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中南米の民藝と癒し

猫や犬に癒される人はたくさんいると思います。それでついつい、YouTubeなどの動物動画を見てしまうという人もたくさんいるかと思います。

どうして動物に癒されてしまうのでしょうか。

仕草や行動など人それぞれに理由はあると思いますが、私は動物の顔、特に眼差しにコロリとやられてしまいます。可愛すぎて、あの目に「愛情ホルモン」がほとばしります。

実は、中南米の民藝、特に動物を扱った民藝にこれと同じ癒しを感じることがあるので、今回はそれについて書いてみようと思います。

民藝と癒しについて考えるきっかけになったのが、南米の先住民、グアラニー族の木彫り動物「ビッショ・グアラニー(グアラニーの動物)」シリーズ。

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グアラニー族は、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア、ブラジルに居住する南米の先住民。ブラジルにはムバヤ、カイオワ、ニャンデバというグループがいて、民藝界では彼らが作る丈夫で色使いが鮮やかな編みカゴには定評があります。

私が一目惚れしたビッショ・グアラニーは、グアラニー・ムバヤ族によるものです。ムバヤの男たちの手仕事で、子供たちに自分たちの伝統・歴史・仕事を教えるのに使用するそうです。着色はしません。熱した鉄で、動物たちの特徴を描きます。

この木彫りを見ると、そのいで立ちと表情にグッときます。そして、ほっこりした気持ちになります。これは一体どういうわけなのでしょうか。

癒しの力のせいだと私は思うのです。

そして、その力の源は作り手側にありそうです。

物の見え方とか印象といのは、同じものでも各個人の心のフィルターを通すので、決して同じではありません。例えば、動物園の動物を見て、なんだか悲しそうに見えるのは、自由を奪われて、狭い檻に入れられている動物がかわいそうだと思うことが、作用しているはずです。でも、動物園に訪れる人みんながそんな風に見えるのか、というとそういうわけではないでしょう。人によって、あるいはその日の心理状態によって、さまざまに感じたり、印象を受けたりします。

話をグアラニー族の木彫りに戻すと、先住民が作る動物たちから、彼らと動物たちの関係が読み取れることができるように思えます。あれほどの癒し効果がある動物が作れるというのは、私たちが自分のペットを見る時のあの同じ優しい眼差しを持っているからだと思うのです。彼らにとって森の動物は、害獣ではなく、愛しいものであることが分かります。

動物は敵ではなく、仲間だと見ている先住民の眼差しが、結果、木彫りに癒し効果をもたらすという素敵な例だと思いました。

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そんなことを考え出すと、癒し効果が中南米民藝の共通点のような気がしてきました。例えば、ブラジルのカルアルの土人形。こちらは動物ではありませんが、目を大きく見開いたお惚け顔が特徴の人形たちは、見る人を虜にする何か、があります。カルアル土人形の創始者、ヴィタリーノは人一倍に人間への愛があったのかもしれません。それが作品に反映し、たくさんの人を魅了する原因になったのかもしれません。

ブラジル以外にも目を向けてみると、例えばメキシコはオアハカの木彫りの動物なども見ていて優しい気持ちにさせてくれます。

以前は中南米の民藝の魅力はその素朴さだと思っていましたが、「癒し力」が見る人を惹きつけるのではないかと思い始めています。

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