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質の低いレポート代行業者に驚き

普段つぶやいていることとは全く関係ないが、あまりに衝撃的だったので、急遽書くことにした。

昨今、何かと話題になるレポート代行業者。
私は大学院生で、TA(授業アシスタント)としても働いているので、こうした案件についてはわりと身近である。採点業務をしている中で、明らかにパクリと思われるコメントペーパーに出くわしたこともある。

しかしながら、私個人としては、レポート代行は必ずしも悪いものだとは思っていない。なぜなら、大学は必ずしも勉強する/研究するべきところとは思っていないからだ。たしかに、私の学部時代は、資格取得と学科の勉強で忙しかったが、それも勉強がしたかったからにすぎない。短い期間なのだから、べつにやりたいことをやればよい。
そもそも2、30年前なんか、盗作、サークルの先輩のものを再利用する、などがもっとザラにあっただろうと推測される。いまの学生は総じて真面目だと、どの教員も口をそろえるし。
(ただ、やりすぎると就職活動のエントリーシートを書くときに困りそうだが。)

というわけで、レポート代行というサービスについても、まあうまい商売だよな、としか思っていなかった。ポスドクのいいお小遣い稼ぎにもなっているようだし、ウィンウィンだと思う。


ただ、今回の問題はそれどころの問題ではない。レポート代行の質があまりにもひどいのである。あまりにもひどいので、被害者を増やさないためにも、注意喚起の意味を込めてリンクを貼らせていただく。

私の専門は中世哲学ではないが、この要約どおりのレポートがもし提出されたとしたら、どんなに頑張っても60点/100点しかつけないだろうと思う。落第ギリギリ点。
これ多分、パン教(一般教養)の哲学の授業だよね。哲学の授業で「普遍論争ってなんですか」っていう課題を出しているのに、「普遍論争とは、ある問題に対して異なる意見や見解が存在し、それが解決されにくい論争のことを指す。普遍論争は、哲学、政治、社会、文化、科学などの分野で発生する。」って答えてほしいわけないじゃん。
実在論と唯名論がデカい派閥だよとか、実体について論争したんだよとか、そういうことを答えてほしいに決まっているんだけれど、授業に出ていなかったのか聞いていなかったのか、ググって調べたんですかね。
もちろん、自分で提出する分にはいいと思うけれど、これをあたかもちゃんとしたものですよ、というテイで売っちゃうの、常軌を逸しているとしか思えない。

ただ、問題はこれだけじゃなく。この人がそもそもレポートの書き方を会得していなさそうなところが、一番の問題だと思う。そのへんにいる(=特別優秀ではない)学部生が書く文章にありがちな感じ。少なくともこの人は旧帝大未満の学生じゃないかな。
ラインナップ的に、この学部生は商学部なのでしょう。だから、経営学、経済学のテーマのものが多い。
ただ、おそらく社会科の教員免許取得を目指している。教員免許を取得するには、パン教をたくさん取らなくてはならない。それで心理学や哲学や環境問題?に関するレポートを書いているんでしょうね。

それじゃ、まあ哲学のレポートはいいとして、専門である経営学/経済学のレポートはしっかりしているのかと思いきや。

参考文献の書き方から間違っているのだが、大丈夫だろうか。それに、どう見ても参考文献に使っちゃいけない(信憑性のうすい)ページが、まま入っている。

自分のレポートを販売するほど文章能力に自信があるのだと思うが、要約の書きぶりには結構色々な問題がある。これ、おかしいのは要約だけなのかな。本文もこの感じで進んでいたとしたら、はじめ―なか―おわり の根本的な構造が分かっていない可能性が高い。買ってまで確かめようとはみじんも思わないが。
もし私の目論見が当たっていたとしたら、こんなものよく売ろうと思ったな…という感じである。


というわけで、知識もなければ、レポートの書き方もわからないような人に、レポートを書くよう頼んだりしては、絶対にダメです。カナヅチの人に、プール監視員の仕事を頼むようなものです。

まあ、この方としては、教員免許取得で忙しくてバイトもしたくないから、自分で書いたレポート売れば一石二鳥!と思ったのだろう。
しかし、もし学部1年生がこの人から文章を買ってしまい、よい文章とは↑こういう文章だ、と思い込んでしまったら、どうするのだろう。また、この文章をわざわざ買って、クオリティの低さゆえ単位を落とす可能性がある人のことを、考えないのだろうか。

ノートのビジネスモデルはかなり緩いため、そのせいで責任を持たない商売をする人が多いことを、とても怖く思っている。
質のよいものが高く売れて、質の悪いものが淘汰される社会になりますように。


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