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公明党 大口善徳 衆議院議員第213回国会 衆議院 法務委員会 第3号 令和6年4月2日

006 大口善徳

○大口委員
 公明党の大口でございます。
 今回の民法の改正、父母の離婚が子の養育に与える影響は極めて深刻なものがあります。二〇二一年、約十八万人の未成年の子が父母の離婚に直面している現状を鑑みますと、父母の離婚後の子の養育に関する法制度の見直しは極めて重大な政策課題であります。
 我が党も、昨年から法務部会で重ねてこの議論をしてまいりまして、本年の二月の二十九日、法案提出に先立って、小泉法務大臣に対して、父母の離婚後の子の養育に関する提言を出させていただきました。
 この提言は、児童の権利条約及びこども基本法を踏まえ、子供を権利の主体と位置づけ、子供の意見、意向等を尊重することを含めて、子の利益を確保する観点から、養育費の確保や安心かつ安全な親子の交流など、離婚後の子の養育環境整備を実施するとともに、DVや児童虐待を防止し、子やその監護をする親等の安全及び安心を最優先に考えることが求められるとするもので、子の利益の確保を求めています。
 そこで、本改正案で言う、また家族法の法律で言う子の利益とは、具体的にはどのような概念であるか、法務大臣にお伺いいたします。


007 小泉龍司

○小泉国務大臣
 何が子にとって利益であるか、これを一概にお答えすることは困難でございますけれども、一般論としては、その子の人格が尊重され、その子の年齢及び発達の程度に配慮されて養育され、心身の健全な発達が図られることが子の利益であると考えております。
 また、父母の別居後や離婚後については、養育費の支払いや適切な形での親子交流の実施も含めまして、父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことは、子の利益にとって重要である、このように認識しております。


08 大口善徳

○大口委員
 父母が子の養育をするに当たっても、子の利益を確保することが重要であり、その際には、子供の意見、意向等を把握し、これを尊重することが肝要であります。
 現行法でも、家事事件手続法第六十五条によれば、家庭裁判所は、親権等に関する事件において、家庭裁判所調査官の活用その他の適切な方法により、子の意思を把握するよう努め、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないとされています。また、親権等に関する事件において、子が十五歳以上であるときは、裁判所は必ず子の陳述を聴取しなければならないとされています。
 本改正案では、子の意見、意向等の尊重の考え方がどのように反映されているのか、お伺いします。


009 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 本改正案の民法第八百十七条の十二第一項は、父母が子の人格を尊重しなければならない旨を規定しております。この規定における人格の尊重とは、子の意見等を適切な形で尊重することを含むものと解釈されることになります。
 また、本改正案の民法第八百十九条第六項では、親権者変更の申立て権者の範囲を拡張し、子自身が家庭裁判所に対し離婚後の親権者の変更を求める申立てをすることができることとしております。これは、親権者の変更により子に直接影響が生ずることから、申立て権を認め、子の意見を適切に考慮することを制度的に確保するものであります。
 さらに、本改正案の民法第八百十九条第七項では、家庭裁判所が離婚後の親権者の指定又は変更の裁判をするに当たり、父母と子との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこととしております。これは、子が意見を表明した場合には、その意見を適切な形で考慮することを含むものであります。


010 大口善徳

○大口委員
 これは、法制審議会の家族法制部会の、家族法の見直しに関する要綱の附帯決議がなされておりまして、その二項にも書かれているところでございますので、しっかりお願いをしたいと思います。
 次に、我が党の提言では、子供の意見表明権を実質的に担保する措置を講ずることを政府に求めています。こうした課題について政府一丸となって取り組んでいただきたいと考えておりますが、どのように取り組んでいくか、法務大臣にお伺いします。


011 小泉龍司

○小泉国務大臣
 本改正案では、父母の責務として、子の人格を尊重する、このことを規定しております。これは、ただいま事務局から御説明しましたように、父母が子の意見等を適切な形で考慮することを含むものであります。
 本改正案が成立した際には、今申し上げた趣旨が正しく理解され、かつ実行されるように、関係府省庁等と連携して適切かつ十分に周知してまいりたいと思います。
 また、子の利益を確保するためには、父母の離婚に直面する子への社会的なサポートが重要であるとも認識しております。公明党からいただいた御提言も踏まえつつ、引き続き、関係府省庁等とも連携して子の支援の在り方について適切に検討してまいりたいと思います。


