定量分析する上でも壁になっていました。

5-1定量データだけでは理解できない

たくさんの関係者がいて相互作用しながらプロダクトを使っているため、プロダクトの中のデータだけを見ていても適切に状況が把握できないことがあります。また、解約率や学力向上など、事業上の重要指標も影響が間接的で、プロダクトのどこを改善したら何にどう影響するのかを科学することがとても難しいです。

こちらに対しても、大きく2つ取り組んでいることがあります。
1つは定性情報と組み合わせることです。

5-2定性情報と組み合わせる

これによって、個々の施策ベースではなく、俯瞰して各塾や教室ごとのプロダクト活用状況の健全性を大まかに評価できるようになりました。

もう1つは、塾に協力をお願いした上で、定期テストや模試の答案結果などプロダクトでは取得できない情報を集めています。

5-3プロダクト内では取れない情報を集める

atama plusにはアルゴリズムチームがあります。プロダクトのコアになるレコメンデーションを検討するチームでプロダクト内外のデータを結びつけた分析をしています。まだまだ発展途上の取り組みですが、生徒の学習状況をより解像度高く把握し、科学することで、プロダクトをさらに進化させられると期待しています。

まとめ

関係者が多く、顧客影響の大きいBtoBtoCプロダクトに向き合う中で、多面的な把握と一貫した方針・戦略の両方が重要だと感じています。

6-1まとめ

この2つを両立させることはとてもチャレンジングで、日々頭を悩ませています。ミッション実現を第一に、1次情報を解像度高く理解しようとするカルチャーを大事にすることで、実現させていきたいです。

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