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卵巣がんフォーラムの意味

卵巣がん患者を襲う不安

2018年に実施された地球規模の卵巣がん患者実態調査であるEvery Woman Study(TM)によると、卵巣がん患者が気持ちの支援を必要とするときは、世界では卵巣がんと診断されたとき・初回治療後が多いのに比べて、日本では再発時・もう治療がない段階にきたときが多く、調査のレポートでは特筆すべき違いが出たとされています。
そして気持ちの支援が不要ではないと答えた患者は0.8%。
日本の患者の99.2%が気持ちの支援を必要としていることがわかりました。

実際に卵巣がん患者が誰に支援を求めたかという調査でも日本の患者さんは医療者に助けを求めた割合が非常に少なく(世界平均27.8% vs 日本14.4%)、また誰にも助けを求めなかったうえに誰からも助けてを申し出てもらえなかったという割合が世界に比べて高い(19.3% vs 32.5%)ということがわかりました。

卵巣がん患者が向き合う問題として「がんの再発が心配」「死の恐怖」「治療がうまくいかない不安」が上位3位を占めています。

2014年に調査を行い、2015年に日本癌治療学会で発表をさせていただいた「卵巣がん患者の治療に関する意思決定調査」においても指摘されています。

潜在変数『心理的症状』は、観測変数「死ぬことを心配している」のパス係数は0.89、「病気の悪化を心配している」は0.85、「悲しいと感じる」「神経質になる」「病気と闘う」「病気と前向きに対応」で構成された。看護師は死や病気の予後についての話を避けやすい傾向にあるが、患者の心理的症状には強く影響していることが量的に明らかになった。医療現場では患者がそれらの思いを表出できる環境と、思いを聴く医療者側の姿勢が望まれる。

しかし患者会支援においても患者さんから「私、死ぬんですか?」「今は抗がん剤が効いていますが効かなくなる日がくるんでしょうか?」「卵巣がん患者は多くが再発すると聞いていますが私も再発しますか?」といった悩みを打ち明けられることは多いけれど「先のことを確実に予測することは不可能」であり、医療の不確実性というものが患者さんのメンタルに影響することの大きさを痛感する日々です。

自分の病気に興味を持つこと

患者さんは非常に長い時間インターネットで卵巣がんも含めて医療の情報に触れていると感じます。

自分の病気に興味を持つことは大切ですが、インターネット上の情報では卵巣がんの患者数や死亡者数・生存率においては1990年前後の情報を掲示しているもの散見されること、がん診療連携拠点病院の卵巣がんの解説ページですら卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020に準拠していないものが多く、患者さんが正確な情報を手に入れることが非常に困難になっています

スマイリーが2021年12月27日から2022年1月21日まで実施した「医師と卵巣がん患者のコミュニケーションに関する調査」では、医師に不安や質問したいことがあったとして、伝えられない・伝えられないことが多いと回答した患者が21%もいることがわかりました

自分の病気のことなのに、正しい情報を知りたいのにそれを入手する術もなく、インターネットを彷徨い、時にはその情報により不安が生み出され、でもそれを支えてもらうことができない患者さんが多いことをスマイリーの支援を通じて感じていたので、この結果が出たことはある意味で納得であり、ある意味でそれをどうにかしなければ卵巣がんの医療はよくならないと感じています。

卵巣がんフォーラムの意味

スマイリーでは2010年から「卵巣がんフォーラム」を開催しています。
第1回は製薬企業にスポンサーになっていただき丸の内で開催しました。

しかし、私にとってはとてもショックなことがありました。
スポンサーに支援していただく以上は、講師の選定にスポンサーの意思が絡んできますし、講師の発表内容にも他の製薬企業の薬剤名を出さないなどのルールが入ってきてしまうのです。
なによりも悲しかったのは「患者さんの質問は事前質問で」というルールでした。フォーラムを聞いてその場で浮かぶ質問こそ大切なのにスポンサー以外の企業の薬には対応が難しいためと告げられたのです。
(スポンサーの薬以外答えられないなんて医師いないはずなのに!)
私は事前に届いた質問を選ぶ役割を任されました。患者さんの声はどれも貴重なはずなのに、私がスポンサーやスマイリーの考えでそれらを取捨選択する辛さは身を斬られるようであり私は大きな決断をすることにしました。

