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TVタレント、宮迫博之の「終演」

8/17(火)の朝早くに寝耳に水なニュースが駆け込んできた。

それから時を追うようにして、ABEMAにて雨上がり決死隊の解散報告をアメトーークとして放映することが報じられた。

件の闇営業問題から2年以上経て、雨上がり決死隊の宮迫は同時いくつも抱えていたレギュラー番組を去り、地上波では名前こそ言及されるものの、ほとんど映像としては出てこない期間が続き、宮迫だけでなく、その闇営業に関わっていた数多の芸人たちが謹慎やレギュラー番組の打ち切りなど数々の重い処罰を受け、思うように仕事ができない期間が1年以上続いた。

一方、宮迫自身は闇営業問題が発覚した直後に吉本興業からは契約を解消された。
個人のYouTubeのチャンネル開設などを経てTV業界への復帰、しいては雨上がり決死隊として初の冠番組であるアメトーークへと舞い戻ることを考えていた。



それを前後するように、闇営業問題で共に重い処罰を受けていたロンドンブーツ1号2号の田村亮も復帰への足掛かりとして、相方の田村淳のTwitterにて、株式会社LONDONBOOTSの設立を発表された。

ロンドンブーツ1号2号の場合は吉本から独立ではなく、エージェント契約として吉本との関係は継続としており、2020年4月に冠番組であるロンドンハーツを切っ掛けに徐々に地上波へと回帰していった。
今となって田村亮はロンドンハーツに普通に出演しているが、地上波テレビの仕事は大変限られている。もとからそんなに出ているわけではなかったが、、
ただ2020年になって、同じ闇営業問題で重い処分を受けた田村亮と宮迫の2人は、ロンドンハーツ放映日の毎週火曜日としっかり毎週何度も更新される宮迫のYouTubeがどちらも回を重ねるにつれて、コントラストが徐々に際立っていった。

そして、放映された17日の解散報告会。
悲しみに包まれて終えるのか、笑いあって大団円として終えるのか、不安と楽しみが交錯しながら放送開始の20時を待った。
冒頭2人の蛍原の挨拶から始まり、そのあと2人で登場した。2年ぶりに2人が揃う姿が見られた。

今回の見届けゲストに、東野幸治・出川哲朗・ケンドーコバヤシ・狩野英孝・原西孝幸・藤本敏史の6人が出演した。
雨上がり決死隊の2人が慕う東野、アメトーークでキャラクターが見出だされた出川と狩野、大阪時代のライブで手伝いをしたり一時期アメトーークの準レギュラーとも言われたケンコバ、そして天然素材時代から深く親交のあったFUJIWARAの2人。

宮迫は、前述のようにアメトーークを地上波TVでの復帰の舞台として考えていたなか、2年という長い謹慎を経て、地上波ではないもののアメトーークのスタジオに踏みしめることができて、紆余曲折右往左往あって感無量であったように見え、以前のようなトークの勢いを感じつつも時折見せる彼らしい相方やゲスト陣に向けるキツイ弄りが、2年前から時が更新されていないように見えた。

一方相方の蛍原は、解散を自ら言い出したのもあり、終始心決まり引き締まった表情だったのが非常に印象的で、宮迫が序盤に、出川や藤本が終盤に、それぞれ涙ぐむシーンが見られたが蛍原は一切涙を溢さず、宮迫へのキツイ弄りや最後のドロップキックも時折返しつつ受け入れていた。


放送された2時間のうち印象的なシーンがいくつもあったが、解散の理由を尋ねられた時に、一番大きな理由なのが、宮迫がYouTubeを始めるタイミングだったと蛍原が述べた。
宮迫自身はロンドンブーツ1号2号の亮の復帰へ踏み出すという報道を見たのをあって、以前からYouTubeチャンネル開設を考えていた宮迫は機が来たと思い、舵を切るも、そのYouTube開設は相方の蛍原には事後報告であった。

宮迫のYouTubeを始めた言い分を聞いてるときの各人の表情が何とも言えなかった。


それぞれの質問や両人の思いの吐露を経て、最後雨上がり決死隊の2人へゲストから言葉を向けられた。

東野が久しぶりの2人の揃う姿に面白さがあったと言いつつ、これからの2人のそれぞれの歩みを激励し、番組のなかでも東野らしい俯瞰的な見方で、宮迫が不利なことをわかった上で宮迫の自己愛が強い弁解をフラットに代弁し、しんみりとした空気感のなかで「俺このあとケツあんねんけど」など、ソリッドな笑いに何度か救われた。


出川が、リアクション芸ではなく自身のパーソナリティーに着目してくれたことに感謝を述べ、蛍原が当初雨上がり決死隊を解散する上でアメトーークも辞める話をする男気に感嘆しながら、雨上がり決死隊とアメトーークへの思いを述べるうちに涙を流し、それにつられ藤本が堰を切るように号泣した。今となっては出川が泣くことに違和感なく受け入れられるが、かつて抱かれたくない芸能人ランキングの常連であった出川の涙が、激辛ワサビや猛獣から逃げ惑ってから出たのではなく、本人の感情から出されたものであり、芸人のパーソナリティーにフォーカスしてきたアメトーークの功績であろう。最後の九九の下りは宮迫から厳しいパスであったが、ドロップキックへ良いフリとなった。


