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人生イロイロ

Sちゃんは、私より一回りほど年長の未亡人。数年前にご主人をなくされて、今はご主人の残した会社を1人で引き継いでいる。ご主人の仕事は土建業、宅地を中心にした土地の造成で、ハウスメーカーに卸す宅地開発を中心に手広くやっていたよう。当時はとても大きなお金の動く取引が多かった様子。今は、土建業はせっちゃんが1人できる範囲の仕事に縮小して、息子さんと協力して小さなカフェも始めたりしている。

土地とお金がからんだ時の人間の強欲さが引き起こす悲喜劇を何十年も見てきた彼女の話しは聞き飽きない。

昨日聞いた話は、価値の低い土地を見事?に高額な土地と交換させ、たぶん、仕入れの値段の何倍もの値段で売り抜けた話(その結果Sちゃんの会社が割を食って損をしたそう)で、そんなことができるのは、怖い業界のこわもての男性でも絡んでいたんじゃないのかなと思ったら、なんとその主役は女性しかも年配のおばあさんだったそうで、びっくり。「土地ころがし」技術に長けた、まさに「プロ!」というようなテクニックに、思わず「ひょー!!!」と驚いた。違法行為ではないし、民間の交渉で成立した取引だから、誰も文句は言えないのだけれど、相手の足元を見る交渉術は素人ではない、おばあさんを侮ってはいけない。

今も、そのおばあさんは、誰も買いたがらないほぼ値段のつかないレベルの小さな半端な土地を膨大に所有しているらしく、その転売?技術で利益を得ているらしい。土地売買に縁のない私にはそんな方法があるのか!と驚嘆してしまった。

世の中にはいろんな手段でお金儲けをしている人がいるわけだ。

ただし、Sちゃんいわく「そうやって貯め込んだお金って、他の誰かに吸い上げられていくのよー。」だそう。「上には上がいる。」とも言っていたから、Sちゃんが見てきた土地取引にまつわる修羅を思えば、これくらいの土地ころがしばあちゃんは可愛いほうなのかもしれない。

亡くなったSちゃんのご主人は漁師町の網元の末っ子。家業とは畑違いの土建業を自分で起こし、よく働いて、一時は大成功した。けれど、事業が行き詰まり資金が底をつき倒産を覚悟したときもあって、当時健在だったご主人の両親と兄弟から1億近いお金を借り、なんとか首の皮一枚つながった状態から盛り返した。その後、10年かけて借りたお金を全て返済し終わった直後に、ご主人は癌で亡くなったそうで、そのなんとも見事な人生に嘆息してしまった。Sちゃんと3人の息子さんたちには、借金を全く残さなかったというのだから、なんともドラマチックな人生だ。

Sちゃんの家にいくと、一人暮らしのリビングには、お孫さんを中心にご家族の写真がたくさん飾ってあって、Sちゃんがどれだけ家族を愛しているのかが一目瞭然。ご主人の分まで、家族へ惜しみなく愛情を注いでいるんだろうなあと、とてもあったかい気持ちになる。
聞けば本当に色々な苦労をしてきたSちゃん、でも、これまでの苦労を苦労に感じさせない芯の強さやその賢さには本当に頭が下がる、こういう人を出来た人というのだろう。

自分の人生を正面から丸ごと受けとめて生きてきた女性って本当にかっこいいのね。



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