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Our Music:Tatebayashi 制作ノート #9

・Bar FATCATS(ファットキャッツ)

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館林駅からほど近い場所にある、ファットキャッツ。第9話では、店主のマサキさんにビデオ通話でお話を伺いました。会話の流れで、実はマサキさんがピアノを演奏されることを知って実際に後日、ピアノ演奏の動画を送っていただきました。このファットキャッツ、本編でも紹介していますがスペアリブが名物。撮影クルーのなかで天野だけが以前このスペアリブを食べたことがあるんですが、本当に美味しい!一気に焼き上げたジューシーなお肉と特製BBQソースが絡みあって、やみつきになりそうでした。撮影でもう一度食べたかった...。(天野)

オンライン取材をさせてもらった店主マサキチトセさんはライターとしてLGBT運動関連の執筆をしたり、Youtuberとしてクィア英会話レッスン動画などを発表したり、さらには音楽もやる多才な方。取材中にその場の勢いでピアノをお願いしてしまいましたが快諾してくださり、どことなく切なくもメロウな響きのピアノで曲に彩りを添えてくれました。次回のエピソードで披露される完成形の楽曲をご期待ください!撮影期間中はお店には行くことは叶わずでしたが、近いうちに飲みに行きたいと思います!(VTM)

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ファットキャッツさん、7月31日から通常営業が再開されるようですので、是非行ってみてください。

公式HP http://barfatcats.com/
インスタグラム https://www.instagram.com/barfatcats/
マサキチトセ (Twitter)    https://twitter.com/GimmeAQueerEye

群馬県館林市本町4丁目1−8

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VIDEOTAPEMUSIC インタビュー / ロングバージョン

  第9話の最後に、VIDEOTAPEMUSICのインタビュー音声を使用した。
このインタビューは、楽曲完成時に30分ほどテレビ電話で収録した内容を第9話に組み込んだものである。本編ではかなり短くしているが、ロングバージョンを抜粋してここで紹介しようと思う。
  本作は当初、3月に1度目の滞在撮影、4月に2度目の滞在撮影をして楽曲を完成させる予定だった。しかし、コロナ禍の影響で2度目の滞在を断念せざるを得なくなり、4月以降はすべてリモートでの制作に移った。
  このnoteが公開される7月17日現在、依然としてコロナ禍が収束せず、新しい生活様式が求められている中、クリエイターの制作手法も変化を強いられている。その文脈において、ここでの会話の内容は個人的にも記録に残しておきたいと思ったからだ。(天野)

天野
途中から急遽リモートでの制作になりましたが、それに対して曲の作り方はどう変わりました?

VIDEOTAPEMUSIC(以下、VTM)
最初の滞在の段階だと、僕が外部から来た人として、そういう立場で集めた音だけだったけど、2回3回と行くうちに館林の人ともっと交流して、セッションっぽい感じに持って行きたいなと思っていたんです。出会った人の演奏する楽器や歌を足したりして。自分の生まれ育った場所と違う街で制作する上で、「ただ音だけ録って帰ってきて作るだけでいいのか?」ということを思ってて。その意味でもっと人との交流の部分を4月の滞在でやりたかったんですけど、それができなくなったからどうにかビデオ通話しながら、その中でできる音を集めたいなと考えて。PCの前でクラップしてもらったり、ピアノを演奏してもらったりしましたね。

天野
こうして状況が変化していって、VIDEOさんの中で、気持ちとしては逆に燃えましたか?

VTM
燃えましたね(笑)。もともと限られた状況で、わざと自分に制限を設けることで追い込みながら普段も作ったりしているので。変に選択肢を増やしすぎないというか。制限や制約がある方が、自分としては燃えますけどね。

天野
制限や制約がある中で創作するというのは、VIDEOさんの制作スタンスに根ざしているんですね。

VTM
例えばHIP HOPだったり、様々な音楽にそういった側面があると思うんですけど、もともと自分が音楽をつくるにあたって影響を受けてるものって、「自分の生活する限られた環境の中でも、身の回りにあるものだけで音楽を作れる」ということ。音楽って案外、高級な機材を持ってなくても誰でも身の回りのもので始められる。もちろんちゃんと突き詰めていくには知識や技術、鍛錬が必要だと思うけど、出発点は身近なもので誰でも好き勝手にやっていいと思うから。僕も身近なものから作りたいとは思っていたので。そういう意味では今回、限られた環境の中でやるっていうのは、普段自分が大事にしているそのままの気持ちでやれたっていうか。