ケンコバはそんなしんみりとした空気を引き戻すように、彼らしいピシッと締まりある語気でボケを織り交ぜつつそれぞれの芯の部分に触れて、蛍原は男っぽさと宮迫の芸人らしい気質を称え、ゲスト陣で誰よりもずっしりと構えてるように見えた。


狩野は本人が謹慎期間を経たのもあって終始宮迫に気を遣い、ファンとして後輩として今までの雨上がり決死隊とアメトーークへの熱い思いをぶつけ、宮迫に再結成を諦めるなと迫った。身勝手なファン感があってよかった。


原西は自身も2年ぶりの出演であることを自虐しながら、一発ギャグ1つと「ぼくたちは雨上がり決死隊大好き芸人です!ヤッター!!!」と叫んだ。最後の言葉を送る以外にも普通にトークする原西が貴重であった。宮迫と美容師が一緒らしい。


そして誰よりも感傷的であった藤本。
「本当に解散せなならんのか」「宮迫さんが悪い、宮迫さんのせい」「雨上がりなくなるんですよ」とアラフィフのおっさんが泣き叫びながら問い詰めるシーンは宮迫のズレ具合とはまた違ったしんどさがあり、今回の報道を受けて衝撃を受けた僕の思いを、大きく宮迫にぶつけてくれた。

立場が変わったことに気付かない宮迫の、2年前と何も変わらないデリカシーのない弄りを受けても、笑いに変えようとする後輩・藤本の姿勢は、健気であるがそれ以上に空虚であった。
久しぶりのスタジオ復帰に舞い上がっていた宮迫は、その藤本のストレスを終盤の泣きじゃくって問い詰められるのを、宮迫は受け止めることしかできなかった。

これは邪推の域を出ないが、藤本自身の離婚や現在も子供たちが週刊誌につけられているのに苦悩したり、本人のやや情緒不安定な部分が今回の発露にも繋がったようにも思える。ただ、それよりも本人が如何に今回の報道を痛切に感じているのかわかったし、蛍原の散々な苦悩を踏まえて誰しも思っていてもぶつけられなかった宮迫の身勝手さをバッサリと断罪した。

蛍原がその藤本の涙を受けて「そうやって1年半毎日泣いてきたから」という言葉がとても重く、今回の判断が不変であるとより強く思わせた。
また来てくれたゲストの心情に配慮しながら、関係各所に感謝の意を述べ、アメトーークを続けることに意欲を見せた。

一方で宮迫は同じように感謝を述べつつ、自身の身勝手さが理由で雨上がり決死隊を続けられないことに謝罪し、一生を賭けて償いつつ、蛍原と一緒に出来ることを諦めずにやっていくと述べた。

その後、宮迫が出川に九九の七の段を無茶振りし、それなりに空気が戻ったところで、出川がドロップキックを懇願する。

素晴らしい笑いのプロレスを経て、最後に番組テーマ曲である、忌野清志郎の雨上がりの夜空にをバックに2人の和気藹々とした映像で番組は終わっていった。



その解散報告番組放映の翌日放送のバイキングで、おぎやはぎの2人が「興味ないね」と言い放ちつつも、解散の必要性を問いていた。

ドライに見つめた現実への見解であり、お互い売れてるのだし屋号を残して別々で活動すれば良いのでは?と思案しながらも、蛍原の心境に理解を示していた。


個人的な見立てとしては、吉本興業は今回の放送で「闇営業騒動」で区切りをつけた形にしたかったのだろうか、ABEMAだけでなくYouTubeでも吉本興業のチャンネルから生配信された。
600万を越える再生回数となり、宮迫自身に毀誉褒貶があるものの若手と大御所の橋渡してして中堅の立場で吉本を支え、一大コンテンツとなったアメトーークを続けたテレビ朝日からの誠意と感謝を感じるが、地上波ではなくネット配信となったことに、色んな事情が見えすけ、それだけでなく宮迫自身の心理状態がまだ地上波には戻ってはいけない最大の理由だと思えた。



こうやって解散していくコンビがある一方、辛い時期を耐えて乗り越えて今はコンビで活動している、極楽とんぼやアンタッチャブルたちが、いかに苦境乗り越えてきたか伺える。
同じように苦境に立たされているアンジャッシュやTKOが、どのような道を歩んでいくのか。

僕は平成4年生まれで、雨上がり決死隊結成後に生まれているが、水曜の夜10時がいつも楽しみであり、轟さんがなかでも好きだった。
アメトークも必死に追い掛け、バイク芸人のときにケンコバが、バイクにオナホを置いて母親に「あれ何?」と訊かれたときに、姉と一緒に聞こえないフリをしたのがつい昨日のように、自分の多感な時期を、特に震災直後に上京して慣れない暮らしのなかで、毎週木曜日が待ち遠しく感じる日も多くあった。
どんなに毎日辛くしんどくても、また色々忘れて笑える日が毎週あるのは頼もしかった。
宮迫の瞬発力が生む速い笑いと鋭い話術、それを最大限発揮できるよう裏回しに徹した蛍原の、時折見せる貪欲なボケに嬉しそうに突っ込む宮迫。
もう見れないんだな。


そんな思い入れのあるコンビの、本人実在の葬式のような形で終わるのは大変寂しかった。
かつてアメトーークで取り上げたフジテレビのノンフィクションのように、等身大の自分たちを話す姿にきつく胸を締め付けられた。

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