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馳浩 衆議院議員(現・石川県知事)@共同親権 平成21年11月26日


第173回国会 衆議院 青少年問題に関する特別委員会

第2号 平成21年11月26日

088 馳浩

○馳委員
 次に、親権の問題について入りたいと思います。
 昨年の改正のときに附則を2つ設けまして、今の民法によりますと、親権については全部喪失するかそのまま生きるかということで、虐待している親の権利ばかりが強くて、なかなか子どもの権利利益を守ってあげることができない現状にあるんですね。
 法務省から来ていただいておりますので、中村政務官、附則の2条で、政府に対して、親権制度の見直しの検討をすべき、こういうふうに規定をいたしましたが、現状、取り組み状況をまずお伝えいただきたいと思います。

089 中村哲治

○中村大臣政務官
 お答えいたします。
 現在の取り組みということでございますので、その範囲でお答えをさせていただきます。
 今、馳委員がおっしゃったように、馳委員の御努力もあり、附則の2条で、政府は、同法律施行後3年以内に、児童虐待の防止等を図り、児童の権利利益を擁護する観点から、親権に係る制度の見直しについて検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるという規定を入れていただきました。
 そういうことでありますので、法務省としては、この改正附則の趣旨を踏まえまして、関係省庁等と連携をいたしまして、この親権に係る制度の見直しについて所要の検討を行っております。
 具体的には、学者、家庭裁判所判事、弁護士、児童相談所関係者及び関係省庁の担当者で構成される児童虐待防止のための親権制度研究会を六月から開催させていただいております。

090 馳浩

○馳委員
 ちょっと説明しますが、児童福祉法28条の入所措置等には、親権の一部制限、一時停止の効果はあります。児童虐待防止法の面会、通信制限なども、個別的な一部制限、一時停止規定でもあります。しかし、一般法の民法に親権の一部制限、一時停止の規定がありませんし、そもそも我が国の民法の運用解釈は、親権の権利面ばかりが強調されております。これでは、児童の権利利益の擁護を第一に考える家族法としての価値体系に反するものであると私は考えています。
 そこで、民法の親権を再定義して、イギリスのように、親権の義務的側面である親の養育責任を明確に規定すべきではないかと思います。その上で、親の養育責任を果たしていない場合に、家裁の審判などを通じて親権の一部制限、一時停止をしていく制度にすべきではないかと考えています。
 民法に先んじる形でありますが、我々児童虐待防止法の改正チームとして、改正法の第4条6項で親責任の規定を新設しております。
 読ませていただきます。「児童の親権を行う者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を有するものであって、親権を行うに当たっては、できる限り児童の利益を尊重するよう努めなければならない。」と、民法に先んじて、児童虐待防止法において、親には責任があるんですよということを明確にさせていただきました。
 ちなみに、親権親権と言いますが、身上監護権と財産管理権の2つの概念があって、身上監護権のうちの監護教育権、居所指定権、懲戒権、職業許可権、この四つが親権のカテゴリーとして法律上認められているわけなんですね。
 私は、今、親責任の問題も含めて詳しく説明をさせていただきました。
 政務官、これは法律のことですから、実は政治が余り出しゃばっちゃいけない問題でもあるんですよ。ただし、先ほど来私が指摘してきたように、いまだにこういう悲惨な児童虐待の事案が多くある中で、親権について、民法の改正をにらみながら議論をもっと深めなければいけないんじゃないかなと。そういう観点から政務官としての所見を伺いたいと思います。

091 中村哲治

○中村大臣政務官
 きのうの法務委員会での御質問にもありましたように、議員としても、なかなか家庭の問題に国家としてどこまで踏み込んでいっていいのかという問題はあるけれども、現状の状況を見たときに、やはり最低限国家が関与しなくてはならないという問題意識、おっしゃっておりましたけれども、その問題意識に関しましては、私も思いを共有するところでございます。
 民法820条は、「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と規定をしておりまして、民法自体は義務性も規定をしているということは、法文上明らかでございます。それによって児童虐待のような親権の濫用というのは許されないということは、この民法820条の規定でも明らかであるというふうに私たちは考えております。しかし、今、馳議員がおっしゃったように、児童虐待防止法6条6項のところで詳細にこの親権の再定義のような規定を設けていただいておることも認識をしております。
 そこで、このようなことも踏まえて、今、検討会で検討をさせていただいているということでございます。これは現在、9回の予定で7回目まで終わっておりまして、1月にこの検討の結果を公表する予定でございます。その結果を踏まえまして、しかし、これをどうするかということはまた法務の政務3役会議で話し合いますので、そういった馳議員の思いも、私、しっかりと受けとめておる、自覚をしておりますから、そういう上で、民法等法務省所管の法律を改正する必要があると考えた場合には、法制審議会に諮問の上、その答申を得て所要の法案を提出したいと考えております。

