【薬剤師監修】現代女性のための正しいピルの教科書
こんにちは!皆さんピルについて、どのくらいご存じですか?避妊や生理痛改善など、さまざまな効果が得られるため日本でも服用する人が増えています。
避妊のイメージが強いピルですが、ピルの中には生理の日を移動するときに使うものや、避妊に失敗したときに妊娠を防ぐ働きをしてくれるものもあり、女性が生きやすい社会を実現するのに必須の薬ともいえます。
このnoteではピルについて知りたい方や、服用するか迷っている方のために、ピルの歴史から始め、世界各国での使用状況、ピルを飲むことで得られる効果から副作用までご説明します。
ピルとは…
ピルは経口避妊薬とも呼ばれ、女性ホルモン(卵胞ホルモン・黄体ホルモン)が含まれたホルモン剤のことです。避妊のために服用するイメージが強いですが、生理痛やPMSの改善、婦人科系の病気の予防にもなることがわかっており、服用する方が増えています。
ピルには60年の歴史がある
ピルの開発は、20世紀前半に遡ります。最初の研究は1920年代に始まりましたが、1950年代に入り、ピルの臨床試験が本格化しました。それから1957年には月経不順の治療薬としてアメリカ食品医薬品局(FDA)に承認され、1960年には避妊薬としても正式に認可されました。
認可されてからの60年間で、ピルは避妊法としての役割に加え、女性の健康管理においても幅広い活用が進められてきました。 また、ピルの登場は、女性の社会的地位や生き方にも大きな影響を与えました。女性が自分の出産計画をコントロールできるようになったことで、教育や就労の機会が広がり、社会的な平等に向けた重要な一歩となりました。
現在では、ピルは多くの国で利用可能で、避妊だけでなく、生理痛やホルモンバランスの調整など、さまざまな健康上の目的にも使われています。
日本はピル後進国?
日本のピルの使用状況は、約3%とされており、他の先進国と比較すると非常に低い水準にあります。
〈世界各国のピルの使用率〉
アメリカ…約16%
フランス…約40%
イギリス…約25%
ドイツ…約30%
オーストラリア…約15.2%
カナダ…約17%
日本で普及が進まない理由として、避妊に関する話題がデリケートとされ、特に女性の避妊に対する理解や情報の普及が進んでいない部分があげられます。また、ピルに対する誤解(健康リスクが高い、太るなど)が根強く残っていることも一因です。
ピルはどうやって効くか?
女性の体の中で、月経周期は以下のプロセスで進行します。
ピルを服用していると、中に含まれるエストロゲンとプロゲステロンが、脳の視床下部と下垂体に働きかけ、排卵を引き起こす卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制します。このことにより、卵胞が成熟せず、排卵が抑制されるため、避妊効果が得られます。 また、エストロゲンやプロゲステロンの分泌も抑制され、子宮内膜が育たず薄いままとなるため、月経血の量が減り、炎症物質も減るため、生理痛が軽くなります。 さらに、排卵後に作られるプロゲステロンの分泌も抑えることで、月経前症候群(PMS)に対しても有効と考えられています。
ピルを服用するとどんなメリットがある?
避妊
妊娠は女性の体内で排卵した卵子が、精子と出会い受精することで始まります。ピルは排卵を抑制することから、避妊の手段として有効です。
生理痛・月経前症候群(PMS)の緩和
ピルはエストロゲンやプロゲステロンの分泌を抑制することで、子宮内膜が厚くなるのを防ぎ、月経血の量を減らすため、生理痛を軽くします。 また、排卵後に作られるプロゲステロンの分泌も抑制するため、月経前症候群(PMS)に対しても有効とされています。
子宮に関わる病気のリスクを下げる
ピルを服用することにより、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンの分泌が抑制され、子宮内膜の成長が抑制されます。 子宮内膜の過剰な成長や異常な増殖は、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気のリスクを高めるため、ピルを服用すると、これらのリスクが低下すると考えられています。 また、頻繁な排卵で卵巣の機能が過剰に刺激されると、正常な機能を保つことが難しくなり、卵巣がんや卵巣嚢腫などのリスクが高まる可能性があります。 ピルは排卵を抑制するため、これらのリスクも低減する作用があると考えられています。
生理周期を整える
ピルは女性ホルモン(卵胞ホルモン・黄体ホルモン)が含まれたホルモン剤のため、服用すると、ホルモンの変動が抑えられます。 その結果ホルモンバランスが安定し、予測可能な周期で出血が起こるようになります。ピルの服用を続けることで、生理が28日周期に近いリズムで定期的に来るようになります。
生理日の移動も気軽に行うことができる
休薬する期間(偽薬を服用する期間)をコントロールすることで、生理の日を移動させることができます。生理を移動させたいときは、かかりつけの医師に相談してみましょう。
ピルの種類
低用量・超低用量
【飲み忘れたとき】
翌日までに気付い場合 直ちに飲み忘れた錠剤を服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。
2日以上連続して飲み忘れがあった場合 服用を中止し、次の月経を待ち投与を再開してください。 なお、飲み忘れにより妊娠する可能性が高くなるので、その周期は他の避妊法を使用してください。
【飲み忘れたとき】
翌日までに気付いた場合 直ちに飲み忘れた錠剤を服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。
2日以上連続して飲み忘れがあった場合 服用を中止させ、次の月経を待ち投与を再開してください。 なお、飲み忘れにより妊娠する可能性が高くなるので、その周期は他の避妊法を使用してください。
【飲み忘れたとき】
翌日までに気づいた場合 直ちに飲み忘れた錠剤を服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。
