第36回 まるで物語のヒロインの如く
当日は朝から緊張していた。
結婚すること自体に不安はなかった。あるとすれば、ここのところ不安定な状態の彼女に対しての不安だった。それこそ、当日朝になって、「やっぱり結婚は出来ない」と言い出されてしまうのではないかと心配で仕方なかった。
彼女の家へ迎えに行った時、向こうの表情は心なしか暗いように思えた。それに対して自分もまた、あまり浮かれた態度は取れず、神妙な面持ちでいるしかなかった。
役所へ行き、結婚届を提出した。
ここで書類に不備があれば、差し戻しになる。そう