本作が外部との接触を避けるために、
対面での撮影を中止したのが4月3日。
その5日後に緊急事態宣言が発令された。


天野
2度目の滞在撮影を敢行するか否かについて。もともと僕は、監督としてはやっぱり映像を撮りにいきたい気持ちが強くて、迷っていた。でも、最初にVIDEOさんの方から言ってくれたじゃないですか。「この状況だともう行けないだろうから、違う着地点を考えた方が良いかもしれない」と。
実際に作り終えて、今思えば、たしかに選択肢はそこしかなかったなと。

VTM
そうですね。今振り返っても、あのあと緊急事態宣言が出て、撮影できる状況にはなかったし。ちょうど 大林宣彦監督の「北京的西瓜」という映画のことを思い出して。千葉郊外の八百屋と近くの大学に通う中国人留学生の交流を描いた作品なんですが。物語の終盤の北京ロケが当時起きた天安門事件(1989年)の影響で中止になって、終盤から脚本を変更して一気にメタフィクション的な方向に急展開するんです。それが映画としては破綻しているように感じちゃうんですが、それが監督の誠意というか、現実の社会の状況を無視したままでは作品は作れないという強い意思表示に感じるというか。なので自分もあそこで無理して館林に行くというのではない方向転換は必要かなと思って、この状況においては、この判断で正しかったかなという感じですよね。

天野
正しかったと思います。

VTM
もともとなんとなくゴールは思い描いていたじゃないですか、ドキュメンタリーといえども。館林に滞在して、何度か行って完成させて、向こうで披露する場所も見つけて、お披露目するっていう。ある程度思い描いていた道筋とハッピーエンドみたいなものはあったんですけど。

天野
ありましたね(笑)。

VTM
それができなくなった代わりに、良くも悪くもまだゴールはできてない感じがありますよね。

天野
はい、10話でキレイに終わるわけではないというか。現実はそううまくいかないんだなっていう。

VTM
いろいろとリモートでやり取りしながら、一緒に曲を作れて有意義だったけどまだ現地で曲を披露できていないし、取材に関わってくれたお店や場所が、コロナウイルスの影響でこれからの営業が危うい状態が未だに続いている。なんというか、まだ終わってないんだけど、終わっていないからこそ館林に行く理由がまだあるというか。こうやってドキュメンタリーを作ることで、完成して「はい、終わり」でさようならというわけではなくて。ここから関係を築いていけたらいいなと思いますね。

天野
やっぱり映像が終わっても、続きますよね。僕の前作のドキュメンタリーもそうなんですけど、撮らせてもらった男性は、映画が完成しても未だに難民であり続けるし。

VTM
そう言われてみると、ドキュメンタリーって大体そうなっていくのかもしれないですね。作品は完成しても人生は続いていくわけだから。人の人生の一部を撮らせてもらっている以上、完成して終わるっていう気持ちにはならないですね。

天野
ならないですね…。

VTM
今思うことは、今回の取材に関わってくれた人たちが、コロナが収束するまで、お店だったりもそのまま続いていてほしいし、できたらそこに改めて収束した後に曲を披露しに行けたらいいなと思いますね。

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本編では、上記の会話の音声に、走行中の車のフロントガラスから見た館林の風景を映している。これはカーナビ用のマウントにiPhoneを取り付け、ドライブレコーダーのような要領で撮影をしているのだが、改めて見返すと、これは運転する自分(天野)が見ていた景色そのままだなと思う。いや、運転しているから当たり前なのだけれど...。当時運転しながら、実現しなかった2度目の撮影のこと、休業中のお店のこと、VIDEOさんと話し合ったことを考えていた。館林から東京への帰路、カーステレオで"Sultry Night Slow"をかけた。そういう諸々がそのまま映像になっているので、自分にとっては、あの車窓の映像はとても個人的で思い出深い。ちなみに、映像の最後に出てくる高速道路の橋は、埼玉県と群馬県の境にある利根川を越える橋で、車で移動する人にとっては馴染み深いものである。(天野)


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