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嗚呼、僕の消防士人生②

前からずいぶん空いてしまった。
痛恨。



そして、完全に書く順番を間違えたと思う


消防士の合コン事情なんて誰も興味がない



消防学校の話をしようと思う。



消防士に拝命されると6ヶ月間、



消防学校の「初任科」という


檻みたいなところに収容される


時代の過渡期だったこともあって

一時期より根性論が減っていたとはいえ


普通に生きていたら経験しないことは多かった


いくつか言うと。


①朝からキツイ


6時30分に起床し、


6時40分から点呼があり
(キチンと整列して寮長みたいな人に生活態度終わってるぞ!と怒られるので全然ダルい)


その後、体操と



1500mを声出ししながら(もちろん全力)ジョギング


を毎日。
雨とかは関係ない。


②何かしらのミスなどがあれば
「指摘」というものを受ける


「指摘1」と言われたら


腕立て伏せ


もしくは

制服を着ている時は汚れてしまうので、

かがみ跳躍(ジャンピンスクワットみたいなやつ)


を10回


なので


「指摘5」なら50回、「指摘10」なら100回


ちなみに、指摘を受ける場合


教官から

「あんどう!学生、指摘5 腕立て伏せ用意」

と死刑宣告を受ける


あんどう!「ヨシ!」


どれだけこの指摘が理不尽だろうと


この死刑宣告に言い訳の余地などない


教官の言うことが全てだ。


そして腕立てが終わると


「指摘ありがとうございます!」と叫ぶ。


ありがたいものなのだ、指摘とは。


ある同期が
週一回の外出日の門限を守れないという



消防学校史に残るとんでもない失態があった
次の日



屋内訓練場に全員が呼び出されて


教官が満足するまで



腕立てとかがみ跳躍をやり続けたこともあった


終わりがわからないのだ


多分300回ずつくらいやったと思う
(今ならコンプラ違反のお言葉をいただきながら)



これはギリだった。


人間ギリの時は「グェ…」って言うんだと思った


連帯責任という言葉に
全て集約されるのが消防学校だったりする


③制服の汚れやシワや防火衣の不完全な着装に厳しい

もし制服にシワや、
または汚れていたり、


靴が磨かれていない


のはもってのほか。


訓練前には

防火服のベルトが緩いだとか


首元を守る部分が折れ曲がったりするのを見られ、 



ダメなら
×人数分の指摘を受ける



防火服を素早く着る姿をよく見ると思うが、


1分以内と一応目安が決められていて


素早く正確に着なければならない。

これが同期が114人いたら


毎回5人くらい指摘対象がいる


そうなると全員で


50回のかがみ跳躍だったり、


訓練場の端から端までの
全力ダッシュ5本だったりだ。



防火服を着ている時の指摘は


プラス15キロを背負って走るみたいなことだ


ペース配分を考えて走っていればお見通し


もちろん追加だ


甘えは許されない


走ってるとき、訓練前に何してんねんと思う。


そうならないために
毎日制服のアイロンをかけたり、靴を磨いたりするのだ


ちなみにアイロンはかける専用の部屋があり、



横着をして寮室でアイロンを使うと


ブレーカーが落ちるので全てが終わる


ブレーカーが落ちた日には、
本当に全てが終わってしまう


④教官の姿が少しでも見えたら全力で挨拶をする


そのときに



自分が帽子やヘルメットを被っている時は

(屋外では、帽子もしくは訓練時はヘルメット被らなければいけない)



挙手注目の敬礼で「お疲れ様です」
いわゆる皆さんが想像する敬礼だ


被っていない時(屋内)は


15度頭を下げ「お疲れ様です」(手はあげない)


