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男勝り教習所✴︎東場学園6✴︎

「ハーイ!私が黄河の彼女になる❤︎」
そんな子だったらどれだけ楽だっただろうか。

のちの彼女となる混一色(ホンイツ)との出会いは、宝塚部の入部説明会。男役希望で並んでいると、長い足と大きな目が特徴の女の子と目が合った。会話した記憶はない。この人も男役希望か、一通と相性よさそうな顔だな、素人にも玄人にも愛されそうだなという印象だった。

それから前述の通り宝塚部を退部したのだが、不思議と混一色は部員で唯一私を無視しなかった。他の部員が目配せしても、役牌2種類が対子だから絶対染め!くらいの頑なさだ、混一色だけに。幾日か経ち、周りから「混一色を彼女にしなよ〜」と声をかけられることが増えた。後から聞いたが混一色はこの段階から外堀を埋め周りを巻き込み流れを作っていたらしい。手牌5枚から無理やり寄せていくくらいの強引さだ、混一色だけに。慣例で彼女を作るという違和感にもこんな一色手ギャグが思いついてしまう自分にも困惑していた。

それから数か月間
『彼女』作らないの?ッカン
『彼女』決めた?ッカン
『彼女』どうなったの?ッカン

ねえ?ねえ?ねえ?ッカンッカンッカン

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この世で最も恐ろしいヤマザキ春のカン祭りが開催されていた。同卓者の迫りくる4枚殺しに思わず「混一色かな...」と漏らした。使い勝手が良いし最悪でも二翻はお得だし。何よりいやでも毎局遭遇するカンに辟易していた。だから私はこの慣例を深く考えず、点数差もろくに見ず和了った。ツモで着順どうなるとかリー棒出てるとか積み棒2本とか知ったこっちゃなかった。本当は様々な“和了”のカタチがあり、いつも自動和了ボタンを押しゃいい訳じゃない。

次の日からガラッと変わった。それまでクラス全員をエスコートしてたのが、急に混一色のみを特別扱いしなければいけなくなった。とはいっても習慣を急に変えることは難しく、咄嗟にタンヤオもピンフも作ってしまう。その度にするどい視線を感じた。女の嫉妬というのは恐ろしい。

彼女がいる生活も落ち着いてきたある日、混一色に呼び出された。8クラスが一直線に並ぶ長い廊下に出るよう促され、開口一番

「ねえ、なんで呼び出されたか分かる?」

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一見穏やかそうな仕掛けだが、何かがおかしいって違和感を感じることがある。見た目は中ポンだけ、でも両面落としからの白發が出てないことに後で気づくみたいな。しかし思い当たる節は全くない。しかしそう伝えてはいけないこと位は感づいていた。

「うん、今日頭ポンポンしてないからかな」

ド下手くそなベタおりだ。河に6があるからって3が通るとは限らない。役満に筋は関係ない。案の定キッとこちらを見て「そんな訳ないでしょ。」と強打された。女子高で牌を叩きつけないでほしい。なんだなんだと野次馬が集まりだした。

「ごめん冗談はさておき・・辛い事があったんだね?」

流局後に国士シャンテン?と聞いてくる同卓者と同じ知ったかぶりだ。そういう時は事実に関わらずニッコリ笑顔で『いえ七対子です』と答えるのに限る。辛い事があったから聞いてるに決まっている。正解にはたどり着かないと早めに判断した混一色は「いい加減にして!」と叫び泣き出した。我こそはという人は一度混一色に寄り添ってみてほしい。実に難易度が高い良問である。あの手この手で理由を聞いたら色んな子に良い顔をする八方美人的振る舞いが許せないということだった。混一色から渡りを打つなと言われるとは本末転倒である。話し合いの末写真部も休み時間も一緒に行動すると約束してその場を収めた。混一色はこの日から宝塚部と写真部の両方に所属することになった。

そんなこんなF3の中で唯一一夫多妻制の許可が下りなかった私だが、とうとうこの日がやってきた。3年生での写真部の合宿である。40人ほど部員がいるのだが、なぜか私と混一色が二人部屋になっていた。高校3年間を賭けた昇段戦がすぐそこまで来ていた。

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