012 大口善徳

○大口委員
 本改正案は、親権者の指定あるいは変更における、共同親権にするかあるいは単独親権にするか、あるいは、親権の単独行使の可能な場合はどうなのか、さらには、父母の意見が対立した場合の調整のための裁判手続が新設をされる、そして安心、安全な親子交流の実現、多くのことが盛り込まれております。そういう点で、本改正案が成立し施行したならば、家庭裁判所が担う役割というのは更に大きくなるわけでございます。
 最高裁におかれては、この改正案の趣旨に沿った、裁判官や調停委員や調査官が子供の利益の観点から適切な運用を確保しなければならないし、また、DVあるいは虐待の場合に確実に安全、安心を確保する必要がございます。そういう点で、このような適切な運用の確保に向けてどのような取組を進めていくのか、最高裁判所にお伺いしたいと思います。


013 馬渡直史

○馬渡最高裁判所長官代理者
 お答えいたします。
 仮に改正法が成立し施行された場合におきましては、各裁判所において、改正法の各規定の趣旨、内容を踏まえた適切な審理が着実にされることが重要であるというのは委員御指摘のとおりで、我々もそのとおり認識しているところでございます。
 最高裁判所家庭局といたしましても、例えば、改正法施行後の運用に関する大規模庁での集中的な検討や全国規模の検討会の機会を設けるなどいたしまして、各裁判所における施行に向けた準備、検討が適切に図られるよう、必要な情報提供やサポートを行ってまいりたいと考えております。
 あわせて、裁判手続の利便性向上や事件処理能力の一層の改善、向上に努めることも重要であり、期日間隔等の短縮化に向けた取組やウェブ会議の活用の拡充などを含む各家庭裁判所における調停運営改善の取組を支援していくほか、調停委員の研修体系の見直しを図っていくということを考えております。
 以上でございます。


014 大口善徳

○大口委員
 改正法対応のためのプロジェクトチームを設置するということでございますので、しっかりこれはお願いをしたいと思います。
 また、改正法の趣旨に沿った適切な運用を確保するためには、運用面の検討はもちろんでありますけれども、家庭裁判所の事務処理能力の一層の改善、向上を図る必要があります。家庭裁判所の体制の整備、これは家事担当の裁判官の大幅な増員ということも私は求めたいと思いますけれども、そういうことも含めてこの整備をしていくことは重要であると考えます。
 家庭裁判所における体制の整備についてどのように進めていくのか、最高裁にお伺いします。


015 小野寺真也

○小野寺最高裁判所長官代理者
 お答えいたします。
 裁判所はこれまでも、事件動向等を踏まえて着実に裁判官を増員してきたところでございます。とりわけ、平成二十五年以降は、民事訴訟事件の審理充実を図るほか、家庭事件処理の充実強化を図るために、事件処理にたけた判事の増員を継続的に行ってまいりました。また、各裁判所におきましても、家事事件を担当する裁判官等を増員するなど、事件数増も見据えて、家事事件処理のために着実に家裁の体制を充実させてきたところでございます。
 家族法の改正があった場合におきましても、引き続き、裁判所に期待される役割を適切に果たせるよう必要な体制の整備に努め、家庭裁判所の事件処理能力の一層の向上を図ってまいりたいというふうに考えております。
 とりわけ、家事調停におきましては、裁判官による調停運営だけではなく、弁護士としての一定の職務経験を有する者を家事調停官として任命をし、裁判官と同等の権限を持って、弁護士としての経験、知識を活用した調停運営も行っているところでございます。
 家事調停官は、これまで大規模庁を中心に一定数を配置してきたところでございますけれども、本法案により家族法の改正がされた場合には、本改正が各家庭裁判所における事件処理に与える影響を考慮しつつ、家事調停官の配置数の増加、あるいは、これまでに家事調停官の配置のなかった庁に新たに配置をするなどの調停官制度の更なる活用により、家庭裁判所の事務処理能力の一層の向上を図っていくことも含めて、検討してまいりたいと考えております。


