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空気がないと死ぬんじゃなくて、酸素がないから死ぬだけの話

当たり前のことほど当たり前じゃなく、失ってからその大切さに気付くというのは何処の世界でもある話でそれを題材にした教訓じみた話は石を投げればいくらでもあたるレベルで転がっている。蛇口をひねれば水が出るなんて普遍さも一つボタンを掛け違えれば当たり前でなくなってしまうことは災害大国日本に於いては各個人がしっかりと認識すべきところだろうが、仕事でもないのに人間そうそう年がら年中防災を意識し続けるのも難しい。ある意味致し方ないことだろうと思う。

 特に自身の経験で防災意識を高められるような話を持ち合わせているわけでもないし、そんなものはもっとリアルに遭遇した人間に聞いた方がいい。幸い自分は95年の阪神淡路大震災も、2011年の東日本大震災においても震源から離れた場所にいたので大した被害はなかった。まぁ2011年に関してはその後の物流や経済の停滞なんかで少なからず影響を受けたぐらいではある。物理的に何かを失ったりその後の生活を一変させるような被害を受けたことはなく、クソみたいな人生の中で唯一幸いだと思える部分だろう。言い換えれば悪運が強いだけだが。
 とかく、悪運だけは強く死にたいと思ってもそうそう死ねない星の下にいることはなんとなしに理解している。どうあがいても無理ゲーな状況でホームランを打つこともしばしばあった。これが神のご加護とかいう奴なら、もう少し手前で発揮したいところであるもののそうは問屋が卸してくれないらしい。当たり前に存在すると思い込んでいる何かへ一石を投じるためにこういうステータス振りになっているんだろうと勝手に理解している部分である。

 当たり前に存在している何かに於いて一番よく言われているのは「空気」で、そもそもそれがなければ生存することすらできないわけだ。それを比喩に、「空気のような存在」なんて言い回しもあるが使われるタイミングやシチュエーションで全く異なる顔を見せる。
 「絶対に必要でなくてはならない」「あってもなくてもどうでもいい」
 この2つだ。いい意味では前者の方なんだろうが、そもそも私はこの言い回しが嫌いだ。はっきり必要なら必要、そうでないならないと言えばいい。気を揉ませる言い回しで疲弊するくらいなら一刀両断された方がましだからだ。忌々しくも、Googleで検索してみたところ40万件以上のページがヒットしてしまった。それだけこの話題に気を揉まれしんどい思いをした人間がいるということなんだろう。
 そもそも、絶対に必要なのは空気中に含まれるたかだか20%程度の酸素だけでそれ以外の残り80%に含まれる窒素や二酸化炭素、アルゴンなどの物質はそこまで必要とされていない。8割無駄と言うか、要らない存在。あってもなくてもどうでもいい。人間が必要とされる瞬間なんて利害の上にしか成り立っていないのだから、ある意味2割ぐらいでちょうどいいのかもしれないがそもそもその2割にすら食い込めない「無駄な人間」と言うのは事実存在すると思う。

 なら自分自身が自分を必要とすればいいなんて言われそうだが、そんな人間が自分のことを本当に必要だと思えるかどうか。どっかのサービスエリアで出されるラーメンのチャーシューより薄っぺらい自己肯定感しか持ち合わせていない人間が、そんなこと思えるわけがない。そうでなければ鉄道への投身自殺は当の昔に消えて事故起因の遅延などありえない話になるから。
 もっと突き詰めれば、2割の人間が必要とされていて残りの8割なんかいなくていいわけだからさっさと消えた方が世界は平和になるんだろうと思ってしまう。無論自分は後者で、可能であればさっさと身を閉じて長生きをしたくないと考えている。死ぬことが億劫なので、そうしないだけでただ無為に命を垂れ流しているに他ならない。それでも悪運の強さが「邪魔」をするので、仕方なく死ねないから生きているだけなのだが特に誰からも必要とされない8割の人間がその部分にピントを合わせず生きていくのはシステム上非常に難しくなっているようで、今こうやって筆を進めている瞬間にも無為なことをしていると痛感させられるわけだ。

 周囲には上位互換だらけ、アベレージは出せてもトップは出せない。全てが中途半端で、結局必要とされることはない。対価という利害が発生してようやく、その部分に於いてだけ「人間」として見てもらえるがそれがなければ人間としても見てもらえない感覚に陥ってしまう。

 生きてて、楽しい?楽しいわけねーだろ。
 結局、必要なのは「酸素」だけ。誰にとっても、どこにとっても2割になれない8割側なんだから。

-中学生のころだったろうか、空気中の酸素含有量を見て「たったこれだけ?」と素直に思ったことを覚えている。20%しかない酸素で生きている、裏を返せばそれ以外は別に必要でも何でもないんだなとそこまで思考が廻ったわけだ。同時に残りの8割に俺はいる、と理解もしてしまったわけだがある意味今も変わっていない。まぁ、酸素オンリーの世界なんて危なっかしくて暮らせるわけないし残りの80%が絶妙にバランスを取っているともいえるのだが。

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