竹倉史人に関する雑誌記事索引紹介

縄文時代の遺跡から土器とともに「土偶」が発掘されることはよく知られていますが、縄文人がそれで何を表現していたかは今まで研究者の間でずいぶん議論されてきました。その疑問をほぼ解明したかと思われる研究書が2021年4月に出版されました。それが竹倉史人さんの著書『土偶を読む 130年間解かれなかった縄文神話の謎』(晶文社)です。今回は竹倉史人さんに関連する索引を紹介します。
※掲載内容は大宅壮一文庫HP内の雑誌記事索引紹介と同一記事です。
※今回紹介した索引の雑誌記事のコピーをご希望の場合は、遠隔地の方は資料配送サービスで取り寄せることが出来ます。 どうぞご利用下さい。

Web OYA-bunkoで検索できる索引の中で竹倉さんの『土偶を読む』を最初に大きく紹介したのは小説家・中村彰彦さんの執筆する雑誌『WiLL』の連載「歴史の足音」です。
この中村さんの連載は『WiLL』という政治オピニオン誌で掲載される歴史関連の記事ですので、あまり知られていないかもしれません。ですが毎回歴史上の人物に焦点をあて、その人物の行動や言動が後に意外な影響を生んだ、といったエピソードがいくつも紹介されているため、歴史と「人の思い」が密接に関わっていることを感じられる大変おもしろい連載です。
その中村さんが絶賛してやまないのが『土偶を読む』です。

No1
歴史の足音 55回 縄文の謎を解く卓見『土偶を読む』の衝撃 ※竹倉史人『土偶を読む 130年間解かれなかった縄文神話の謎』晶文社、土偶は縄文人が食べていた植物を象ったフィギュアだ
執筆者 中村彰彦
雑誌名 WiLL(ワック)
発行日 2021年07月
ページ 316-318

2021年7月号の連載55回目で「縄文の謎を解く卓見『土偶を読む』の衝撃」と題して紹介されています。それまで土偶は「妊娠した女性説」「目に見えない精霊説」「宇宙人説」などの定説がありました。ですが竹倉さんがたどり着いた仮説は「土偶は当時の縄文人が食べていた植物をかたどったフィギュアである」というものです。「遮光器土偶」はサトイモを、「ハート型土偶」はオニグルミを模した精霊像ではないかというのです。
『土偶を読む』では「中空土偶」「椎塚土偶」「みみずく土偶」など10種類の土偶が取り上げられていますが、特に「ハート型土偶」とオニグルミの断面図はよく似ていてかなり説得力があります。
その後、中村さんと竹倉さんは同じく『WiLL』2021年8月号で対談もしています。
No2
対談/書評
目からウロコ 『土偶を読む』の破壊力 竹倉説を教科書に記載するよう、考古学界は働きかけるべき ※竹倉史人『土偶を読む』晶文社、土偶は縄文人の主要な食用植物たちがモチーフだ
執筆者 中村彰彦/竹倉史人
雑誌名 WiLL(ワック)
発行日 2021年08月
ページ176-187

記事で中村さんは「『土偶を読む』を読んだとき、体が震えるほどの感動を覚えました。よくできたミステリ以上の推理と論証の連続で目から鱗が落ちる思いを何度も味わうことができました」と竹倉さんに伝えています。
そんな竹倉さんという人はどんな人なのだろうと興味がわきますが、『プレジデントファミリー』2022年1月号に竹倉さんの自宅の部屋や略歴が掲載されています。
No3
インタビュー
結論!子供が集中する部屋 研究者のキョーレツな自宅 人類学者 竹倉史人先生 土偶博士の感覚を研ぎ澄ますカオスな空間 ※著書『土偶を読む』でサントリー学芸賞受賞
執筆者 竹倉史人
雑誌名 プレジデントファミリー
発行日 2022年01月
ページ 44-45

記事の写真ではパソコンの横や床に10体ほどの土偶や埴輪のレプリカがあり、その他に仏像やしめ縄などが愛猫とともに写っています。竹倉さんは武蔵野美術大学中退後、東京大学文学部宗教学・宗教史学科を卒業。以後は大学講師や執筆・講演、時には家庭教師などで生計を立てながら世界各地の神話や儀礼の研究を続けてきた独立系の研究者です。美大で培った造形的思考が研究に発揮されているのかもしれないですね。
『土偶を読む』では「ゆるキャラ」という言葉が何か所か使われていますが、「ゆるキャラ」という言葉の生みの親であるみうらじゅんさんとも『文藝春秋』2022年3月号で対談しています。
No4
対談/書評
土偶はゆるキャラ!? 縄文時代の「ヤベえ発見」を縦横無尽に語り合う ※土偶の正体を明らかにした話題の本『土偶を読む』の著者とみうらじゅん賞を贈ったみうらじゅん氏による対談
執筆者 みうらじゅん/竹倉史人
雑誌名 文藝春秋
発行日 2022年03月
ページ 370-377

記事では『土偶を読む』が第24回みうらじゅん賞を受賞したことが掲載され、みうらさんは冗談まじりに「「みうらじゅん賞」で権威もだいぶ薄まったと思いますが(笑)」と話しています。ですが「ゆるキャラ」というのは各地の名産がキャラとなっているケースが多く、例えば「梅」で有名な埼玉県越生町には「うめりん」がいます。土偶が植物をかたどったフィギュアであるなら「ゆるキャラ」のコンセプトとかなり似ているのかもしれません。
みうらさんとの対談はに「縄文時代の「ヤベえ発見」」という言葉が使われていますが、確かにこれはなかなか否定するのが困難で、これまでの教科書を書き換える必要がある研究成果です。竹倉さんもまた歴史上の人物になってしまいますね。
Copyright (C) OYA SOICHI LIBRARY 2022

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?