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CO2を食べる細菌

脱炭素の流れが強まる中、厄介者とされる二酸化炭素(CO2)を使い、たんぱく質や化学製品を作り出す動きが加速。CO2を食べて増え、たんぱく質などを作り出す「水素細菌」が注目されている。

東京大学発バイオベンチャーのCO2資源化研究所(東京都江東区)が使用するのは、工場や発電所などから排出されたCO2を食べて高速で増殖する独自の水素細菌「UCDI株」。CO2研の湯川英明社長は、米航空宇宙局(NASA)の研究成果の産業化を目指す米キベルディなどの競合他社もあるが、UCDI株の増殖の速度には圧倒的な優位性があると自信を見せる。菌の栄養素となるCO2と水素を微細な泡にして供給し、生育するのに最も適した52℃に温度を保つ。すると、わずか1グラムの水素細菌は、24時間で16トンと驚くべき速度で増殖する。この菌から作ったプロテインは、たんぱく質の含有量が約83%で、競合の菌類に比べると20%以上も高い。牛や豚を飼育するとメタンが発生するほか、多くの飼料が必要になるため、代替たんぱく質の需要は高まっている。CO2研は、食用たんぱく質やミルク製品の市場流通を進めている。

また、遺伝子組み換えした水素細菌は、化学品も生成する。菌は増殖を抑えると、化学物質をため込む。CO2研は、この化学物質を加工することでポリ乳酸を生産する。石油製品の内需縮小で、石油化学コンビナートの設備休止が相次いでいる。CO2資源化研究所は、遊休設備の活用によるプロテインとポリ乳酸の2024年度からの量産を計画。プラントオペレーターの採用により雇用も維持し、ポリエチレン(PE)の生産にも乗り出す。

※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。

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