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海藻でメタン削減

メタンは、二酸化炭素と比べて25倍の温室効果があるとされ、気候変動対策においても問題視されている。牛や羊などの反芻動物は、食物を消化する際にメタンを生成して大気中に放出する。牛は4つの胃をもつ動物で、最も大きいのは第1胃。成牛の第1胃の容量はおよそ150から200リットルにもなる。第1胃には1グラム当たり250億個という膨大な数の微生物が存在し、植物性繊維を発酵分解する。発酵の際に発生した水素は、メタン細菌と呼ばれる微生物群がメタンに変換。牛1頭がゲップやオナラとして放出するメタンの量は、1日で160から320リットルに上る。

家畜飼料の素材として使う海藻「カギケノリ(アスパラゴプシスの和名)」の商品化を進めているオーストラリアのフューチャーフィード社は、海藻によるメタンの放出を抑えた牛肉の生産に成功。この特許技術は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)、Meat & Livestock Australia(MLA・肉牛と羊の生産者の出資で設立された生産者団体)、ジェームスクック大学と共同で開発された。赤紫色の海藻・カギケノリには、牛の腸で特定の酵素の働きを弱めメタンの生成を抑える性質があり、放出されるメタンの量を80%以上減らせることが分かっている。フューチャーフィードは、カギケノリをメタンの削減に使用する特許に関して、世界各地でライセンスの授与および管理を行っている。また、登録商標とその基準となる規格の作成や、カギケノリを利用して削減できた排出量を確認できるブロックチェーン技術に基づくトレーサビリティ・プラットフォームの開発も進めている。

北海道にある帯広畜産大学の西田武弘研究室では、ユーグレナ(ミドリムシ)を利用した反芻家畜からのメタン抑制の研究が行われている。

※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。

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