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番外編:打倒『ウヒョ助』

この宿敵について語るのは最初で最後である。

ペンネームウヒョ助、本名塚脇永久。

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近代麻雀で"キリンジゲート"を、月刊少年チャンピオンで"蟻の王"(原作)を担当している、漫画家。黄河に、三国志の"黄忠"というあだ名を付けた張本人。
鮮度のあるMリーグ漫画を、Xに掲載し続けたことでフォロワー数は留まることを知らない。が、なんたって口が悪い。悪すぎる。従って、私が口が悪くなる相手はこの男ただ1人。
後輩から「ウヒョ助さんと絡みに行った方がいいですか?」と聞かれた時は、間髪を入れず「不要」と答えている。

黄河との関係だが、全くもって仲が悪い。もっと言えば好きではないし、正直言えば嫌いである。よって、宿敵の"無名なのは後輩を紹介しないからだ!"というボヤきは参考にしても、"わしの漫画を拡散しTLを埋め尽くせ!"というボヤキは、到底受け入れられない。こちらから話題にした事は一度もないのだが、私が休業中ですら、恋焦がれていたらしい。おじんに好かれ過ぎるのも考えものである。当然嫌いなのには理由があるのだが、長くなるので割愛する。

では、なぜ番外編にて取り上げるに至ったのか。きっかけは1年半以上前にさかのぼる。休業前、女流プロが麻雀BARをオープンするというトレンドがあった。時代の流れを受けて、麻雀対局を大きなテレビで流しながらお酒を嗜むBARが軒並み増え、幸いな事に、私にも仕事の依頼が舞い込んだ。そんな折、フラッと来店された初対面の業界関係者が私を見るなり指を指して

「あ、ウヒョ助だ。」

私はウヒョ助ではない。しかし、酒の席であるしお偉いさんであるし、その後何か文句をぶつけられた訳でもない。私はサラっと受け流し別の方への接客を続けた。・・・ということが何回かあった。
はたまた「ウヒョ助さんに取り上げてもらって良かったね」「ウヒョ助さんのおかげですね」「ウヒョ助さんに足を向けて寝れませんね」こちらもはっきり明言するが、頼んだ覚えは一度も無いし、今後も足を向けて寝る予定だ。しかし場の空気を壊すのも違うので「えぇ…まぁ…」とお茶を濁し続けた。

これらに関して、宿敵に思う所は当然何もない。なぜならこの原因は、私の信用度の低さにあるからだ。麻雀に例えてみる。南4局ダンラス(点棒が著しく少ない4着目)が中をポンしたとする。その人の信用度が高ければ、トイトイホンイツや小三元、もっといえば字一色や大三元を想像するだろう。途端に場に字牌が出辛くなる。しかし信用度が低ければ、中のみの1000点もあり得ると一切警戒されない。それどころか、重なる前にと先に捨てられてしまう。

つまり、私は麻雀プロとしての信用度が低い故に、「ウヒョ助」という字牌がダダ切りされているのである。この時、何よりも先に”情けない”と思った。麻雀プロとして歩んだ10年は、全く認識されていない。今までと一緒ではダメだ。とはいえ、魅せられる身体も、素敵な笑顔も持ち合わせていない。何か麻雀に関する試みを、新しい形でやる必要性を感じていた。産後色んな事を経て造ったもの、それが今作『打倒ZERO』となる。そのためtwitter復帰後も続けている。私にとって育休中でも出来る、人と被らない唯一の麻雀プロ活動となったのだ。

この流れを書き記すために、番外編として取り上げさせてもらった。
悔しさで愚痴り罵るのも、フォロワー数に従ってへりくだるのも簡単だ。だが私は麻雀プロとしての志を高く持ち、無名中堅の底力を示す事にこだわりたい。ゆえに選んだ本編の宿敵は『ZERO』なのである。

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宿敵は九段らしい。堂々対面に鎮座してきたのでしっかりと撃破していこう。

東1局 親番 ドラ8m

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一見整っている様に見えるが、メンツ手であれば8sが必要でドラも使いづらい。ツモ次第ではあるがチートイツとメンツ手の両天秤になりそうだ。できればメンツ手にしたいなと思っていた。

