畏敬の念は時間を増やし、クリエイティブにしてくれるスゴいテクニックだぞ。
ハイライト
・畏敬の念は幸福感を高めるだけでなく、「時間」を増やす
・クリエイティビティの元。それが畏敬の念。
・宗教に入らなくても大丈夫。畏敬の念を感じる3つの方法
自分より大きなものを畏れ、敬う「畏敬の念」は、私たちの幸福感を高めます。
近年の研究では、時間不足の感覚をなくし、クリエイティビティを高め、意思決定を助け、思いやりや寛容さを身につけるために重要な役割を果たしていることも明らかになっています。
畏敬の念とは、「神」だけではなく「自然」など、自分より大きな存在全般のことを、畏れ敬うことをいいます。神がいるかどうか。それは個人の判断にまかせます。しかし、「畏敬の念」が私たちのメンタルに大きな影響を及ぼすことは、現代心理学が示した明らかな事実です。
ここでは特定の宗教への入信などは一切推奨しません。
しかし、自然や神など、自分以外の大きな存在を畏れることには明らかなメリットがあります。アッと驚くほど有用な「畏敬の念」のポジティブ効果を生活に活かさないのはあまりにももったいないですよ!
■日本人は無宗教だけど、畏敬の念を感じていないわけじゃない
日本人の宗教嫌いは事実ですが、決して畏敬の念を抱かない国民ではありません。
日本人は宗教嫌いです。オウム真理教などの新興宗教に対するイメージに代表される宗教へのネガティブイメージは、日本人の基本的な宗教嫌いの信念を作り出しています。
しかし、日本人が畏敬の念を感じていないというのは間違いです。だって、私たちは正月には初詣にいきますよね。お盆には祖先の霊を迎えますし、クリスマスはキリストの誕生日を祝います。それだけでなく、受験祈願のお参りや、七五三、厄払いも行います。神や自然、大きな存在を全く感じないなら、これらの行事は成立しません。
2018年に行われた調査(PDF, n=1,466)によると、信仰する宗教を持っていない人は62%。しかし、山や川に宿る神を理解できるか?という質問にYESと答える人は全体の74%。自分の力ではどうしようもない運命があると答えた人は53%でした。
「大きな存在」を認識し、畏敬の念を抱いている人は、決して少なくないのです。
この記事では、畏敬の念を上手く使って、自分の人生を豊かにするための知識をシェアしていきます。
■畏敬の念は、時間を増やし、幸福感を高めてくれる
畏敬の念を抱いている人は、使える時間が増えたように感じます。さらに人生の満足感が高くなることが判明しています。
(時間増やすってすごくね...?)
現代人は、常に「時間が足りない」という感覚に陥っていますよね。「時間が足りない!」と思うことは日常茶飯事。他人のために使う時間なんて無いと思わせてしまうので、ストレスの原因になります。その結果、人生の満足度も低くなるのです。
「畏敬の念を強く抱くヒト」は奉仕やボランティアに時間を使う傾向があります。他にも、「困っている人を助ける行動」を取りやすいのです。いわゆる「徳を積む」という行為です。一見、無駄に見えるこれらの行為は、時間の認識に大きな変化を及ぼします。私たちの脳は、他の人のために使う時間が多ければ多いほど、「時間不足」の感覚が少なくなるのです。他の人のために使う時間があるんだから、自分の時間が足りないなんてことないよね。時間は有効に使えばいろんなことができるよね。と感じるのです。
スタンフォード大学で2012年に行われた研究では、音や映像で「畏敬の念」を高めると、時間が余っている・無限にあると感じられる人の割合が増えたことが示されています。
ほかにも
・焦りの感情が低下。
・お金を寄付する意欲が増加。
・ボランティアの参加時間の増加。
・人生の満足感の増加。
・モノよりも経験にお金を使う傾向の増加が見られました。
正直、この研究の規模は小さく、デザインにも甘いところがあるので信じるには限界があります。それでも、「時間を増やす方法」として今知られている方法は瞑想くらいしかありません。代わりに「畏敬の念」を使うのは現状トップレベルに推奨できる方法です。
■自分より大きなものを感じよ...クリエイティビティがアップするぞ...