2011年からはスマイリーがスポンサーをつけない形でフォーラムを開催することにしました。
そのため医師に招聘状を送る・必要に応じて交通の手配をする・お弁当の準備・お話ししていただく時に出す水の準備・会場の設営・当日のタイムライン・チラシ作り・集客などあらゆることを患者会で行うことになりましたが、医師は制約なく正確な情報を講演のなかで発信できるようになりました

2011年は750人収容できる会場に300名ほどが来場いただき、情報を欲する患者さん・ご家族の熱意を感じることができるフォーラムでした。
一方で当日は台風が直撃をして交通などに大変不安をかけてしまったこと、また無料で開催するには公共施設など安いところを探す必要があり、当日の会場も駅から2キロ離れており治療中の患者さんがくるには辛いなど問題があることを痛感しました。そうした問題を感じるたびにひとつひとつクリアしていきフォーラムをより良いものにしてまいりました。

そしてこの頃からスマイリーは変わらず、フォーラムでは事前質問は受けないで当日講演を聞いた上でのガチ質問でやらせていただきました
もちろん質問の中には個人的な話も入ってくるのは予想していましたが、登壇いただいた先生からは「それがあたりまえなんです」と温かい評価もいただきこの姿勢は崩していません
(あぁ11年も前だからみんな若い・・・)

いま、卵巣がんに対して無料でオンラインで誰でも参加できるようなフォーラムやシンポジウムが開催されていますが、スマイリーが開催するフォーラムとは大きな違いがあります。

  1. フォーラムでは製薬企業のスポンサーがついていません(後援や共催とかかもスマイリーの意思決定を阻害されたくなくつけていません)、そのためにプログラムはスマイリーが決め、医師の発表にはなんら制限がなく正確な情報提供をいただけます

  2. フォーラムには患者さんが講演終了後に自ら質問できるように時間を設けています。講演でわからなかったこと・確認したいことがその場で質問できることはとても大切だと考えています

  3. 事前質問は頭の中での机上の論理だし、主催者が選択するバイアスが入るため行いません。メールなどで患者さんから事前にご質問いただいたものは演者には伝えて講演の中で取り上げてもらうことはあります。

  4. 卵巣がん患者さんや家族だけに縛らず、他のがん患者さんや医療者、医学生・看護学生・薬学生、メディア、企業などあらゆる人に参加OKとしています。卵巣がんの正確な情報を知ってもらうために大切な場だと考えています

  5. 卵巣がんだけで2時間は学ぶ時間を作っています。フォーラムによっては初回治療・再発治療を分ける場合もあり合計した時間にはなりますが、こんなにじっくり長時間卵巣がんについて取り上げるフォーラムはほとんどないと自負しています
    今年も卵巣がんについて午前中に2時間講演があります(東海大学病院産婦人科平澤猛先生)。
    午後は卵巣がんとリンパ浮腫(看護師さんより)、卵巣がんとHRT(東京歯科大学市川総合病院産婦人科高松潔先生)、卵巣がんと緩和ケア(東京医大茨城医療センター産婦人科藤村正樹先生)という卵巣がん患者が向き合うかもしれないトピックを学びます。
    トータルで時間とすると6時間10分卵巣がんに関連する事項を学ぶことができるのです。

2000円という参加費用をいただきはしますが、参加いただいた方はアーカイブも1ヶ月間見られます。
今は無料でたくさんの卵巣がんを学ぶ場が増えてきていますが、スマイリーが提供するフォーラムは卵巣がん専門の患者会だからこそできるフォーラムです!
たくさんのひとにご理解と参加をお願いできたら嬉しいです。
参加申し込みはこちらをクリックしてお進みください。
(コンビニ振込ご利用の方は間も無く締切です、お早めにお願いします)


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