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僕はおまえが、すきゾ!(38)

優作は今、真剣に恋をしている。それを僕は止める事は出来なくて、そして優作が僕からどんどん遠くに離れて行ってしまうように感じていた。僕の優作が他の誰かの優作になってしまうと、思った。そんな事、今の優作を見れば、一目瞭然なのだけれど、それでも僕は、優作との楽しかった日々を、これからも続けていきたいと思っていた。それが無理なのも、凄くわかるのだけど、僕には優作の気持ちを以前の優作のように変えられる抑止力もないけれど、だけども僕は古賀さんに引き寄せられていく優作に、大きなショックを受けていた。ジワジワとゆっくりとその気持ちはだんだんと膨らんでいき、僕は大きな悲しみに浸っていた。
「彼女、女優になりたいんだってさ」
嬉しそうに優作が僕に言った。
「俺も、将来映画監督になる」
優作は真剣な目をして言った。
「それで監督俺、主演女優朝子さんなんて事になったりしたらな~!」と、優作はゴロンと横になって、喜んだ。
「そうだな・・・」
僕はいまいち、そんなテンションにはなれなかった。
そんな僕にお構いなしに、優作はカーペットの上を転げまわっていた。
優作が、何の声も発しない僕にやっと気が付いて、僕にニヤニヤしながら言った。
「油科さんとはどうなってるんだよ。あれからデートしたんだろ?」
黙っている僕に、優作はテンション高めに言った。
「どうなんだよ~、この野郎~」
優作は、古賀さんから何も聞いていないのだろうか。油科さんは古賀さんに何も言っていないのだろうか。
「古賀さん、何か言ってた?僕の事」
「やっぱり何かあったんだな~、お前も隅に置けない奴だな~」
良かった……、油科さん、何も話してないんだ、僕は正直、ホッとした。
目の前では、優作がお道化回っていた。
バカらしくお道化る優作を見ていても、恋をする良さが何も分からなかった。
 

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