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スティーブ・ジョブズと生き別れた妹

中国との和解というアメリカ国家100年の計を実現させた男・ヘンリー・キッシンジャー元国務長官が、ドイツ生まれのユダヤ人であることは記事にも書いた。外交という国家の肝に元移民を据えるというのは、なんだかんだいってアメリカの懐の深さを感じる。民間においては現在、マイクロソフト、アドビ、グーグル、IBMなどの大企業の経営者がインド出身である。テスラのイーロン・マスクは南アフリカ出身である。

スティーブ・ジョブズが人種的にはシリアのアラブ人とドイツ・スイス系アメリカ人の子であることは知っている人は知っているかもしれない。彼は生まれてすぐ、アメリカ人とアルメニア系移民の夫婦の養子に出される。実の父母とは大人になるまで会わなかったというから、その影響をあれこれ考察するのはどうかと思われるかもしれないが、遺伝的な影響を見逃すことはできない。なにしろ実の父母のもう一人の子、つまり生き別れの妹は、『ここではないどこかへ』で有名な小説家・モナ・シンプソンなのである。

モナ・シンプソン(Wikipedia)

スティーブ・ジョブズはプログラマーでもエンジニアでもないと否定する人がいるが、iPhoneやMacintoshなどのプロダクトや、アップルストアというショップ、そして映画製作会社ピクサーで『トイ・ストーリー』などのアニメーション作品を提供した優れたクリエイターあったことは間違いない。彼は禅に通じる感性を大切にしたし、そういう意味では小説家・モナ・シンプソンと血を分けた兄妹であるといっても驚くことではないかもしれない。

移民の受け入れに拒絶的である日本においては、漁業や農業、工場やコンビニに従事する外国人は多くても、ホワイトカラーに外国人を雇用することは少ない。歴史的、民族的背景が違うといえばその通りであるが、とくに日系企業の経営者に外国人を雇用するパターンは少ない。思い出すのはレバノン系ブラジル人を父に持つフランス人・カルロス・ゴーンだが、フランス企業ルノーとの提携の際に日産自動車のCEOの任を受けて来日したのであって、しかも会社を私物化して公判停止中の身である。日本は貧乏くじを引いてしまったといってよい。

とはいえ、高度な技術者や経営者を日本に呼ぶことは、今や喫緊・不可欠の問題のように思える。もっともデフレで給料の安い日本企業に、優秀な人材が来てくれるかは別問題だが。

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参考文献

ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズ』


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