092 馳浩

○馳委員
 児童虐待の悲惨な状況を考えると、子どもは親の持ち物じゃないんですよという考えに立って議論をして進めていかなきゃいけないなと思うんですね。
 懲戒権、しつけだといって何でもやってもいいというものではないんですよ。これは皆さんも御理解していただけると思います。親として、子どもを保護、養護、育成する、また教育をする責任があるんですよ、その責任をあなたは果たしていないんじゃないんですかという概念が現在の親権には、親権といって親の権利ばかり強調されて、本来果たすべき責任の部分が、その側面がちょっと薄い、いや、欠けていると強調しますけれども、現状ではそう言わざるを得ない。
 政務官、実務的なことなので、どこまでお答えになれるかわかりませんが、親権を喪失させるまでに審判においてどれだけの時間とか手続がかかるんでしょうか。平均して、親権を喪失させるまでに何カ月、何年ぐらいかかるものなんですか。
 こういった問題、福島大臣が多分お詳しいかもしれません。親権を喪失させるというのは大変なことでしょう。どうですか、ちょっと事務的な話ですけれども。

093 福島みずほ

○福島国務大臣
 突然の質問なのでちょっと正確性を欠くんですが、私の記憶では、やはり親権を喪失させるというのは、親の側からの抵抗も非常に大きかったり、親のプライドや、その後の子どもとの関係もありますので、件数が非常に少ない。ですから、親権の喪失よりも、さっき馳委員おっしゃったような、一時停止だとか、あるいは、親権はそのままにしておいて、里親やいろいろな制度をダブルで使っていくとか、そういうことも必要だと思います。
 しかし、余りにひどい児童虐待の場合は、親権喪失はきちっと民法の中に規定があるわけですから、件数は少ないんですけれども、それは試みられてもいいというふうには私は考えております。
 何件か今ちょっと申し上げられなくて、済みません。

094 中村哲治

○中村大臣政務官
 非常に申しわけないんですけれども、これは家裁で判断していることなので、裁判所を呼んで聞いていただければと思います。よろしくお願いします。

095 馳浩

○馳委員
 いやいや、それでいいんですよ、実は。
 つまり、家裁、裁判に係るので、親権を喪失するにはお互いの言い分を裁判所で判定しなきゃいけないので、物すごい時間と膨大な労力がかかるというのは、これは皆さんおわかりいただけたと思います。
 したがって、私がなぜこのことを言うかというと、実は、児童虐待防止法を改正するに当たっての議論の中で出てきたのは、医療ネグレクトの問題なんですよ。親の宗教的な考え方とか、あるいは親としてのいろいろな思い込みもあるんでしょう。お医者さんが必要な手術あるいは輸血、診療を行おうと思っても、なかなかそれを認めてもらえないということで、ではどうしたらよいのだろうかという、医療ネグレクトのこういった観点からも、親権についての一部のあるいは一時的な、はっきり言えば監護教育権、こういったところですかね、やはり制限をすることによって子どもを救い上げなければいけないんじゃないんだろうかという議論があったんですよ。
 実際に私たちも法改正を担当して、実質上、児童養護施設に入ったお子さんの面会の制限、通信の制限、つきまといや徘回をして子どもをおどかしたり不安な思いにさせちゃいけませんよというふうな規定を盛り込みましたし、そういう対応を今現場でもとっていると思いますが、そうなると、児童相談所の所長や職員さんに過大な負担をまたかけてしまうんですね。
 ひどい親は、どんどん押しかけてきて、何で会わせないんだ、おれの子どもだろう、おまえに何の権利があるんだと、こういうことが全国で起きているんですよ。そうしたときに、児童相談所の所長さんが、いや、一応法律にこうありますから面会は制限します、通信の制限はします、つきまといしないでください、徘回もしないでください、子どもが児童養護施設から学校に通ってまた戻ってくる間に姿を見せないでくださいと言うことは、知事の判断で、児童相談所の所長の権限ですることは一応できるようにはしたんですよ。
 しかしながら、この医療ネグレクトの問題などを考えると、余りにも現場の職員さん方に負担をかけ過ぎるんですよ。したがって、親権というものについて議論をより深めていかなければいけないんじゃないんですかという提言を、これは実は平成16年の改正のときにも我々しましたけれども、法務省はてこでも動かなかった。
 私は歴史を話しているのであって、この実情は高井政務官もよく御存じだと思います。
 したがって、平成20年の法改正のときにも随分と法務省とぎりぎり詰めた、最高裁判所と詰めたんだけれども、最初に申し上げた立入調査の実効性を高めるための臨検制度、これはつくることがようやくできたんだけれども、親権の制限についてはなかなかハードルを越えることが私たちもできなくて、では、これはまた持ち越して3年後の見直し条項にしましょうねと言って今現在。したがって、平成23年にはこの問題について一定の方向性を出しておかなければならない、こういう経緯があるんですよ。
 親権の問題が出ましたので、大臣、この委員会が始まる前に立ち話で申しわけありませんでしたが、ハーグ条約の問題であります。共同親権の問題であります。
 私が先ほど申し上げたように、我が国も、子どもの権利利益を最優先に考えるということを考えれば、離婚した後も共同親権を持つということについて、やはり一定の議論をした上での方向性を出すべきではないのかな。先進国の中においても、我が国の民法の親権の制度というのはちょっと議論が煮詰まっていない。
 また、私はあえて言いますよ。法務省は、実態調査もしないで、共同親権について必要ない、こういうふうな議論があると、私はそういう判断を持っているんですよ。これは、その根拠を申し上げれば、民主党の藤末議員が政府に対する質問主意書を出した中での法務省の答弁でも明確でありました。
 したがって、ここは一応議論の場でありますので、共同親権の問題、ハーグ条約を批准すべきかどうかの問題、また、離婚をした後の面接交渉権の問題等について、やはり、青少年の問題を所管する大臣という立場からも、別に越権行為という意味じゃなくて、大臣という立場からも、どういう議論の方向性をすることが望ましいのかということについての大臣の見解をお伺いしたいと思います。