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矢先に早速宿敵九段の捨てた8sがポンされ、一盃口含みのメンツ手の可能性を絶たれた。序盤からこちらに圧をかけてくる、良い度胸だ。すこぶる面の皮が厚いらしい。親番であるからには1段目で諦める訳にはいかないのだが、こうなると私の苦手なチートイツが頼みの綱だ。

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9m&6mのダブル対子落とし直後にロンの声。

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ピンズのお山を引いた模様。イーシャンテンか?と思いきや、対子落とし直後にテンパイとはなかなかやりおる。3900点を加点されたからには、コチラも3900点を加点しようではないか。

東4局 南家 ドラ南

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絶好の2mをツモったところだ。ここでドラである1枚切れの南を捨てるのもいいだろう。だが黄河の選んだ牌は

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5pだ。”真ん中の牌は大事にしよう”いつも教室で言ってきた。しかし今5ブロック候補は十分足りており、ピンズで3ブロックは必要ない。基本は真ん中の牌が要なのだが、233・78と脇が固まっていれば5が無くとも4も6も受け入れ可能。特に使い道のない5pよりも、重なった時の打点力を高く評価し南を残すことにした。

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南は一切使わなかったが、純チャン・三色のキッチリ3900点。この勝負望むところだ。

南2局 北家 ドラ9s

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役役ダッシュどころか、役満まで見えるとんでも配牌だ。これを和了れば、宿敵九段との差を大きく広げられる。しかし鼻息荒く手を進めたことで、このあと大きなミスを生む。

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9pをポン。

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北・發・中いずれも役牌。中か發を叩いてもう片方が出てくるだろうか。出てくる可能性があるとしたら1枚切れの北、とすると大三元は難しい。そう考えた黄河はここで

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白を捨てた。直後にハッとした!待て、確かに役満は難しいだろう。しかしピンズにくっついても字牌か数牌かで打牌選択が難しくなる。であれば2pを捨て、ギリギリまで役満の可能性を見るべきだったのではないか。そう思った直後のツモが

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麻雀の神様は見なくていい時にも見てくれている。やってしまった・・・三面張を残すとなると字牌いずれかを捨てるしかない。しかしそれでは大三元どころか役役ホンイツの満貫にすらならなくなってしまう。打点が一気に急降下!とはいえ、三面張を見限る勇気が出なかった黄河は

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ま、枚数が1枚少ないから・・・というチンケな理由で北を捨ててしまった。配牌からえらい変貌ぶりである。

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案の定、打点力が地に落ちたこの手牌で親リーに押し返すことができず

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下家の親に加点を許してしまった。ま、まあ宿敵の和了を避けられたから良しと態勢を立て直しオーラスを迎える。

南4局 南家 ドラ5s

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宿敵九段と3900点差。上家と6200点差だ。順調にツモがきき

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テンパイした。リーチをするとメンタン赤ドラの8000、どこからでても2着だ。ダマテンにすると親に直撃しなければ2着にはなれない。だがリーチをして対面の宿敵九段の条件を軽くするのもいただけない。私は宿敵九段撃破に加え、対面からリーチ棒が出れば同点上家取りの2着になれるという点からダマテンを選択した。

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たった3着、されど3着。対面の宿敵九段をラスにできた功績は大きい。ということで検証結果といこう。


・・・ん?待てよ、どうやら何かがおかしい。
宿敵が何かにつけて九段!九段!と叫ぶもんだからてっきり九段だと思っていたが、今調べ直したところどうやら違うようだ。今回同卓した相手は全くの別人だった。最高到達段位が九段であって"現"六段らしい。それもついこの間鳳凰卓を後にしたんだと。過去の栄光を何度も語るおじんにふさわしい末路、何の味もしないのにしがみすぎである。


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"降段したのは打荘数がお主と桁違いだからだ!""天鳳歴はわしの方が断然長い!"などといじけてそうだが、やかましい!!それはそれ、これはこれである。ジジイのメンヘラほど、イタイものはない。きっと今頃、フォロワーに慰められながらせっせと本日開幕するMリーグ漫画を描いていることだろう。そんな相手に私が言えることはただ一つ。


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さて、今日からMリーグ開幕だ。
大いに盛り上がっていこう。

読んで頂き有難うございます。とっても嬉しいです★競技麻雀界で仕事をし続けたいので、拡散やサポート、応援宜しくお願いします!母ちゃんがんばります