「畏敬の念」を感じている人ほどクリエイティビティが高いことが判明しています。
畏敬の念とは、自分より大きなものを感じることです。つまり創造と表裏一体なのです。畏敬の念を普段から感じている人ほど想像力豊かなのは当たり前と言えます。
例えば、キリスト教(カトリック)が爆発的に布教できた理由に、絵を使ってキリストの起こした奇跡を説明してきた歴史があります。識字率が低かった当時、聖書を配ることよりも、絵を見せながら宣教師が語る方が有効だったというワケです。
この絵は、ベロネーゼという画家の「カナの婚礼」という絵。キリストが起こした最初の奇跡として、水をワインに変えたことを表す絵画です。
この絵の驚くべきところは、66㎡というめちゃくちゃ大きな絵だということ。そこに130人もの招待客の様々な様子をギッシリと描きこんでいるのです。
でも、これだけの情報量はヨハネの福音書には記されていないんです。
それから三日目に、ガリラヤのカナという村で結婚式があり、イエスの母マリヤが客として出席していました。 イエスと弟子たちも招待されていました。 ところが、祝宴の最中だというのに、ぶどう酒が切れてしまったのです。マリヤは、そのことをイエスに知らせました。 イエスは、「今はかかわりがないことです、お母さん。まだ、その時ではありません」と、お答えになりました。 マリヤは手伝いの者たちに、「この人の言うとおりにしてください」と言いました。 さて、そこには石の水がめが六つありました。ユダヤ教の儀式に使う水がめで、それぞれ八十リットルから百二十リットルぐらい入るものです。 イエスは手伝いの者たちに、「さあ、縁までいっぱい水を入れなさい」と指示なさいました。彼らがそのとおりにすると、「では、それを汲んで、婚宴の世話役のところへ持って行きなさい」と言われます。彼らは言われるままに持って行きました。 宴会の世話役が試しに一口味わってみると、おいしいぶどう酒です。「こんな上等の酒を、いったいどこから出してきたんだろう」と首をかしげました。もちろん手伝いの者たちは何もかも知っていました。そこで、世話役は花婿を呼び出して、言いました。「これは極上のぶどう酒じゃないですか。あなたはすばらしい方だ。たいていどこの家でも初めに良いぶどう酒を出し、酔いがまわって味がわからなくなると、安物でごまかすものです。ところがあなたは、一番上等なものを、最後まで取っておかれたのですから。」 このガリラヤのカナでの奇跡は、イエスが神の力を公に示された最初のものでした。これを見て弟子たちは、イエスを正真正銘のメシヤと信じたのです。
ヨハネの福音書に書かれている、奇跡の一節はこれだけです。登場人物が130人出てくることはないのです。「カナの婚礼」には、ベロネーゼの「畏敬の念」によりブーストされたクリエイティビティが詰まっています。
だって、キリストへの畏敬の念と、練りに練った想像力がなければ、こんな絵を描く事はできないでしょう?
さらに学術研究でも「畏敬の念」によってクリエイティビティが高まることが示されています。
2018年に行われた研究では、「山」や「森」といった自然にたいする畏敬の念を呼び起こすようなビデオを鑑賞してもらうと、クリエイティビティが高まることが示されています。
52人の成人を集め、ビデオをみてもらうとクリエイティビティが高まりました。さらに不快感が約半分になり、喜びが2.3倍に増加することが示されています。
宗教、非宗教に関わらず「畏敬の念」がクリエイティビティを増加させることは間違いなさそうです。
■畏敬の念を抱くための3つの方法
1.自然の中で時間を過ごす
畏敬の念に必要な要素は、「大きなもの」の感覚です。キャンプ、海、山など、広大さが感じる場所に身をゆだねましょう。「大きさ」を感じるのがコツです。
コロナのせいで外出が難しいですが、VRやビデオでも十分効果を発揮します。単純にリラックス効果もあるので、ストレスフルで時間がない!と思っているときほど、こういった動画を見ると時間飢饉を減らせます。
2. 歴史を感じられる場所で時間を過ごす
こちらもコロナで今は難しいのですが、美術館、アートギャラリー、史跡、博物館など、自分の一生よりも長い時間を感じられる場所に身を置くと、「畏敬の念」を育てることができます。
Google Arts & Cultureでは、世界中の美術館を旅することができます。実写レベルとはいきませんが、世界の有名な絵画や文化を知ることができる素晴らしいサイト。
あとは僕のオススメはこれ。
え?君の名は?と思うかもしれませんが、これ、すごいですよ。
新海誠監督の美術の特徴は、「現実よりもキレイ」ってことです。すべてのカットがInstagramにアップされた盛りに持った最高の写真家のよう。想像力を掻き立て、自然の広大さを自然よりも感じられる不思議な魅力があります。これオススメ。
3.偉大な人を讃える
自然や宗教だけが畏敬の念を感じさせるわけではありません。偉大な人の伝記や、尊敬するスポーツ選手、最高のアーティストは畏敬の念を感じさせる素晴らしいパートナーです。
尊敬する人って言われてもなぁ...というヒトのために。
これだったらKindle Unlimitedに登録していれば無料で今すぐ読み始められます。マンガでサラッと偉人たちのスゴさを感じるだけで、十分「畏敬の念」を感じることができます。その中で自分の興味のある人がいれば、深堀りすればいいのです。
まとめ
「畏敬の念」はとても難しい言葉です。しかし、私たちの生活に深く根付いた当たり前の感覚です。言葉にしようとするから難しいだけなのです。
テクノロジーの発展とともに、私たちの時間はあまりにも少なく、他の人に割く時間なんて1秒もないような感覚に苛まれることがあります。でもそんなことはありません。
時間のゼンマイを戻し、私たちに本来備わっている正常な感覚を取り戻すために「畏敬の念」を使うのはとてもオススメの方法です。ぜひ試してみてね。
今回のギモンの提供者
サークル内で「畏敬の念」についての話になり、思わず面白そうだなと喰いついてしまってできたのがこの記事です!いつも提供ありがとうございます^^
【サポートについて】
情報を広く、正しく知ってもらうために無料で記事を書いています。
共感できる方はサポート頂けたらとても嬉しいです🎉
質の高い情報発信を続けていけるよう、
サポートで応援をお願いします。🙇
【サークルについて】
みんなでギモンを共有して、話し合いながら、
「面白い答え」を考え出しましょう。
引用
Rudd, Melanie, Kathleen D. Vohs, and Jennifer Aaker. "Awe expands people’s perception of time, alters decision making, and enhances well-being." Psychological science 23.10 (2012): 1130-1136.
Chirico, Alice, et al. "Awe enhances creative thinking: an experimental study." Creativity Research Journal 30.2 (2018): 123-131.
私の記事は、ほとんどが無料です。 それは、情報を皆さんに正しく、広く知っていただくため。 質の高い情報発信を続けていけるよう、 サポートで応援をお願いします。