016 大口善徳

○大口委員
 今、家事調停官は十三本庁三支部、六十一名であるわけでありますけれども、これを大幅に拡充していただかなきゃいけないと思います。
 次に、親権の在り方に関する法改正案の内容について伺います。
 ここで、特定非営利法人mネットのホームページに寄せられたある弁護士の方の御意見を紹介したいと思います。
 共同親権の導入について根強い反対や不安があることは承知していますが、実際の家族は、DV被害者と子が暮らす家族のみではなく、離婚時に取決めがなく親子の縁が切れてしまうケース、暴力等の理由がなくても同居親の拒否により親子面会ができていないケース、子から面会を求めても断る別居親、DV加害者が子を監護しているケースなど、別居する家族の態様は種々多様です。子の利益を守るならば、単独親権の選択肢も残しつつ、父母双方の養育責任と権利を明確にする共同親権制に踏み出し、同時に、脆弱な家族を支援するしっかりとした仕組みをつくることが必要と思います。
 このように、別居後あるいは離婚後の家族の態様の多様性が指摘されておりまして、傾聴に値すると思います。子供の利益のため、離婚後も共同親権がふさわしいケースがあり、選択肢を設けるべきと考えます。
 他方で、共同親権制度の導入に対しては、離婚後の父母双方が親権者になることでかえって子の利益を害するのではないかなどの懸念や、DVや虐待のある事案を念頭に置いた不安の声も聞こえるため、本改正案がこうした懸念や不安の声にしっかり対応することができていることを示すことも重要であります。
 そこで、本改正案の意義や解釈について質問します。
 戦後の改正の際に離婚後単独親権制度を採用した民法を今回改正をするわけでございます。そして、離婚後共同親権制度を導入することの立法事実についてどう考えているのか、法務大臣にお伺いします。


017 小泉龍司

○小泉国務大臣
 離婚後単独親権制度を採用した昭和二十二年の民法改正当時は、共同生活を営まない父母が親権を共同して行うことは事実上不可能であると考えられておりました。しかし、離婚後の子の養育の在り方が多様化し、離婚後も父母双方が子の養育についての協力関係を維持することも可能であり、実際にそのような事例があるとの指摘もございます。
 こうした社会情勢の変化等を背景として、本改正案の民法八百十九条においては、離婚後の父母双方を親権者とすることができることといたしております。
 このような改正は、離婚後の父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことを可能とするという点で、子の利益の確保につながるものであると考えております。


018 大口善徳

○大口委員
 本改正案では、裁判所は必ず単独親権の定めをしなければならない場合を規定しています。その考慮要素や判断基準を明確にすることが重要であります。
 改正法の民法第八百十九条第七項一号では、父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるときという表現が用いられています。また、その同項第二号には、父母の一方が他方の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無等を考慮するとの表現が用いられています。
 このおそれという表現をめぐっては、例えば、共同親権制度の導入を強く推進する立場からは、客観的な証拠によって児童虐待やDVが明確に立証されない場合に限るべきであるとの意見や、おそれという文言は削除すべきという意見があります。その一方、共同親権に慎重な立場からは、DVや虐待の客観的な証拠を提出することは困難な場合があるのではないかとの懸念も聞かれ、その立証責任を誰が負担するのかという指摘もあります。
 このおそれというのはどのような意味で、どのように判断されるのか、また、裁判所が必ず単独親権としなければならないケースはDVや虐待のおそれがある場合に限られるのか、また、DVや虐待のおそれがある場合のほか、裁判所が必ず単独親権としなければならないケースとしてどのようなものが想定されるのか、法務省にお伺いします。


019 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 本改正案の民法第八百十九条第七項第一号に言う「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれ」や、第二号に言う「父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれ」とは、具体的な状況に照らし、そのような害悪や暴力等を及ぼす可能性があることを意味しております。
 このおそれにつきましては、裁判所において個別の事案ごとに、それを基礎づける方向の事実とそれを否定する方向の事実とが総合的に考慮されて判断されることとなると考えております。なお、当事者の一方がその立証責任を負担するというものではありません。
 このおそれの認定につきましては、過去にDVや虐待があったことを裏づけるような客観的な証拠の有無に限らず、諸般の状況を考慮して判断することとなり、いずれにせよ、裁判所が必ず単独親権としなければならないケースはDVや虐待がある場合には限られません。
 また、本改正案は、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無のほか、父母間に協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難と認められるときにも、裁判所は必ず単独親権としなければならないこととしており、身体的なDVがある場合だけでなく、精神的DV、経済的DVがある場合や、父母が互いに話し合うことができない状態となり親権の共同行使が困難な場合も、事案によりましてはこの要件に当てはまることがあると考えられます。
 他方で、本改正案では、高葛藤であることや合意が調わないことのみをもって一律に単独親権とされるものではありません。裁判所の調停手続においては、父母の葛藤を低下させるための取組も実施されていると承知しており、高葛藤であったり合意が調わない状態にあった父母であっても、調停手続の過程で感情的な対立が解消され、親権の共同行使をすることができる関係を築くことができるようになるケースもあり得ると想定されております。


