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2代目に引き継がれるジャパネットの「厳選集中主義」

ジャパネットといえば、テレビ通販番組での商売っ気丸出しのトークと親しみやすいキャラクターで庶民を魅了した髙田明氏。しかし明氏は2015年1月に、長男の旭人氏に社長職を譲っています。旭人社長は父親には経営のことは一切相談せず、父親からは「本当になにも相談しに来ないな」と呆れられているといいます。カリスマのリーダーでありプレイヤーであったトップを失う形となったジャパネットですが、旭人氏がバトンを継いでから過去最高売上高を更新中だそうです。そんな髙田旭人の経営戦略を分析してみました。

反骨心と客観的な目

髙田旭人氏は1979年長崎県佐世保生まれ、カメラ販売店を起業していた両親からは「仕事が第一」とはっきり言われ、「子供ははやく自立させた方が良い」という方針から中学から親元を離れました。「親のありがたみを感じることが多かった」といいますが、「距離を置くことで、客観的に父親や家業を見つめられたかもしれません」とも言っています。

「コネ入社」といわれるのが嫌という一念で東京大学に受かり、あえて野村證券に入社するくらいですから、ずば抜けて頭がいいのはもちろん、反骨心も相当あったのでしょう。父親の明氏とは入社後も「衝突を繰り返してきた」そうです。佐世保の本社ではなく、福岡のコールセンター、東京の東京オフィスの責任者となったのも、父親とのこれ以上の衝突を避けるためだったのでしょう。少年期から自立してきたことが、かえって父親のワンマン経営への批判につながったとも考えられます。

24時間で1商品を売り切る「チャレンジデー」を実施

とはいえここで強調したいのは、創業者が是とするジャパネットの「厳選集中主義」を否定するのではなく、むしろ継承し、磨き上げていったということです。ジャパネットはごくわずかな商品に絞り込むことで、コールセンターや物流センターの効率を上げ、競争力を高めてきました。ジャパネットのテレビ番組では、1時間に5~6商品を紹介していました。
ところが旭人氏は、CSデジタル放送の1時間の番組で1商品のみをじっくり紹介するという策に出ました。ここから、ふとん専用クリーナー「レイコップ」などのメガヒット商品が生まれるのです。
「ジャパネットチャレンジデー」も旭人氏の発案です。午前0時から翌日午前0時までの24時間、なんと1商品に限り、激安価格で徹底的に販売するというキャンペーンです。そのためにテレビ、ラジオ、インターネット、折込チラシ、通販カタログなど全媒体を1商品のために使ったのです。父の明氏も大反対したキャンペーンですが、結果は大成功、受付終了の午前0時まで電話が鳴りやまなかったそうです。

ロングテールビジネスを否定

その他にも旭人氏は、ネット通販商品の実に93%をライアップから外しました。取扱商品を約8500点から600点に絞り込んだのです。しかし売り上げはそれほど減らず、コールセンター、物流の効率化に大きく貢献しました。

旭人氏はネット通販の「定石」ともいえるロングテールビジネスではなく、ヘッドの部分を磨き上げ、厳選するジャパネットの「厳選集中主義」を踏襲したのです。これは前述のクリーナー「レイコップ」を布団専用にリ・ブランディングしたり、約30万円のクルーズ旅行をジャパネット仕様にカスタマイズして売り出したりといった施策にもつながります。

引き継がれるビジネスのDNA

旭人氏は父と比べられることを「あまり気持ちいいものではありません」と言っています。前述のように衝突も繰り返しています。しかし父のビジネスモデルの本質を見抜き、継承し、ブラッシュアップしているように思えます。
ジャパネットは2021年、「JAPANET@FUKUOKA」を立ち上げ、本社機能の一部を福岡・天神に移し、福岡の人材も確保するというプロジェクトを実施しています。髙田旭人氏の狙いを見極め、注視していきたいと思います。

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