2日以上連続して飲み忘れがあった場合 服用を中止させ、次の月経を待ち投与を再開してください。 なお、飲み忘れにより妊娠する可能性が高くなるので、その周期は他の避妊法を使用してください。
【飲み忘れたとき】
翌日までに気付いた場合 直ちに飲み忘れた錠剤を服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。
2日以上連続して飲み忘れがあった場合 服用を中止させ、次の月経を待ち投与を再開してください。 なお、飲み忘れにより妊娠する可能性が高くなるので、その周期は他の避妊法を使用してください。
【飲み忘れたとき】
翌日までに気づいた場合 直ちにのみ忘れた錠剤を服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。
2日以上連続してのみ忘れがあった場合 服用を中止させ、次の月経を待ち投与を再開させること。 なお、のみ忘れにより妊娠する可能性が高くなるので、その周期は他の避妊法を使用してください。
【飲み忘れたとき】
前日の飲み忘れに気付いた場合 直ちに前日の飲み忘れた錠剤を服用し、当日の錠剤も通常の服薬時刻に服用してください。
2日以上服薬を忘れた場合 気付いた時点で前日分の1錠を服用し、当日の錠剤も通常の服薬時刻に服用し、その後は当初の服薬スケジュールとおり服用を継続してください。
【飲み忘れたとき】
前日の飲み忘れに気付いた場合 直ちに前日の飲み忘れた錠剤を服用し、当日の錠剤も通常の服薬時刻に服用してください。
2日以上服薬を忘れた場合 気付いた時点で前日分の1錠を服用し、当日の錠剤も通常の服薬時刻に服用し、その後は当初の服薬スケジュールどおり服用を継続してください。
中用量
アフターピル
ピルにもデメリットはある
血栓症
ピルには血液を固まりやすくする副作用があります。この作用により、ごくまれに血栓症を引き起こすことがあります。 起こる確率は非常に低いのですが、起きた場合に脳梗塞や肺塞栓症など、重篤な疾患を引き起こす可能性があります。 喫煙をする方、血栓症の家族歴がある方、肥満の方、40歳以上の方などは特に注意が必要です。
避妊効果は100%という訳ではない
ピルで避妊できる確率は99.7%とされており、100%に近い確率ではありますが、避妊できない可能性もあります。絶対に妊娠したくない方は、他の方法も併用するようにしましょう。
性感染症は予防できない
ピルは避妊には効果がありますが、性感染症の予防には効果がありません。 ピルを服用していても、性感染症予防の観点からコンドームは使用するようにしましょう。
飲み始めは副作用が起こりやすい
ピルにも副作用があり、特に飲み始めに起こることが多いと言われています。飲み進めることでおさまることも多いのですが、辛い場合は医師に相談しましょう。
ピルの副作用には以下のようなものがあります。
教えて、薬剤師さん!
Qピルで太ったりしないの?
ピルが原因で体脂肪が増加し、太ることはないとされています。 太ると噂されている理由として以下があげられます。
ピルに含まれるプロゲステロンによりむくみが起こり、一時的な体重増加が起こることがあるため
ピルに含まれるプロゲステロンに食欲増進作用があるため
ただ、これらの作用があるとしても、実際に体重が増えたという方はごくわずかで、影響が出る方は少数であることがわかっています。
Q妊娠しづらくなることはないの?
ピルを服用することで、将来妊娠しにくくなることはありません。ピルは、服用をやめれば通常、排卵が再開し、自然な妊娠が可能となります。 長期間ピルを使用していたからといって、将来的に妊娠しにくくなるという科学的な根拠はありません。
Qピルは、女性ならだれでも服用できるの?
血栓症の既往歴がある方、35歳以上で1日15本以上喫煙する方、前兆を伴う片頭痛のある方、妊娠している方などは服用することができません。 服用を始める際は必ず医師に自分の体質に合うかどうかを確認してもらいましょう。
Q更年期障害にも効果があるってほんと?
ピルは、ホルモンのバランスを安定させ、特定の症状を緩和する可能性があります。しかし、ピルは主に避妊や生理不順の治療に使われるもので、更年期のホルモン補充療法(HRT)とは異なります。 更年期障害の治療には、ホルモン補充療法(HRT)が一般的に使用されます。HRTは、体内で不足しているエストロゲンやプロゲステロンを補う治療法で、更年期特有の症状に対してより適切に対応することができます。 ピルを更年期の治療として使用する場合、特定の状況で有効なこともありますが、年齢や健康状態によってリスクがあるため、医師と相談して決めることが重要です。
まとめ・ピルの購入方法
ピルを服用することで、避妊だけでなく、生理痛の緩和、病気のリスク低減など、さまざまなメリットを得ることができます。ただし、血栓症などの注意すべき副作用もあるので、医師によく相談した上で服用するかどうかは決めるようにしましょう。 ピルは通常の婦人科で処方してもらうことも可能ですが、オンライン診療で手に入れることも可能です。婦人科の診察に抵抗がある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。そんな方には特にオンラインでの受診がおすすめです。一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。
出典:
・Centers for Disease Control and Prevention (CDC)、「Contraceptive Use in the United States, 2017」データ European Journal of Contraception and Reproductive Health Care(2015年)
・NHS Digital, 「Contraceptive Services Report, 2018-2019」
Statistisches Bundesamt(2020年)
・Australian Institute of Health and Welfare、「Contraceptive Use Report, 2017」
Statistics Canada, 「Contraceptive Methods Report, 2019」