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下水汚泥は金鉱脈?

東京都下水道局は、江東区にあるの東部スラッジプラントで、2007年11月に炭化炉4号、2013年10月に炭化炉5号の運転を開始した。下水汚泥を空気の供給を遮断または制限した状態で加熱すると、水分の蒸発・有機物の分解反応によつて分解生成物の蒸発が起きる。これにより脱酸素・脱水素が進み、固定炭素に富む炭化物が残る(この熱処理技術を炭化と呼ぶ)。下水汚泥から製造された炭化物は低品位炭(1キロあたり3000~4000カロリー以下の下級炭)並みの品質で、無臭の粉体のため石炭等の固形燃料の代替として利用できる。東部スラッジプラントで製造された炭化物は、バイオ燃料(JERAの子会社)を通して福島県いわき市にある常磐共同火力の勿来発電所で使用されている。

兵庫県神戸市は2010年10月12日、大阪ガス、神鋼環境ソリューションと組み、下水汚泥から精製したガス「こうべバイオガス」を都市ガスとして供給し始めた。これまでは、東灘処理場で1日に6000立方メートルを生産(2010年10月時点)。処理場内で2700立方メートルを燃料として利用し、1300立方メートルを市バスなどの燃料として供給。余ったガスは燃焼処分していたが、神鋼環境ソリューションによる精製技術の改善で従来のガスに含まれていた不純物を減らし、都市ガスと同じ品質にして大阪ガスの製造所を通さずに供給する。こうした動きは全国に広がっている。

岐阜市は2010年度より、下水汚泥の焼却灰からリンを回収。副産りん酸肥料として登録し、地元のJAと北部プラントで「岐阜の大地」という製品名で販売している。2003年12月から日本ガイシ(現メタウォーター)とリン回収技術の共同研究を開始。2007年3月に下水道技術開発プロジェクト(SPIRIT21)の第2の課題、下水汚泥資源化・先端技術誘導プロジェクト(LOTUS Project)の技術評価を受け、2009年からりん回収施設の建設に着手し2009年度末に完成した。北部プラントでは、リン酸カルシウム(粒状・粉状)とリンを抽出した後に残る処理灰が作られている。下水汚泥を焼却し減量した灰に抽出槽でアルカリ溶液(苛性ソーダ)を加えリンを抽出。固液分離した液体状のリンをリン酸塩析出反応槽で消石灰(水酸化カルシウム)と反応させリン酸塩を析出する。リン酸塩に含まれる重金属類を洗浄してベルト濃縮機で脱水し、乾燥を経てリン酸カルシウムを生産する。リンを抽出し終わった残渣も、同様に洗浄を行って重金属類を低減し乾燥させて処理灰にする。土壌環境基準をクリアしている処理灰は、法面の吹付材といった建設資材の原料として地元の建設業者に販売している。

リン回収で地産地消に貢献

2011年1月26日、長野県の下水処理施設「クリーンレイク諏訪(諏訪湖流域下水道豊田終末処理場)」で下水汚泥の焼却灰を処理した物質約9トンが、約2265万円で落札された。クリーンレイク諏訪の下水汚泥は、温泉や精密機器工場で金メッキの際に出る排水が処理されるため多くの金を含むのではないかといわれている。前年までは年1回の入札だったが、2010年度に関しては金の相場変動に影響を受けないよう2回に分けて実施するこになった。売却される物質は、汚泥焼却灰を溶融処理する際に発生する「溶融飛灰」、煙道に付着した「煙道スラグ」、人工骨材の製造の際に出る「不良スラグ」の3種類。落札した企業は製錬所で地金にして販売する。

北海道大学大学院工学研究院の北島正章准教授、岡部聡教授、同大学院工学院修士課程の安藤宏紀さんは、塩野義製薬と共同で、下水中の新型コロナウイルスRNAの高感度検出技術を開発。この手法「EPISENS-S法」の詳細なプロトコルを公表した。研究成果は、2022年8月8日公開のScience of the Total Environment誌にオンライン掲載された。

※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。

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