020 大口善徳

○大口委員
 また、民法八百十九条の第六項によれば、協議離婚の際に単独親権の定めをしたとしても、親権者でない親が共同親権への変更を求める申立てをすることができることとなっています。しかも、本改正案によれば、この親権者変更の規定は、改正前に離婚した父母にも適用されることとなります。
 本改正案によれば、どのような場合に単独親権から共同親権への変更が認められることになるのか、その判断基準はどのようなものか、例えば、一定の収入があるにもかかわらず理由なく長年にわたって養育費の支払いをしてこなかったような別居親が共同親権への変更の申立てをしてきた際に、そのような変更の申立ては認められるのか、法務大臣にお伺いします。


021 小泉龍司

○小泉国務大臣
 親権者変更の申立ては、子の利益のために必要がある場合に認められます。当然、事案によっては父母双方を親権者に変更することが子の利益になる場合もあり、既に離婚して単独親権となっている事案について、そのような変更の申立てそのものを認めないとすることは相当ではないと考えられます。
 その上で、本改正案は、親権者変更の裁判において考慮すべき事情や単独親権を維持しなければならない場合については、親権者指定の場合と同様としております。そのため、DVや虐待の場合のほか、父母が共同して親権を行うことが困難である場合には、親権者を父母双方に変更することはできないことになります。
 以上述べたことを踏まえ、あくまで一般論としてお答えをすると、親権者変更の判断においては、親権者変更を求める当該父母が養育費の支払いのような子の養育に関する責任をこれまで十分果たしてきたかも重要な考慮要素の一つであると考えられます。
 したがって、別居親が本来であれば支払うべき養育費の支払いを長期間にわたって合理的な理由もなく怠っていたという事情は、親権者変更が認められない方向に大きく働く事情であると考えられます。


022 大口善徳

○大口委員
 本改正案、改正法の八百二十四条の二では、父母双方が親権者である場合の親権行使のルールについても規定の整備がされています。
 父母双方が親権者であれば、子のために親権を共同して行うことになりますが、例えば、急迫の事情があるときや監護及び教育に関する日常の行為をするときには親権の単独行使が可能となっています。
 これらのルールを検討する上で、急迫の事情などの概念をしっかり明確化しておくことが重要であります。急迫の事情があるときの定義や、これが認められる具体例はどのようなものであるか、また、監護及び教育に関する日常の行為とは何か、具体的にどのような行為がこれに該当するのか、民事局長にお伺いします。


023 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 子の利益のため急迫の事情があるときとは、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時に親権を行使することができず、その結果として子の利益を害するおそれがあるような場合を指します。
 急迫の事情があるとされる例としては、入学試験の結果発表後の入学手続のように、一定の期限までに親権を行うことが必須であるような場合、DVや虐待からの避難が必要である場合、緊急の医療行為を受けるため医療機関との間で診療契約を締結する必要がある場合などがあります。
 監護及び教育に関する日常の行為とは、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないものを指しております。例えば、その日の子の食事といった身の回りの世話や、子の習い事の選択、子の心身に重大な影響を与えないような治療やワクチン接種、高校生が放課後にアルバイトをするような場合などがこれに該当すると考えられます。


024 大口善徳

○大口委員
 我が党の提言にもございますし、また附帯決議事項の第一項にもございますけれども、子の親権者の指定や変更の際に必ず単独親権としなければならない場合や、単独で親権の行使ができる急迫の事情や日常行為などについて、基準の明確化や周知の徹底を求めています。
 この点について法務省としてはどのように取り組むのか、大臣にお伺いします


025 小泉龍司

○小泉国務大臣
 御指摘も提言でいただきましたけれども、非常に重要な点だと思います。
 したがいまして、本改正案が成立した場合には、その趣旨が正しく理解されるよう、関係府省庁等とも連携して適切かつ十分に周知したいと思っておりますし、その際には、国会での法案審議の過程で明確化されました判断基準や具体例についても分かりやすく丁寧に解説するよう努めていきたいと思います。


026 大口善徳

○大口委員
 父母の別居後や離婚後も、安全、安心を確保した上で適切な形で親子の交流の継続が図られることは、子の利益の観点から重要であると考えます。
 本改正案では、親子交流が子の利益にかなう形で行われることを確保するため、どのような改正をしているのか、また、親子交流に関しては、共同親権になると別居親が子と交流しやすくなるという考えがありますが、離婚後の父母双方が親権者である場合、単独親権の場合と比較して、親子交流の頻度や方法など、どのように変わると考えられるのか、法務省にお伺いします。