僕は車庫の掃除をしているときに


こんなとこ教官も来ないし、

まあいいだろと思って


帽子を被っていなかったのだが



イレギュラーで教官が現れて



やばい!と思い
慌てて防火服のヘルメットを被ったが、


その下は

黒の半袖に
半ジャージパンツに
ランニングシューズだ


その格好は、意味がわからない



もちろん教官に見られ


「お前なんだその格好は」


「ここは室内だと思い、帽子を被っておりませんでした!」と


絶対にそんなことない嘘をついて


ちゃんと指摘5を受けた


⑤返事は全力で「ヨシ」


はいではなくヨシ


消防学校終盤は「ィシッ!」になりがちだ


⑥3歩以上動く時は駆け足


このルールは実はイカつくて


どこで見られているか分からないので
基本的にみんな走っている


このせいで歩くスピードで
走ってる様に見せるの上手くなった



⑦午後の激烈な訓練に備え


白飯にうどんを汁物として、


おかずは焼きそばなんてことがしょっちゅうあった


これでも痩せるんだから激烈だ


⑧訓練中に苦しい顔をしていたら
「要救助者にその顔をするのか」と吠えられる
(不安にさせるのかというニュアンス)



だからマジでしんどい時



ウオォォーー!!!とか言ったことある



主人公やん


⑨訓練中には何があろうと絶対に笑ってはいけない


緊張感の中のハプニングは


お笑いの基礎である緊張と緩和でしかない


要救助者役の同期が目を閉じて倒れている演技だけで笑けてくるのに


「いたいよ〜」なんて


くさい芝居してきたとき


ムカついてちょっと強めに掴んだりする


まだまだきっとありますが


今振り返ると変だと思うけど


当時はそれが全てだった



ちなみに僕がそんな檻に収容されたのは


4月頭〜9月末までの前期と言われるやつで


灼熱の夏を越えなければならなかった


この暑さが凄まじかった


7月、8月は35℃以上がほぼ毎日で


消防士が火災時に着る防火服は


外からの熱に耐えられる分、熱を逃さない


それを着て運動すれば、蒸し風呂状態になる


サウナで20キロ以上の装備を着けて


動き続けるみたいなことだ


これはととのうわけがない


でもなぜか


それを続けていれば暑熱順化といって
身体が慣れていくのだが


慣れるにつれ、夏になり、気温が上がる


慣れて、リセット



慣れて、リセット


これがしんどい、本当に


13時から17時の午後の訓練だけで


4リットル以上のアクエリがなくなるし


走ってるだけでゲロ吐いたこともある


灼熱のホース延長訓練


とにかく伸ばして放水の構え、


そして撤収をひたすら繰り返す


単純だが何本という
終わりが決められてもおらず、


とにかく暑くてキツい、もう熱い


もちろん全ての行動に全力呼称が付き、



ホース延長!
結合ヨシ!
放水始め!


と叫ぶ


それを何度も繰り返すと
視界が真っ白になってくる、これは限界のサイン



真っ白だ。もう限界。


お、教官がこちらを見ている


そうだ


次、全力でやったらぶっ倒れよう
やりきって倒れるならあっぱれだろう、

そしたらこの環境から逃れられる

次で残りの体力を使い切るんだ
絶対に俺は次でぶっ倒れてやる、決めた



という覚悟で臨むが、


人間はめちゃくちゃ強い


終わった時、仁王立ちだ


倒れない、でも視界は真っ白だ


またもや教官がこちらを見ている


タラタラしていたら指摘の餌食だ


ホース撤収!!!!と吠える


もう命カラガラなのに気は失ってくれない


そうなると喉の渇きが限界だ


どうにかして身体を冷やせばならない


訓練中、教官のタイミングでないと
水分など補給できない。



水はどこだ


水、


水、


あれ、手袋濡れてるやん
 

あ、ホースから出た水を手袋が吸ってるのか


吸お 


となる


たぶん、世界一汚い水を


ジュッと吸うくらい追い込まれる


他にもいろいろ思い出したが、


トイレに行って小便しがてら屁をしようと思ったら


誤ってうんちを漏らしてしまい、


パンツ変えている僕待ちで


全員の昼食が遅れたことは


非常に思い出深い出来事のひとつだ


こういうときも連帯なんだなと、思った


あのときの森班長は


僕がうんちを漏らして


食堂への到着が遅れていることを全体に言わなかったので、


本当に信頼がおけるし、今でも信頼している


ありがとう


こんないろんなことを乗り越えたんだから


だいたいのことは何とかなる


そう思わせる


僕の支柱となっている6ヶ月だ

最強芸人までの道をどうか見届けていただけたらと思います。