「技術が芸術を刺激し、芸術が技術に挑む」AI作画マンガの著作権について考える
AI作画をつかって医療ファンタジーマンガをつくっています。
主人公に角が生えてるんですが、角の生えたキャラを出そうとすると、山羊を抱きたがってしまって、気持ちを分かってもらうまでにけっこう苦労してしまいました。
今はなんか、腹をつき出して立つようなモデル立ちをしたがるので困っています。
『ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたか』という本で、ピクサーのジョン・ラセター監督が、技術と芸術の相乗効果について、技術が芸術を刺激し、芸術が技術に挑むと言っていると書かれていました。
ウォルト・ディズニーは初めてアニメに音声を入れたり、カラーを入れたりすることで、芸術の追求と同時に、技術の進歩にも夢中になっていたそう。
とはいえ、今回のAI作画について問題になっているのは、技術ではなくて「著作権」の問題。AIの学習元になっている作品をつくった本人には、著作権料が支払われないので、創った人からしたら、勝手に画像を使われて利用されているのと同じ状態なので、悲しい思いをして当然かと思います。その画像を作れるようになるまで、すごく努力してきたはずですからね。
印刷技術が生まれると共に著作権が生まれた。
著作権の歴史を振り返ってみると、著作権が生まれたのは、1545年頃。1455年に聖書が印刷出版され、偽物がたくさん出回るようになったことが原因と言われているので、ざっくり言うと、出版が著作権誕生のきっかけになっているようです。
急に使われ始めた生成系AIについても、新たな法律が生まれるきっかけになるかもしれません。
学習元を明らかに特定したり、個人還元することが難しいのであれば、たとえば、それによって企業が利益を得られない状態にするか、AI作画で生み出された利益は、社会に還元される状態になったらどうだろう?たとえば、ベーシックインカムとして配布されるとかね。それでも、画力が高くてまだあまり有名じゃない人が一番、割をくう気がするので、なんかうまく解決できたらいいのにとは思っています。
少なくとも、著作権の切れていない作家名や固有名詞での生成ができないようにするのは必要かもしれないですね。Midjourneyでは現在、かなりNGワードが増えて、エログロがつくれなくなりましたが、初期は有名人のエロ画像が簡単につくれたりしてたようなので。
現在、基本的にオープンソースで生成する状態になっているのも、創った画像を全世界公開することにより、ユーザー同士の倫理観による監視によって、あんまりよくない使われ方がされないようにしているのかもしれないとは思っています。
新技術が生まれて、夢中になる気持ちはとても分かります。夢中になった後、少し冷静に見て、どうしたら誰かを悲しませることなく、この技術を人類の未来に生かせるのかを考えられるといいなと思っています。AIがここまで進化したことなんてなかったから、誰もどうなるか分からない。自分も間違うし、誰かも間違う。間違いながら、それでも人類が全体として間違わない方向に、みんなで一緒に進んでいけたらなと思っています。
さて、みじんことオーマの新作マンガについて、著作権の重きを占めるのはどこかを考えています。自分では「ストーリー」だと思っています。次に「キャラの造形」ですが、キャラの造形はストーリーによって生まれているので、ストーリーの付属品と言えなくもないです。
AI作画のキャラのテイストが、自分の知らない絵師さんのものと似ているかもしれない。でもね、AI作画は、この作品において「代替可能」なんです。だから、あまり重要じゃない。ストーリーは代替できません。また、主人公が「山羊の角を生やしている」みたいな造形も代替できません。ストーリーと密接に絡んだ造形だからですね。
AI作画だけだと、2023年4月現在は著作権は発生しないようです。
でも、マンガになった場合は、著作権は発生する。画像単一のクリエイティブじゃないからですね。しかもこの物語は、絵は入れ替えても作品のアイデンティティーは失われないけど、ストーリーは入れ替えたら違う作品になってしまいますし。
技術が芸術を刺激し、芸術が技術に挑むと言ったラセター監督は、「観客を夢中にさせるのはテクノロジーではなく、ストーリーのほうだと信じていた」と言ったそうです。CGを使ってもAIを使っても、人が心を動かされるのは、感動するストーリーがあるから。
絵だけ描きたい、という人の絵であっても、人がつくる以上、その絵の裏にはきっと、ストーリーが存在するはずなんです。花を描きたい人は、山じゃなくて花を描いた理由が。かわいい女の子を描きたい人は、イケメンじゃなくて女の子を描きたい作者の理由が。人が描く絵とAIが描く絵の本質的な違いはそこにある気がしています。つまり、作者の「これを描きたい」があるかどうか。
物語を描きたいと思ってたけど、小説では終わらないほどの壮大な世界観になってしまった。ネームと呼ばれるラフ状態なら、もう少し早く描けるかと思って描き始めたけど、物語を描きたい速度に対して、自分の作画は追いつきませんでした。
AI作画によって、自分が手で描くよりも、もっと高品質な作品を量産できたら、原作者の自分としては、とてもありがたいなと思っています。
あるいは、作画の人も、ChatGPTを使って、自分の小さなアイデアに肉付けして、魅力的なストーリーを背負った絵として打ち出していくことができるかもしれない。
どちらにしろ、技術に驚かされるけど、技術だけだといずれ飽きる。技術を使って、人の心を動かすような物語をつくっていきたいなと思います。
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