027 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 本改正案では、婚姻中の父母の別居時における親子交流に関する規定や、家庭裁判所が当事者に対し親子交流の試行的実施を促すための規定などを新設することとしております。
 これらの規定におきましては、子の利益を最も優先して考慮しなければならないことや、子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情がないことを要件とすることなどにより、親子交流やその試行的実施が子の利益にかなう形で行われることを確保することとしております。
 父母の離婚後の子と別居親との親子交流は親権の行使として行われるものではなく、別居親の親権の有無の問題と親子交流の頻度や方法をどのように定めるかといった問題は別の問題として捉える必要がございます。
 その上で、親子交流の頻度や方法につきましては、安全、安心を確保して適切な形で親子の交流の継続が図られることは子の利益の観点から重要であるということを前提として、子の利益を最も優先して考慮して定めるべきであります。
 離婚後の父母双方が親権者である場合には、親子交流の機会を通じて別居親が子の様子を適切に把握することが円滑で適切な親権行使のために有益であることも一つの視点として考慮されることになると考えられますが、いずれにしましても、適切な親子交流の在り方は、親権行使の在り方とは別に、子の利益の観点から個別具体的な事情の下で検討されるべきものと考えられます。


028 大口善徳

○大口委員
 子やその監護をする親が安心して試行的親子交流に臨むことができるよう、家庭裁判所における児童室等の物的環境の整備や拡充も重要であると思われます。
 家庭裁判所における児童室等の整備や拡充についてどのように進めていくのか、最高裁にお伺いします。


29 馬渡直史

○馬渡最高裁判所長官代理者
 お答えいたします。
 子をめぐる紛争のある事件におきましては、子の利益に配慮した解決を図るために、家庭裁判所が家裁調査官に命じて、子との面接や親子交流の試行を通じた調整等の調査を行っておりますが、こうした調査では、子が緊張することなく安心して家裁調査官との面接や親子交流の試行に臨むことができるようにして、また、子の表情、しぐさなどの非言語的な情報や親子の交流状況等を的確に観察できるようにすることが重要でございます。
 家庭裁判所では、このような調査のための物品として、プレーマット、幼児用椅子といった温かみのある雰囲気づくりのためのもの、また、観察のための映像音響機器あるいはワンウェーミラーを整備してきたところでございます。
 令和五年七月時点で、集音マイク設備、ドーム型カメラ等の映像音響機器、ワンウェーミラー、またプレーマット、幼児用椅子等の物品のうち必要なものが整備されている庁は、最高裁家庭局において把握している限り、全ての家裁本庁、家裁支部のうち百四十九庁、家裁出張所のうち十八庁でございます。
 今後も、事件動向や事件処理の実情等を十分に踏まえつつ、この改正法案が改正された場合には、この改正内容も踏まえて、映像音響機器やその他の備品を順次整備するなど、子の調査が一層適切に実施されるよう検討を進めてまいりたいと考えております。


030 大口善徳

○大口委員
 また、附帯決議の第二項に、子の養育をする父母及び子に対する社会的なサポートが必要かつ重要であり、また、ドメスティック・バイオレンス及び児童虐待を防ぎ子の安全及び安心を確保するとともに、父母の別居や離婚に伴って子が不利益を受けることがないように、法的支援を含め、行政や福祉等の各分野における各種支援について充実した取組が行われる必要があるとしております。
 このように、父母の離婚後の子の養育に関する支援策においては、法務省やこども家庭庁だけではなく、多くの府省庁にまたがる課題が少なくありません。そのため、本改正案が成立した際に、我が党が提言していますように、省庁横断的な連携協力体制を構築すべきではないかと考えますが、法務大臣にお伺いします。


031 小泉龍司

○小泉国務大臣
 本改正案が成立しました際には、その円滑な施行に必要な環境整備を確実かつ速やかに行うべく、御提言をいただきました点も踏まえ、関係府省庁等と連携協力体制の構築に向けて具体的な検討を進めてまいりたいと思います。


032 大口善徳

○大口委員

 省庁横断的な連携また協力体制を構築するということは本当に極めて大事なことでございまして、我が党も、この法案を法務部会でもいろいろ議論させていただきましたが、ここは極めて大事だということでございますので、大臣、是非ともよろしくお願いしたいと思います。
 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。


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