迷惑メール:件名:ILOVEYOU

ILOVEYOU のウイルスでjet'aime我爱你愛しているは呪術に漸近しうる。世界中の言葉で愛しているを翻訳して再翻訳かけてそれを繰り返して最後君の名前に回帰すればいいな。愛している、それだけだった。親の不在の密室で、カーテンがおっぱいのように揺れて肌色がはちみつ味になっていくこの夕暮れ時間。さくらんぼをまるめこんだみまいな唇を舐めてみたけど味がわかんなくて、不感覚が感染して、君までもキスの味が分からない、とか言い出す。「ファーストキスは、レモン味?」「君の唇が強酸性であることはたしかだ」わからないことだらけの世界でお前の名前の冠を被ったまとめサイトがきらっと光る。君は僕よりすごいんだよって、それだけの証。内部爆発核融合をくりかえすこの感情を指先の運動に変換する!僕は、I Love Youと書かれたメールのリンクを踏んだ!

【ウイルスに感染しました】
ワイセツな気持ちにさせて(熱帯夜)おもちゃの指輪で婚約させて/ 目が合う。感電しかける。動脈で泡立つ純愛ひゃくぱ〜果汁MIX
【ウイルスに感染しました】

美術室の排水管より愛を込めて。教室にとびかう恋文の語尾が可愛くて僕はうらやましかった。教室にとびかう世界滅亡の予言、女の子たちの語尾がぴょんぴょん赤目の兎みたいに跳ねる。僕は羨ましかった。唇まで秒読み。接吻の流線型。レディメイドの朝焼けを、君の唇が塗り替える。毛穴が開いてハート型に変形して、可愛い汗をぬぐう熱帯夜が終わる?(夢の中で知った、あたらしい色の夜明け)どんな君にも逢いたい朝だ。誰もいらない何も要らない朝凪が漂白されていく水平線を奥歯で噛んで、君と目が合って感電する睫毛の一本一本がビリビリギザギザ痺れる。語尾のはーと、でごまかす、僕の見ている世界の色を。骨の髄まで桃色にそまっちゃったらやっとこの街は君のもの? 人生色々あるけれど、その色はどれもモノクロームで代わり映えのない悲劇の連続だ。そのすべてをぶちこわす鮮血が、

その日君は、新宿に行くといったっきり、この部屋はひとりだ。大学寮の角部屋で、夏のB面に針を落とす。(色街の街角で、色彩を喪失した男が君を睨みつける。)「指先の痙攣的な運動ですべてを終わらせた気持ちになれるきもちい?」僕は君のラインを消せないし、消さない。ただそれだけを、正体不明のくちびるが、目的格全て君になってしまったこのうすぐらい東京の四畳半を、がぶり、のみこんだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?