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サーチャーが持つべき7つの特質②~忍耐力~_コラム038

はじめに

このコラムは事業承継先のサーチ活動を続ける筆者が、日々感じたことを徒然に記録するものです。サーチファンドについて体系的に知りたい方はこちらをご覧下さい。

サーチ活動のための7つの条件?

スタンフォードGSBによる「サーチファンド入門(A Primer On Search Funds)」に、「How Do I Know If  A Search Fund Is Right For Me?(どうすればサーチファンドが自分に向いていると分かるか?)」という一節で、求められる特性として7つが挙げられています。

2つ目の今回は②Perseverance(忍耐力)です。何となく、これだけで内容はわかるような気もしますが詳しく見て行きましょう。

①Attention to detail(細部へのこだわり)
②Perseverance(忍耐力)
③Ability to build relationships and networks(人間関係構築力/ネットワーキング力)
④Belief in one’s leadership ability(己のリーダーシップ力への自信)
⑤Willingness to seek, and heed, advice(アドバイスを求め、耳を傾ける意欲)
⑥Flexibility(柔軟性)
⑦Adaptable and modest lifestyle(融通が利く質素なライフスタイル)

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サーチファンドは1000に3つのゲーム?

解説をみてみましょう。ここに記載されているのは伝統的サーチファンド(traditional search fund)を想定した内容です。

一般的に、サーチ活動は長く骨の折れる仕事であり拒絶されることが多いものだ。成功に至るには、1,000社にコンタクトを取り、その内の50社を訪問し、その内の10社にLOI(買収意向表明書)を差し出し、買収完了までには恐らくその内の2~3社にデューデリジェンスを行うことになる、まるで「数字のゲーム」のようだ。

昔からいわれる「千三つ」という言葉は、大ぼら吹きを指す意味(千回に三回くらいしか本当のことを言わない)から転じて滅多にない・確率が低いことをあらわす表現ですが、ここで出てきた数字(=1,000社にコンタクトを取って2~3社DDしてようやく買収完了)とまったく同じで、つまり非常にCVRの低いということが分かります。

それに加え、伝統的サーチファンドは初期の活動フィーも自分で資金調達しなくてはならず、サーチ活動期限は最大2年。

サーチ活動に忍耐力が必要とされるのは明白という感じもします。

忍耐の先に得られるものがある?

米国の約半数のサーチャーが2人組のペアを組んで行っているのも、こうした孤独な作業をお互いに助け合ったり、長所・短所を補完し合うことで継続性を担保出来るからだと思います。

かくいう私もペアを組んではいるわけではありませんが、㈱サーチファンド・ジャパンと業務委託契約を結び、同社から手厚いサポートを受けており、ペアではありませんが孤独な活動ではまったくありません。

このように書いてくると、サーチ活動自体は苦役以外のなにものでもないように思えてきますが、必ずしもそれだけではないという言及もあります。「サーチファンド入門」をもう少しみてみましょう。

サーチャーはどんなに拒絶されようと、魅力的な業界セグメントを見つけ出し、候補企業を追い求めなくてはならない。一方で、サーチ活動を通して、新しい産業との出会いがあったり、企業オーナーや事情通の投資家たちと懇意になれたり、詳細な財務分析を行ったり、ビジネスインサイトを得たりなど、それ自体から得られるものも少なくない。この活動の果てには、多くのサーチャーは自分の力で深く理解することを通して、その成長と発展に自信を持てる企業と出会うことができ、やがては非常に満足できる状態に辿り着くこととなる。

苦しい作業だけれどそれを通して得られるものもあるよということでしょう。ここで挙げられているものをもう一度列挙してみます。

・新しい産業との出会える
・企業オーナーや事情通の投資家たちと懇意になれる
・詳細な財務分析を行ったりできる
・ビジネスインサイトを得たりできる

なるほど、それなりに得難い経験ですが、しかしこれらは必ずしもサーチファンドでないと得られないというものではありません。

M&A仲介会社に勤務すれば多くの企業オーナーとお付き合いすることになりますし、証券会社のアナリストには事情通の投資家たちと広いネットワークが必要になります。また、コンサルティングファームに入社すれば1年目から詳細な財務分析を行ったり、ビジネスインサイトを見つけたりする仕事にアサインされるでしょう。

つまりこれら副次的な収穫は、なにもサーチファンドに挑戦せずとも経験できることばかりです。結局のところサーチファンド、サーチャーは最終的に事業承継まで辿り着かないと無意味とはまでは言わないけれど(コンサル的な経験も出来るので)、成約しなければやっぱりダメなのでしょう。

ということで、サーチ活動を通して良い企業さんと出会えるまでとにかく地道に活動していくしかないという当たり前の結論でした。

残り5つ特性については次回以降に回したいと思います。

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#サーチファンド #事業承継

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