096 福島みずほ

○福島国務大臣
 御質問ありがとうございます。
 日本は離婚後、単独親権、どちらかにしないと未成年の場合だめですから、実際、離婚事件を担当しますと、どちらが親権をとるか非常にバトルが起きたり、あるいは面接交渉もなかなかうまくいかない。子どもをとる、とられるみたいな関係になってしまいがちなことは、実際あるところです。
 スウェーデンを初め諸外国では、共同親権で成っていたり、面接交渉を、どこの国も悩んでいますが、結構ルール化したりというところもありますので、そういう外国の法律を参考にして日本でも検討をしたらどうかというふうに思っております。
 夫と妻であることはやめたけれども、子どもにとってパパでありママでありということは離婚後も変わらないわけですから、できればパパとママ、父親と母親が離婚後も子どもに関しては責任を持つという関係がもっともっと一般化するようにと思っております。
 ハーグ条約に関して御質問がありました。
 御存じ、これは、アメリカ国内においても国際的にも非常に議論になっているところです。それで、これは法務大臣と外務大臣の間で、とりわけハーグ条約の批准については協議をするということの確認がされておりますので、政府内において積極的な協議がなされるようにと思っております。

097 馳浩

○馳委員
 民法、そして親権について規定をされた時代はいつですか。この法律ができたのはいつですか。つまり、その時代のいわゆる夫婦あるいは家族に対する社会的背景と現代では全く違ってきているのではないでしょうか。
 政務官、民法、そして親権の規定ができたのはいつですか。

098 中村哲治

○中村大臣政務官
 突然の質問でしたので、何年何月という答えはなかなか難しいと思いますけれども、現行憲法ができまして親族法、身分法が改正されておりますので、基本的に、そのときに民法の大改正がありましたので、そのころだと思っております。
 ただ、820条、先ほど申し上げましたように、親に対しては、権利だけじゃなくてもちろん義務もあるということはきちっと明定をされておりまして、そこに関しては、基本的な考え方は定められている。
 ただ、今おっしゃったように、親権の一時停止の問題等に関しては、それは新しい問題として出てきているということですので、だからこそ、馳議員の御努力もあり、23年までにきちっと検討しなさいということもありまして、私たちは今研究会をつくって検討させていただいている。その結果は1月に出ますので、その結果をもとに、私たちも、法務省の政務3役もきちっと議論をさせていただいて、法制審にかけるかどうかの議論をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

099 馳浩

○馳委員
 今行われている議論は、法制審議会にかけるか、かけないかという、まだこの段階なんですよ。実は、児童虐待防止法の附則に親権は見直すという規定があって、これを法制審議会にかけるかどうかという、まだその段階なんですよ。したがって、政務官には、ぜひ法制審議会にかけて、この議論を国民的議論に僕はしていただきたい。
 我々立法チームは、いろいろな事案を分析しながら、また厚生労働省にも報告をいただきながら、児童養護施設を視察したりしながら、これはやはり国の形を動かしていかなければならないなということで取り組んできた。その一つの我々の結論として、親権についての議論を深め、変えていかなければだめだよな、現代の置かれている家族制度の中で見直しをしなければいけないなという、その思いのことを理解していただきたいと思います。
 せっかくですから、最後に、高井さん、あなたも一生懸命、何十回も私たちとひざを突き合わせてこの議員立法に取り組んでいただいて、大きな御指導をいただきました。きょうの議論を聞いていて、また文部科学省の政務官として、あなたの見解を伺って、私の質問を終わります。

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