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栄枯盛衰の続き


前回はたくさんの方に記事を購入していただいて本当に恐縮です。

駄文乱文にお付き合いいただきありがとうございます。
今回はその後の現状を記します。

前回の記事

私の起業失敗談


今回は全て無料なので前回の有料部分を読めていない方にも楽しめるような内容にしてみます。

水野や木村、石原の今


前回の記事で書いた通りリアルストックを去った後、水野も木村もそれぞれに独立の道を歩んでいる。
リアルストックを去っていった部下たちもそれぞれの会社に在籍している。
しかもそれぞれが時期上場するくらいの実績を出す会社になっているらしい。彼らは俺と違って本当の経営者として活躍している。
かつての部下の活躍は素直に嬉しい。
事務の石原は俺との別れを告げた後に木村の会社で裏方として働いていると聞いた。木村と石原が組めば今後も安泰だろう。
少なくとも俺のような失敗はしないだろうから。
水野はスーパー営業マンとして第一線で活躍しながら会社を運営しているらしい。あいつらしい姿だと思う。

有田のその後


みなさんも気になっただろうが有田のその後だが、正直なところ俺にもわからない。
リアルストックを退社してオリエンタルに移ったところまではわかるが、しばらくしたらオリエンタルも退職してしまい今ではどこで何をしているか噂話も入ってこない。
俺が思うにオリエンタルの社長は完全な愛人として扱って有田の自尊心や向上心までは満たせなかったのだろう。

いや、たかが愛人に会社の全権力を任せる愚行は俺くらいしかやらないか。
俺の元で人生最大の贅沢とも言える時間を過ごした有田は、生半可な人間では満足させることはできないと思う。

彼女のあくなき自尊心と向上心、人よりも偉くなりたいという考えやお金持ちになりたいという欲求を全て叶えようとした俺が全てを注いでも叶わなかったのだから。
ある意味俺はとんでもないモンスターを育ててしまったのかもしれない。
だが、こう考えるとオリエントの社長の方が何枚も俺よりも上手の経営者だったというわけだ。
愛人は愛人として扱い、会社は会社として扱う。
あのたぬき親父は従業員も何もかも全て私利私欲で食いつぶしているように見えたが、実際にはとてつもなく冷淡な判断をできる男だったのかもしれない。
事実、変革が激しい業界の老舗として今でも会社の存続ができているオリエントコーポレーションをずっと引っ張っているのはあのたぬきなのだから。


俺のその後


最後に俺の現状を伝えることにする。

全員が去り、まもなく嫁とも子供たちとも別れることになった。
当たり前だ。女にうつつを抜かして会社の金で豪遊していた阿呆な男。
家庭も顧みずに外で女をつくって、家族との時間なんて皆無。
お金だけで繋がっていたようなもんだからその金さえもなくなれば別れるのは必然だろう。

慰謝料は嫁の厚意で無くしてもらえたが、養育費は責任を持って払うことを約束した。
詳しくは割愛するが多額になった役員貸付金、いわゆる俺の私的な流用資金は回り回って自分に降りかかってきた。一人株主だからどうにでもなると思っていたがそうはいかなかった。
いわゆる役員貸付金を会社が放棄する手順で精算したが個人に対する贈与などでしっかりと課税されてしまった。

車や時計や株式など金目のものは全て売り払うことになった。自己破産は免れたものの本当に全てのものを失った。
全てが自分の不甲斐なさが招いたものだから誰を恨むこともできない。

一番厄介だったのが一度経営者をやってしまうとなかなか従業員という立場に戻れないと言うところか。
プライドが邪魔をすると言うのもあるが同業種で成功体験を経験しているだけに、もう一度やり直してチャンスを掴もうという欲が捨てきれなかった。

今思うと考えが甘すぎて笑えるが、知り合いの業者に頭を下げて仕事をもらいながらどうにかできるという考えもあった。

だが世の中は甘くない。
俺が有田とうつつを抜かして遊び呆けている数年間で業界の改革が進んでいたのだ。現場を見もしないで敏腕経営者のつもりでいた俺は現場の変化にも気が付けていなかった。昔ながらの営業しか知らない頭でっかちの無一文の男に手を差し伸べてくれる会社はなかった。
無論、経験と実績を買ってくれて新規立ち上げの話なんて出てくるわけもない。失敗した理由が女遊びで今の現場で通用しない奴に出資をする人間なんてどこにもいない。一度失敗してしまい再起するものに対して甘くないというのは日本の常識だが、欧米などの彼の地でも俺のような失敗をする奴には一文も出すことはないだろう。
何もかもを失ったんだと実感したのはこの時だった。
業界の特殊な形式もあるからノウハウさえあればどうにかやっていけると思っていたが、俺を持て囃していたのはオリエントの営業統括部長というポジションだったり、リアルストックという会社の代表者と言う点だけだった。


しかも水野や木村、またその部下たちが必死に営業をして会社を大きくしてくれていた実績を自分の実力と勘違いしていたのだから手に負えない。
現実に残った俺の評価はみんなが積み上げてきてくれた実績の上にあぐらをかいて、社内不倫をし会社のお金を自由に使いまくっただけのダメな経営者だ。

裸の王様とはまさに俺のことだと思う。

無一文になった大友という男には同情の言葉はかけてもらえたが、誰も興味を示してくれなかった。

恥を忍んで木村や水野の会社にも顔を出したが、それぞれの会社にはリアルストックをやめて転職したスタッフが幹部として活躍している。

俺がやらかした過去を彼らが知っているもんだから今更一緒に働くことはできないと言われた。
そりゃそうだよな。もし俺が従業員の立場なら昔の社長が部下として入ってきても嫌だし、ましてや上司として入ってきてしまったら木村も水野も従業員になんて説明をすればいいやらだ。

業界にも残ることができないと悟った俺は、とある運送会社で日々の生活を送っている。
この運送の業界は勤務時間を突き詰めれば意外に高級取りで、子供達の養育費を払いながらもどうにか男一人が生活するだけのことはできる。
人生の贅沢はあの数年間の経験でたくさんの甘い汁をすすったのだから今の生活はその見返りなのかもしれない。

子供達が成人して養育費を払い終えたら成人式くらいは顔を出したいという気持ちを持っているが果たして許してくれるかはわからない。
それでも自分がやらかした過去の贖罪として今を耐えぬいていこうと思う。


若き経営者たちへ


いかがでしたか?これが社内不倫に走った男の最後の姿です。
選んだ相手が悪かったと言う人もいますが、その女性を選んだのも自分自身だし、なにも言い訳もできません。

若い勢いで会社を立ち上げて潤沢な資金ができてしまうと自分はできる経営者だと勘違いしてしまいます。

また、社長というポジションの人間には悪いことをきちんと咎めてくれる人はどこにもいません。

今まさに会社を立ち上げようとしている人、立ち上げたばかりの人、または日々の経営に汗を流している人、そんな人たちに私と同じ道を歩んでほしくないので恥を忍んで私の半生を見てもらいました。

これを読んだ経営者たち、いや、経営者だけじゃなくてもリーダーのポジションに立つような人たちが大きな落とし穴に落ちないで済めば幸いです。

またもや長文乱文でお付き合いいただいてありがとうございました。



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